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次の利上げは2025年1月?業界歴35年の人気FPが「今から政策金利1%に備えたほうがいい」と警告する理由

日刊SPA! 2024年12月23日 8時47分

2024年は日本銀行(日銀)の金融政策によって大きな変化が起きた年だった。3月には10年弱続いたマイナス金利を解除。そして7月には政策金利が0.25%に引き上げられた。12月の追加利上げは見送られたものの、銀行預金の金利が上がった一方で住宅ローンの金利も上がり、「これからどうなるんだ…」と不安を抱える人も多いはず。
「日銀の政策変更によって、日本には約30年ぶりに『金利のある世界』が戻ってきました。しかし、長く低金利時代が続いたせいで、40代以下の人は『低金利の日本』しか知らないんですね。金利が変わると様々な金融領域に影響が出てきます。だからこれからは、金利上昇時代に適した“お金の新常識”を身につけないとダメです」

そう話すのは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏だ。深野氏は業界歴35年の大ベテラン。東京証券取引所や金融機関のセミナーに講師として呼ばれるなど、レジェンドと呼んで差し支えのない存在だ。

そんな深野氏の新刊『金利で損しない方法、教えてください!人気FPが教える金利上昇時代の「お金の新ルール」』では、まさに金利上昇に合わせて「どのようにお金を増やすか?守るか?」というマネープランが細かく解説されている。では、バブル期の高金利時代から低金利時代まで日本経済を見続けてきた男は、今後の金利の動きをどう見ているのか? 日銀は12月の利上げを見送ったが、果たして2025年はどうなるのか……予測を聞いた。

◆数回の利上げを経て「政策金利1%」を目指す

最初に私の予測をお伝えします。恐らくですが、2025年1月には金融政策決定会合を通じで利上げが行われるでしょう。現在の政策金利0.25%から0.25%の引き上げが行われ、0.5%にすると思っています。

そして、日銀は2025年度(2026年3月末)のうちに数回の利上げを行うつもりだとにらんでいます。それぞれ0.25%×2~3回の利上げを行い、「政策金利1%」を早期に達成したいと思っているはずです。

もちろん、植田日銀総裁のコメントなど読む限り、日本の賃金上昇や米ドル/円を中心とした為替の動き、米国経済の動向など様々なファクターが絡んでの決断になるので、経済状況次第では思惑通りに事を運べない可能性も十分にあり得ます。特に1月に発足するトランプ政権の動きも気になります。

 ただ、植田日銀総裁の言葉を借りれば「経済データがオントラック(想定通り)に推移」すれば、政策金利1%は十分にあり得るシナリオだと思っていたほうがいいでしょう。なぜなら、ほかならぬ日銀の審議員が「2026年度中に1%に」という目標数値を発言しているからです。

◆日銀幹部の“踏み込んだ発言”が増えている

日銀の動向を長く見てきた私からしても、数年前と比較して金融政策決定会合に出席するメンバーの発言がかつてより注目されているうえ、以前とは考えられないくらい“踏み込んだ発言”をしているように思えます。

これまでは金融政策を司る審議委員らは、市場関係者などに言質をとられないように発言をするのが基本的な考え方でした。しかし、2024年9月には田村直樹審議委員が「‘26年度後半までには少なくとも政策金利は1%程度くらいまで引き上げておくことが必要だ」と述べています。審議員が具体的な目標数値まで出して発言するのは異例ですし、それだけ本気度が高いと感じられるのです。

実際に、マクロ指標の面で見れば、足元の日本経済はあまり悪くありません。四半期の実質GDPも二期連続で上昇中ですし、消費者物価指数の上昇率も2%台を維持しています。景気はとてもいいわけではないですが、悪くはない状態を維持している。

また、2024年の企業と労働組合が賃金交渉を行う春闘も満額回答となり賃金も上昇しています。2025年の春闘も近い水準で賃上げがありそうです。それらの状況も、「1%程度」という発言を後押ししている格好です。

◆利上げを急ぐ裏にある“2008年のトラウマ”

そしてもう一つ。個人的には日銀が利上げをしたがる背景としてはこちらのほうが大きいと思うのが、「いざというときに利下げができるバッファーを整えたい」という思惑です。これはあくまで私の推測ですが、今後景気が悪化して金融市場のクラッシュが起きたときに、利下げをする“余地”を残しておきたいのだと思います。

金融市場のクラッシュとは、かつてのリーマン・ショックのような出来事です。実はリーマン・ショックが起こる前の2007年に、日銀は福井総裁(当時)のもとで二度の利上げをしていました。政策金利を0.25%から0.5%に上げていて「いつ0.75%まで上げるか?」という議論がされていました。

しかし、三度目の利上げも視野に入れていたものの、その直後にリーマン・ショックが発生し、急速に経済が冷え込んだために再び利下げをせざるを得なくなったのです。しかも、通常は0.25%幅で政策金利を調整するところ当時の政策金利0.5%とかなり低いことから0.15%の利下げを2回という“小刻み”な利下げしかできず、効果も極めて限定的でした。

その経験が、日銀にとって“トラウマ”になっているように私には思えます。政策金利を1%まで上げていれば、もし金融ショックが起こっても0.25%の利下げを4回行うことができますから。

そういった予防措置的な効果も含め、政策金利1%というのは十分に現実的な数字だと思えます。果たして2025年度中に達成するかは未知数ですが、少なくとも、近い将来にあり得るシナリオとして認識しておくべきです。

「政策金利が1%になったときにお金をどこに預けると得なのか?」
「どんな投資をしたほうが有利になるのか?」
「住宅ローンはどんなプランで借りればいいのか?」

そんなイメージを今から持っておくことが、とても重要だと思います。

<構成/上野智(まてい社)>

【深野康彦】
ファイナンシャルリサーチ代表。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。その後、1996年に独立し、現在の有限会社ファイナンシャルリサーチは2社目の起業。FP業界歴35年(2024年10月現在)を誇り、そのキャリアを通じて日本経済の浮沈を見守ってきた。メディア出演やセミナーを通じて、資産運用や住宅ローン、生命保険、税金、年金など幅広く「お金の知識」を発信している

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