カナダ・アルバータ州に位置する美しい自然環境に囲まれた小さな街、キャンモア。特に登山やハイキング、サイクリングなどのアウトドアアクティビティが豊富で、多くの観光客が訪れる人気のスポットだ。
しかし、その賑やかなアクティビティには目もくれず、 誰とも異なる目的でこの地を訪れた女性がいる。北海道出身のモニカさん(29歳・女性)だ。
ワーキングホリデーの拠点としてキャンモアを選んだモニカさんだが、彼女がここで追求しているのは、マリファナを使ったお菓子作り。自然豊かなキャンモアの静けさを背景に、モニカさんは日々、通称『ポットエディブル』の製作に励んでいる。
同僚やワーホリ仲間からは“マリファナ姉さん”とも呼ばれる彼女はどのようにしてマリファナに出会い、キャンモアを拠点に選んだのか。その背景に迫った――。
◆オーストラリアで知ったマリファナの魅力
「ワーホリの拠点としてカナダを選んだ理由はマリファナが合法だから」
モニカさんがマリファナに興味を持ったのは21歳の時。友達とその彼氏に誘われたという。
「初めてマリファナを吸ったのは北海道の某所でアパレル店員をやっていた頃。友達とその彼氏に誘われて家で吸いました。昔から洋楽や洋画が好きで一つの文化としてマリファナが視野に入ることが多かったため、吸うこと自体にはあまり抵抗がなかった。
でも当時はまだ良さが分かってなくて、貰いタバコと同じ感覚で貰える時だけ吸うという感じでした」
現在は1日5g以上、1ヶ月で40gほど摂取しているという彼女が本格的にマリファナにハマるようになったきっかけは、オーストラリアでのワーキングホリデーだった。
「英語が好きだったのでワーホリに挑戦することに。だけどマリファナはオーストラリアでは違法。だから本当は合法で摂取出来るカナダに行きたかったけど、コロナ直後だったこともあり、人数制限を設けていなくて比較的申請が楽なオーストラリアへ。
そこで出会った日本人の友達が、マリファナをこっそり買える場所を知っていて。その時に人づてで買ってみたらハマっちゃったんです」
◆カナダの僻地でマリファナと音楽を楽しむ生活
モニカさんは自然豊かなキャンモアでマリファナ漬けの毎日を過ごしている。「拠点はカナダならどこでも良かった」と話す彼女が最終的にこの土地を選んだ背景には意外な理由が隠されていた。
「最初の1ヶ月はトロントにいたんです。理由は好きなアーティストのライブが定期的に開催されていたから。でも都会だからか求人の倍率が高くて職をゲット出来ず。
そこで日本人用の求人サイト「イーメープル」でカナダ全土で検索してたまたま引っかかったのがキャンモアだった。最初は『どこ?』って感じでしたけど、職場近くにマリファナショップがあるかどうかだけはチェックして。徒歩10分圏内にあったので、ここしかないと思いました」
現在彼女はロッジのハウスキーパーとしてフルタイムで働きながら寮で暮らしている。
「時給は19ドル。今は2人部屋の寮に住んでいるので家賃は月300ドルです。キッチンとバスルームは共有。マリファナに使うお金は月50ドルくらい。
ここは僻地だし、アウトドアに興味のない私は特にすることもないのでお金は貯まります。仕事は基本的に1人で行うので飽きることもありますが、私は音楽が好きで好きな曲を聴きながら出来る仕事のため、音楽好きな自分にはとても合っているなと思っています」
◆マリファナは奇麗なものをもっと美化してくれる
そんな彼女が今回作ってくれたポットエディブル(マリファナ入り食品)はチョコレートブラウニー。
「冬は寒すぎて外に出られない」というモニカさんは、屋内で手軽にマリファナを摂取できるポットエディブルにハマっているという。共有キッチンにはマリファナ特有のハーブのような爽やかな香りが充満していた。
「基本的には検索して出てきたお菓子のレシピにグラインダーで細かく挽いたマリファナを入れるだけです。元々お菓子作りなんてしたことなかったのですが、ここに来てからすっかり夢中で。
材料費は30ドルくらい。一回作るのに3時間程度かかるけど、エディブルは効果が強いので1人で食べるなら1ヶ月は持ちますね」
エディブルを作りながら「元々はPMSの緩和目的でマリファナを吸っていた」と語るモニカさんだが、摂取を続けるうちに精神的にも大きな変化が訪れ、日々人や物事に感謝できるようになっていったという。
「元々生理前のイライラがひどかったのですが、マリファナを摂取し始めたらその回数が徐々に減ってむしろ人に感謝する機会が増えました。
あとマリファナって元々綺麗なものをもっと美化してくれるんです。北海道育ちなので元々自然が好きなのですが、マリファナを摂取しながら見るともっと綺麗に見える。
美味しいものがもっと美味しくなったりもしますね。だから段々と日々起こる物事にも感謝するようになっていきました。お酒と違ってその感覚を覚えていることができるので、摂取していない時でもその感情を常に持つことができるんです」
◆3種類をシーンによって使い分けている
マリファナの魅力を語りだすと止まらない彼女。普段摂取する大麻の種類はサティバ、インディカ、ハイブリッドで気分や時間帯によって使い分けているという。それぞれどのような違いがあるのか。
「サティバは気分を高めてくれるのでちょっとしたハイキングの前などに摂取したりテンションを上げたい時に最適。インディカはシャワー後や寝る前に摂取しているのですが、キマるとべッドから動けなくなる。そのおかげでリラックスして寝ることができますね。
