インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってくるが、日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまうだろう。
そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれない。
アメリカ・ハワイ州出身で、現在はスピードスケートのアメリカ代表チームのヘッドコーチとして活躍する日系4世のライアンさん(51歳)。日本語はほとんど話せないが、スポーツ通訳者を間に入れて、かつては日本代表のヘッドコーチをしていたこともある。
日本におけるスピードスケートの聖地のひとつが北海道の帯広。ライアンさんも1年間アパート暮らしをしていた経験があり、今でも遠征で訪れることが多いという。
◆東京駅で受けたおどろきの「日本人の対応」
初めて東京駅から新幹線に乗ろうとしたときのこと。異国の地での公共交通手段で不安になり、チケットはすでに購入していたのだが、念のためみどりの窓口まで聞きに行ったそうだ。
そこで対応してくれた女性スタッフがライアンさんの話を聞くと、みどりの窓口のシャッターを閉めた。そして窓口から出てきたかと思ったら、先導しながら彼をホームまで案内したというのだ。
「こんな親切は今まで受けたことがありません。とてもびっくりしました!」
アメリカであれば「何番ホームに行って」とか「電光掲示板を見て」で済ませられてしまうだろう。
今では何度も日本を訪れ、新幹線やその他の交通機関の乗り方などもすっかり身につけた。そのため、彼は日本の駅で不安な顔をしている外国人を見かけると、率先して声をかけて助けるようになったという。
◆店ごとに違う無限の楽しみ「日本の帯広名物」
日本に来た際は、日本料理をお腹いっぱい食べるのも楽しみのひとつだというライアンさん。スピードスケートの遠征で、北海道の帯広へ行く機会が多いこともあり、お気に入りの日本料理には、北海道で地元の人たちに人気だという食べ物やお店の名前がドンドン出てきた。
断トツ一番のお気に入りは「豚丼」だそうだ。
「どのお店も豚肉の質が良くて、ニンニクの効いたタレが香ばしく焼けた豚肉にからむジューシーさがたまらないんです。でも、タレの味付けはお店ごとにぜんぜん違うんですよ。甘めのタレが好きな人もいれば、濃いしょう油味が好きな人もいますよね。私はその時の気分に合わせてどっちも好きなので、違うお店を試すのも楽しみなんです」
スポーツ系のライアンさんにとっては、まさにスタミナ定食。思い切り体を動かした後にはタンパク質たっぷりの豚肉がうってつけなのだ。タレや肉汁が白米に沁み込んで、よりいっそう食欲をそそりそうだ。ちなみにアメリカ人には脂っこい肉が苦手な人も多いが、ライアンさんはどちらでもいけるという。
「それに、セットでついてくるお味噌汁やたくあんが、また素晴らしい。濃い味の豚丼を食べた後、味噌汁で口をさっぱりさせて、たくあんで歯ごたえを楽しむ。最高です!」
その帯広でチェーン展開している回転寿司の「なごやか亭」もお気に入りのひとつ。
「ネタはマグロやハマチ、サーモンが好きです。妻が青森県八戸市の出身なので、八戸市の回転寿司も利用します。そこより少しだけ値段は上がりますが、それでも5ドルくらいの違いで新鮮なネタが食べられるのでお手ごろな値段だと思います」
そして札幌発祥のスープカレーの専門店「SAMA」もお気に入りの店のひとつ。
「日本のカレーライスも好きなんですが、スパイスの効いたスープの味が野菜たちに染み込んでいて、これはトロトロのカレーライスには出せない味ですよ。スープにごはんという日本らしい発想もアメリカ人には新鮮ですしね。
私のオススメはちょい辛ゾーンの3番の辛口でチキン野菜カリーです!そこにトッピングでチキンレッグを追加するのが、私流SAMAでの食べ方なんです」
◆日本で唯一“苦手なもの”は?
そんな日本大好き・帯広大好きなライアンさん。だが、そんな日本で唯一参ったことがあるという。それは……。
「東京の夏ですよ! あの暑さときたら……」。スピードスケートの会場から比べたら確かに暑いが、ライアンさんは南国ハワイ出身。暑さには慣れているのでは?
「ハワイはもっとカラッとしています。でも東京の夏はまるでお風呂場でシャワーを浴びているかのようでした。駅のホームで立っているだけで、蒸し暑さで汗が噴き出してきて服がビショビショになるんです」
確かに帯広の夏とはまったく様子が違う。それでも東京を嫌いにならず、豚丼やスープカレーなどでスタミナをつけてなんとか乗り切ってほしい!
