2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。独自の視点で2024年を振り返る「ニュース」部門、第6位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月~10月まで。初公開2024年7月14日 記事は取材時の状況) * * *
パチンコ・パチスロホールには様々なルールがある。そのなかで交換率に関する「一物一価」という言葉をご存知だろうか。これはざっくり言うと「同一店舗においてはパチンコとパチスロの交換率を統一させる」というルールのこと。ところが先日、景品の提供方法に関するガイドラインが新たに制定され、パチンコとパチスロで異なる交換率の設定が可能となったのだ。
そこで、関東近郊で十数店舗展開する大手チェーンの営業統括部長のA氏に、新ルールの詳細から自店での導入の有無について話を聞いてみた。
◆一般景品だけでなく特殊景品も対象に
今回、景品の取り揃えの充実と多様化を目的とし、パチンコ専用、パチスロ専用の景品の提供が認められた。これは一般景品だけではなく特殊景品にも適用されることで複数の交換率を設定できるようになったのだが、これはホールからすると歓迎できることなのだろうか。
「まあ地域によるんでしょうね。すでに導入しているホールさんもあります。ただ、あるホールさんがパチンコはそのままでパチスロを11割(5.5枚交換)にして、パチスロの交換率を下げていたのは意外でした。導入するとしたら逆のパターンで、パチスロは変えずにパチンコを下げると思っていたので。ウチはすでに11割で営業しているので、今のところ変える気はないですね」
◆利益が取りづらくなったパチスロ
たしかに、人気が回復し勢いを増しているパチスロを等価交換にして射幸性を高めた方がホールとしては売上増につながりそうではあるが、そのようにはしない理由をA氏はこう予想する。
「すでに導入している地域って、交換所で手数料を取っているところもあって、お客さんが換金ギャップに慣れています。それと、基本的に郊外店が多いから長時間打って粘るというスタイルのお客さんが多い。実際、一人当たりの遊技時間が他の地域より長いというデータもあるんですよ。多少交換率を下げてもその分高設定が入るならお客さんも納得する。だから成立するんじゃないですかね」
さらに、スマスロの登場で出玉性能が高くなったことも多分に影響していると語る。
「パチンコは思いっきり出したり、回収したりできますが、パチスロは設定で出玉率が固定されているじゃないですか。要は設定1以上にお店が儲けることはできない。パチンコは今のままでも儲かるからそのまま、パチスロは性能が上がって回収しづらくなったから“交換率を下げて利益を取る”ってことだと思いますよ」
◆パチスロファンはシビアな人が多い
また、最近はホールの出玉状況をホームページで確認できるのが当たり前の時代。特にパチスロファンはシビアにチェックして店や台を選ぶ人が多いだけに、等価交換での営業はやりづらくなったそうだ。
「最近はお店のHPに掲載している差枚データが充実しているし、しかもパチスロを打つ人は細かいところまで見てるんですよ。だから、等価交換だと店がどれくらい儲けているかわかっちゃう。それが11割営業で、会員カードの再プレーも1万円分まで手数料ナシにすれば少しボヤけてうやむやにできるじゃないですか(笑)。差枚でお店が赤字の日が多く見えても、ちゃんと利益率6%くらいは取れてたりするので。さらに、データをしっかり見ていれば設定6を使っていることもわかる。それがもう定着しているので、いまさら等価交換にしてもねぇ……って感じです」
◆交換率を下げてもパチンコは遊べない
SNSなどを見ていると「パチンコの交換率を下げてもっと遊ばせてほしい」なんて声もよく目にするが、そんな使い方をするホールが出てくる可能性はないのだろうか?
「パチンコはちょっと下げただけでは、遊べるようになったと体感できないんですよ。それこそ、4円貸しの2.5円交換にするなら別ですが、3円くらいじゃ大して変わりません。なぜなら、機械自体が低交換の営業に向いていないから。しかも、今はラッキートリガーの評判がいいじゃないですか、あれって『遊べる』とは真逆の機械ですよね。遊ばせてほしいって言ってるのに、遊べない台が人気だから困っちゃいますよ(笑)」
◆交換率は客層で使い分けるべき?
それなりに高設定が使えて利益も取れているパチスロ、低交換にしてもあまり意味がないパチンコ。そんな状況だけに、今のところ新ルールを導入するつもりはないとA氏は断言する。
「とりあえずは様子見、変えるメリットが見つからないので。そもそも交換率って、どちらかと言うとパチンコとパチスロで使い分けるよりも、地域性や客層で使い分けた方がいいと思うんですよね。粘るお客さんが多いお店は交換率を下げてその分高設定を入れた方が良いでしょうし、逆に粘らない人や夜しか打たないお客さんがメインのお店だった等価交換の方が良いだろうから」
◆全国的に普及するのだろうか?
「パチスロではアツい勝負をして、パチンコではまったり遊ぶ(もちろん逆もあり)」といったことが同一店舗で可能となるだけに、ファンからすると悪い話ではない気もするが……みなさんはいかがだろうか?
