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元東京国税局職員が老後資金を確保する方法を伝授!「毎月400円払うだけ」で年金が増える制度とは?

日刊SPA! 2024年12月23日 15時51分

 景気がよくならいうえに、少子高齢化はどんどん進む日本。
 厚生労働省によると、65歳以上の高齢者数は、2025年には3657万人となり、2042年にはピークを迎え3878万人になる予測を立てています。

 岸田文雄前首相が首相時代の2023年「資産所得倍増元年-貯蓄から投資へ」と打ち出し、NISAで購入した商品は別枠で非課税することを表明しましたが、今年の半ばに株式相場が乱高下し、NISAブームは一気に下火に。

 投資で貯蓄を確保する、ましてや老後資金をつくるのはリスクが多いと思う人が多いようです。

 高齢者にとって老後資金は最大の関心事です。しかもフリーランスで仕事をしている人たちはもっと不安に感じていることです。

 そこで、『新しいフリーランスの歩き方』を上梓した元東京国税局職員でフリーライターの小林義崇氏に、フリーランスの老後資金の確保法を教えてもらいました。

(この記事は、『新しいフリーランスの歩き方』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆老後資金準備は節税を兼ねてやるのがいい

 税金や社会保険料を軽くして家計に少しゆとりが出てきたら、次は老後資金の準備を始める段階です。

 先に書いたように、国民年金だけでは老後の生活費には明らかに足りないので、現役時代から備えておく必要があります。ただ、低金利の日本では、単に貯金をする方法ではなかなかお金が増えていきません。

 そこで活用したいのが、国が用意している公的な制度です。

◆個人事業主向けの制度はどのようなものがある?

 小林氏が制度の一覧をまとめましたので、フリーランスを対象とした、「老後資金を貯めながら節税する」ための制度がいろいろとあるので、これをぜひ活用しましょう。

〈個人事業主向けの制度〉

【付加保険】
・概要……国民年金に上乗せして加入する年金制度
・主な特徴……月額400円の付加保険料を支払うことで、将来の年金額が増える
・掛金・保険料……月額400円
・税制メリット……支払った付加保険料は全額所得控除の対象
・注意点……国民年金基金と併用不可。受給開始から2年で元が取れるが、早期に亡くなると損

【小規模企業共済】
・概要……小規模企業の経営者や役員が廃業や退職時の生活資金を積み立てる制度
・主な特徴……事業資金の借り入れも可能
・掛金・保険料……月額1000円~7万円(500円単位で自由に選択可能)
・税制メリット……掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象。共済金は退職所得扱い(一括受け取り)または公的年金等の雑所得扱い(分割受け取り)
・注意点……常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主や会社役員などのみが利用できる

【国民年金基金】
・概要……自営業・フリーランスなどが加入する公的年金の上乗せ制度
・主な特徴……終身年金が基本。掛金額が一定。税制上の優遇あり。遺族一時金あり
・掛金・保険料……掛金は加入時の年齢やプランによって異なる
・税制メリット……掛金全額が社会保険料控除の対象。受け取る年金も公的年金等控除の対象。遺族一時金は全額非課税
・注意点……付加保険やiDeCoに加入していると掛金の上限が減る

【iDeCo】
・概要……個人型確定拠出年金で、自分で運用しながら積み立てる私的年金制度
・主な特徴……掛金を自分で運用。運用商品は投資信託や定期預金など。60歳以降に受け取り可能
・掛金・保険料……月額5000円から6万8000円の範囲で、1000円単位で選択可能
・税制メリット……掛金は全額所得控除。運用益も非課税。受け取り時も税金が軽減される
・注点……原則60歳まで引き出せない。付加保険や国民年金基金への加入で掛金の上限が下がる

◆優先順位を考えて少しずつ制度を利用しよう

 これらの制度は、老後のために毎月一定額の掛金を積み立てるものですが、掛金がすべて所得控除になります。つまり、掛金を払うほどに所得税や住民税の負担を減らすことができます。

 たとえば、もともとは年間の課税所得が500万円の人が、iDeCoの掛金を年間12万円、小規模企業共済の掛金を年間38万円支払ったとしましょう。

 すると、課税所得500万円から、合計50万円を差し引くことができます。所得税と住民税の税率を合わせて仮に30%とすると、50万円×30%=15万円を毎年節税できる計算です。

 このように節税メリットが大きな制度が数々存在しますが、すべての制度をいきなり利用するわけにはいきません。限られた収入の一部を振り分ける形になりますから、優先度をつけて利用する必要があります。

◆毎月400円払うだけで、年金を増やせる

 老後資金準備の方法のなかでも、少額で気軽に始められるのが「付加年金」。付加年金は、毎月納めている国民年金保険料に、付加保険料として月々400円を追加で支払うことで、将来の年金を増やせる制度です。

 この制度、あまり知られていないように思いますが、投資のリターンとしても非常に優れています。付加年金で投じたお金は、なんと将来的に15 倍以上に増える可能性もあり、損をする可能性はほぼゼロです。

 付加年金がどれほど有利な制度なのかを理解するために、計算の流れを見ていきましょう。まず、付加年金を利用することによって加算される年金の額は、次の計算式で求められます。

加算される年金額=付加保険料を納めた月数×200円

 たとえば30歳から60歳まで、30年間にわたって付加保険料を納めた場合、納めた金額はトータルで14万4000円(30年×12か月×400円)。これに対して、将来増える年金は7万2000円(30年×12か月×200円)になります。

◆付加年金に加入できるのは60歳まで!早めに手続きをしよう

 ここで、「増える年金よりも、納めた金額のほうが多いじゃないか!」と思われたかもしれませんが、加算額の7万2000円は“年額”です。

 ということは、「14万4000円を支払うことで、毎年7万2000円をもらえる権利を得た」という形になりますから、付加年金を2年以上受け取れば元が取れますよね。

 その後はひたすら得していき、もし長生きして付加年金を30年受け取ったなら、付加年金によるリターンは15倍まで達します。

 付加年金によって将来加算される年金の額は、付加保険料を納めた期間が長ければ長いほど、そして、長生きすればするほど、増えていきます。

 付加年金に加入できるのは60歳までで、遡って加入することはできません。フリーランスになったら、できるだけ早めに市区町村の役所もしくは年金事務所で加入手続きをしておきましょう。

<文/小林義崇 構成/日刊SPA!編集部>

【小林義崇】
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版刊)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)ほか著書多数。公式ホームページ

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