<取材・文/トロリオ牧(海外書き人クラブ)>
【トロリオ牧(海外書き人クラブ)】
2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカでウェイトレスや保育士などの様々な職種を経験した後、アメリカ政府の仕事に就く。政府職員として17年間務めるがパンデミックをきっかけに「いつ死んでも後悔しない人生」を意識するようになり2023年辞職。RVキャンプやオフローディングを楽しむのが最高の癒しじかん。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員
そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれない。
アメリカ・ハワイ州出身で、現在はスピードスケートのアメリカ代表チームのヘッドコーチとして活躍する日系4世のライアンさん(51歳)。日本語はほとんど話せないが、スポーツ通訳者を間に入れて、かつては日本代表のヘッドコーチをしていたこともある。
日本におけるスピードスケートの聖地のひとつが北海道の帯広。ライアンさんも1年間アパート暮らしをしていた経験があり、今でも遠征で訪れることが多いという。
◆東京駅で受けたおどろきの「日本人の対応」
初めて東京駅から新幹線に乗ろうとしたときのこと。異国の地での公共交通手段で不安になり、チケットはすでに購入していたのだが、念のためみどりの窓口まで聞きに行ったそうだ。
そこで対応してくれた女性スタッフがライアンさんの話を聞くと、みどりの窓口のシャッターを閉めた。そして窓口から出てきたかと思ったら、先導しながら彼をホームまで案内したというのだ。
「こんな親切は今まで受けたことがありません。とてもびっくりしました!」
アメリカであれば「何番ホームに行って」とか「電光掲示板を見て」で済ませられてしまうだろう。
今では何度も日本を訪れ、新幹線やその他の交通機関の乗り方などもすっかり身につけた。そのため、彼は日本の駅で不安な顔をしている外国人を見かけると、率先して声をかけて助けるようになったという。
◆店ごとに違う無限の楽しみ「日本の帯広名物」
日本に来た際は、日本料理をお腹いっぱい食べるのも楽しみのひとつだというライアンさん。スピードスケートの遠征で、北海道の帯広へ行く機会が多いこともあり、お気に入りの日本料理には、北海道で地元の人たちに人気だという食べ物やお店の名前がドンドン出てきた。
断トツ一番のお気に入りは「豚丼」だそうだ。
「どのお店も豚肉の質が良くて、ニンニクの効いたタレが香ばしく焼けた豚肉にからむジューシーさがたまらないんです。でも、タレの味付けはお店ごとにぜんぜん違うんですよ。甘めのタレが好きな人もいれば、濃いしょう油味が好きな人もいますよね。私はその時の気分に合わせてどっちも好きなので、違うお店を試すのも楽しみなんです」
スポーツ系のライアンさんにとっては、まさにスタミナ定食。思い切り体を動かした後にはタンパク質たっぷりの豚肉がうってつけなのだ。タレや肉汁が白米に沁み込んで、よりいっそう食欲をそそりそうだ。ちなみにアメリカ人には脂っこい肉が苦手な人も多いが、ライアンさんはどちらでもいけるという。
「それに、セットでついてくるお味噌汁やたくあんが、また素晴らしい。濃い味の豚丼を食べた後、味噌汁で口をさっぱりさせて、たくあんで歯ごたえを楽しむ。最高です!」
その帯広でチェーン展開している回転寿司の「なごやか亭」もお気に入りのひとつ。
「ネタはマグロやハマチ、サーモンが好きです。妻が青森県八戸市の出身なので、八戸市の回転寿司も利用します。そこより少しだけ値段は上がりますが、それでも5ドルくらいの違いで新鮮なネタが食べられるのでお手ごろな値段だと思います」
そして札幌発祥のスープカレーの専門店「SAMA」もお気に入りの店のひとつ。
「日本のカレーライスも好きなんですが、スパイスの効いたスープの味が野菜たちに染み込んでいて、これはトロトロのカレーライスには出せない味ですよ。スープにごはんという日本らしい発想もアメリカ人には新鮮ですしね。
私のオススメはちょい辛ゾーンの3番の辛口でチキン野菜カリーです!そこにトッピングでチキンレッグを追加するのが、私流SAMAでの食べ方なんです」
◆日本で唯一“苦手なもの”は?
そんな日本大好き・帯広大好きなライアンさん。だが、そんな日本で唯一参ったことがあるという。それは……。
「東京の夏ですよ! あの暑さときたら……」。スピードスケートの会場から比べたら確かに暑いが、ライアンさんは南国ハワイ出身。暑さには慣れているのでは?
「ハワイはもっとカラッとしています。でも東京の夏はまるでお風呂場でシャワーを浴びているかのようでした。駅のホームで立っているだけで、蒸し暑さで汗が噴き出してきて服がビショビショになるんです」
確かに帯広の夏とはまったく様子が違う。それでも東京を嫌いにならず、豚丼やスープカレーなどでスタミナをつけてなんとか乗り切ってほしい!
<取材・文/トロリオ牧(海外書き人クラブ)>
【トロリオ牧(海外書き人クラブ)】
2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。アメリカでウェイトレスや保育士などの様々な職種を経験した後、アメリカ政府の仕事に就く。政府職員として17年間務めるがパンデミックをきっかけに「いつ死んでも後悔しない人生」を意識するようになり2023年辞職。RVキャンプやオフローディングを楽しむのが最高の癒しじかん。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員