ちなみに、A氏の周りにいる関係者も様子見をしている人が多く、全体的に積極的ではない様子が伺える。もしかしたら、ホールからすると少々ピント外れな新ルールなのかもしれない。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
パチンコ・パチスロホールには様々なルールがある。そのなかで交換率に関する「一物一価」という言葉をご存知だろうか。これはざっくり言うと「同一店舗においてはパチンコとパチスロの交換率を統一させる」というルールのこと。ところが先日、景品の提供方法に関するガイドラインが新たに制定され、パチンコとパチスロで異なる交換率の設定が可能となったのだ。
そこで、関東近郊で十数店舗展開する大手チェーンの営業統括部長のA氏に、新ルールの詳細から自店での導入の有無について話を聞いてみた。
◆一般景品だけでなく特殊景品も対象に
今回、景品の取り揃えの充実と多様化を目的とし、パチンコ専用、パチスロ専用の景品の提供が認められた。これは一般景品だけではなく特殊景品にも適用されることで複数の交換率を設定できるようになったのだが、これはホールからすると歓迎できることなのだろうか。
「まあ地域によるんでしょうね。すでに導入しているホールさんもあります。ただ、あるホールさんがパチンコはそのままでパチスロを11割(5.5枚交換)にして、パチスロの交換率を下げていたのは意外でした。導入するとしたら逆のパターンで、パチスロは変えずにパチンコを下げると思っていたので。ウチはすでに11割で営業しているので、今のところ変える気はないですね」
◆利益が取りづらくなったパチスロ
たしかに、人気が回復し勢いを増しているパチスロを等価交換にして射幸性を高めた方がホールとしては売上増につながりそうではあるが、そのようにはしない理由をA氏はこう予想する。
「すでに導入している地域って、交換所で手数料を取っているところもあって、お客さんが換金ギャップに慣れています。それと、基本的に郊外店が多いから長時間打って粘るというスタイルのお客さんが多い。実際、一人当たりの遊技時間が他の地域より長いというデータもあるんですよ。多少交換率を下げてもその分高設定が入るならお客さんも納得する。だから成立するんじゃないですかね」
さらに、スマスロの登場で出玉性能が高くなったことも多分に影響していると語る。
「パチンコは思いっきり出したり、回収したりできますが、パチスロは設定で出玉率が固定されているじゃないですか。要は設定1以上にお店が儲けることはできない。パチンコは今のままでも儲かるからそのまま、パチスロは性能が上がって回収しづらくなったから“交換率を下げて利益を取る”ってことだと思いますよ」
◆パチスロファンはシビアな人が多い
また、最近はホールの出玉状況をホームページで確認できるのが当たり前の時代。特にパチスロファンはシビアにチェックして店や台を選ぶ人が多いだけに、等価交換での営業はやりづらくなったそうだ。
「最近はお店のHPに掲載している差枚データが充実しているし、しかもパチスロを打つ人は細かいところまで見てるんですよ。だから、等価交換だと店がどれくらい儲けているかわかっちゃう。それが11割営業で、会員カードの再プレーも1万円分まで手数料ナシにすれば少しボヤけてうやむやにできるじゃないですか(笑)。差枚でお店が赤字の日が多く見えても、ちゃんと利益率6%くらいは取れてたりするので。さらに、データをしっかり見ていれば設定6を使っていることもわかる。それがもう定着しているので、いまさら等価交換にしてもねぇ……って感じです」
◆交換率を下げてもパチンコは遊べない
SNSなどを見ていると「パチンコの交換率を下げてもっと遊ばせてほしい」なんて声もよく目にするが、そんな使い方をするホールが出てくる可能性はないのだろうか?
「パチンコはちょっと下げただけでは、遊べるようになったと体感できないんですよ。それこそ、4円貸しの2.5円交換にするなら別ですが、3円くらいじゃ大して変わりません。なぜなら、機械自体が低交換の営業に向いていないから。しかも、今はラッキートリガーの評判がいいじゃないですか、あれって『遊べる』とは真逆の機械ですよね。遊ばせてほしいって言ってるのに、遊べない台が人気だから困っちゃいますよ(笑)」
◆交換率は客層で使い分けるべき?
それなりに高設定が使えて利益も取れているパチスロ、低交換にしてもあまり意味がないパチンコ。そんな状況だけに、今のところ新ルールを導入するつもりはないとA氏は断言する。
「とりあえずは様子見、変えるメリットが見つからないので。そもそも交換率って、どちらかと言うとパチンコとパチスロで使い分けるよりも、地域性や客層で使い分けた方がいいと思うんですよね。粘るお客さんが多いお店は交換率を下げてその分高設定を入れた方が良いでしょうし、逆に粘らない人や夜しか打たないお客さんがメインのお店だった等価交換の方が良いだろうから」
◆全国的に普及するのだろうか?
「パチスロではアツい勝負をして、パチンコではまったり遊ぶ(もちろん逆もあり)」といったことが同一店舗で可能となるだけに、ファンからすると悪い話ではない気もするが……みなさんはいかがだろうか?
ちなみに、A氏の周りにいる関係者も様子見をしている人が多く、全体的に積極的ではない様子が伺える。もしかしたら、ホールからすると少々ピント外れな新ルールなのかもしれない。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。