ハイブリッドは両方の良いところ取りなので活力とリラックスの両方を取り入れたいときに摂取します」
多様な効果を楽しめる一方、慎重に向き合う必要がある側面も。モニカさんが続ける。
「『草ボケ』と言って毎日ある程度の量を吸い続けると物忘れが多くなるので定期的に吸わない期間作る人もいます。
また、何かをしなければいけない時にインディカを吸うと動くにも足が重くなるし、思考も楽観的になるのですべてを後回しにしてしまうこともある。シーンによって使い分けるのが大事です」
◆実家のある北海道に大麻ファームを作りたい
マリファナの魅力に取り憑かれ始めてから8年。日本から遠く離れた地で毎日マリファナのことを考え続ける彼女の頭の中には、ひっそりと今後のプランが描かれていた。
「親が酪農家なので将来はそこを継いで大麻ファームを作りたいんです。もちろんマリファナが合法になったらですけど、医療用大麻は一部合法化されたし、それによってCBD関係のスタートアップ企業も増加している。親にはすでに自分の計画を話していて了承を得ています」
「今後もマリファナを通じて広がる可能性を探していきたい」と語るモニカさん。その瞳には、故郷と未来を見据えた確かな決意が宿っていた。
<取材・文・撮影/時弘好香>
【時弘好香】
元『週刊SPA!』編集者。ビジネス書『海外ノマド入門』(ルイス前田著)の編集を担当後、自身もノマドワーカーの道を志し、5年勤めた出版社を退社。現在はカナダでワーホリ中。将来的には旅先で出会った人々を取材しながら世界一周することを視野に入れている。無類の酒好きで特に赤ワインには目がない。
しかし、その賑やかなアクティビティには目もくれず、 誰とも異なる目的でこの地を訪れた女性がいる。北海道出身のモニカさん(29歳・女性)だ。
ワーキングホリデーの拠点としてキャンモアを選んだモニカさんだが、彼女がここで追求しているのは、マリファナを使ったお菓子作り。自然豊かなキャンモアの静けさを背景に、モニカさんは日々、通称『ポットエディブル』の製作に励んでいる。
同僚やワーホリ仲間からは“マリファナ姉さん”とも呼ばれる彼女はどのようにしてマリファナに出会い、キャンモアを拠点に選んだのか。その背景に迫った――。
◆オーストラリアで知ったマリファナの魅力
「ワーホリの拠点としてカナダを選んだ理由はマリファナが合法だから」
モニカさんがマリファナに興味を持ったのは21歳の時。友達とその彼氏に誘われたという。
「初めてマリファナを吸ったのは北海道の某所でアパレル店員をやっていた頃。友達とその彼氏に誘われて家で吸いました。昔から洋楽や洋画が好きで一つの文化としてマリファナが視野に入ることが多かったため、吸うこと自体にはあまり抵抗がなかった。
でも当時はまだ良さが分かってなくて、貰いタバコと同じ感覚で貰える時だけ吸うという感じでした」
現在は1日5g以上、1ヶ月で40gほど摂取しているという彼女が本格的にマリファナにハマるようになったきっかけは、オーストラリアでのワーキングホリデーだった。
「英語が好きだったのでワーホリに挑戦することに。だけどマリファナはオーストラリアでは違法。だから本当は合法で摂取出来るカナダに行きたかったけど、コロナ直後だったこともあり、人数制限を設けていなくて比較的申請が楽なオーストラリアへ。
そこで出会った日本人の友達が、マリファナをこっそり買える場所を知っていて。その時に人づてで買ってみたらハマっちゃったんです」
◆カナダの僻地でマリファナと音楽を楽しむ生活
モニカさんは自然豊かなキャンモアでマリファナ漬けの毎日を過ごしている。「拠点はカナダならどこでも良かった」と話す彼女が最終的にこの土地を選んだ背景には意外な理由が隠されていた。
「最初の1ヶ月はトロントにいたんです。理由は好きなアーティストのライブが定期的に開催されていたから。でも都会だからか求人の倍率が高くて職をゲット出来ず。
そこで日本人用の求人サイト「イーメープル」でカナダ全土で検索してたまたま引っかかったのがキャンモアだった。最初は『どこ?』って感じでしたけど、職場近くにマリファナショップがあるかどうかだけはチェックして。徒歩10分圏内にあったので、ここしかないと思いました」
現在彼女はロッジのハウスキーパーとしてフルタイムで働きながら寮で暮らしている。
「時給は19ドル。今は2人部屋の寮に住んでいるので家賃は月300ドルです。キッチンとバスルームは共有。マリファナに使うお金は月50ドルくらい。
ここは僻地だし、アウトドアに興味のない私は特にすることもないのでお金は貯まります。仕事は基本的に1人で行うので飽きることもありますが、私は音楽が好きで好きな曲を聴きながら出来る仕事のため、音楽好きな自分にはとても合っているなと思っています」
◆マリファナは奇麗なものをもっと美化してくれる
そんな彼女が今回作ってくれたポットエディブル(マリファナ入り食品)はチョコレートブラウニー。
「冬は寒すぎて外に出られない」というモニカさんは、屋内で手軽にマリファナを摂取できるポットエディブルにハマっているという。共有キッチンにはマリファナ特有のハーブのような爽やかな香りが充満していた。
「基本的には検索して出てきたお菓子のレシピにグラインダーで細かく挽いたマリファナを入れるだけです。元々お菓子作りなんてしたことなかったのですが、ここに来てからすっかり夢中で。
材料費は30ドルくらい。一回作るのに3時間程度かかるけど、エディブルは効果が強いので1人で食べるなら1ヶ月は持ちますね」
エディブルを作りながら「元々はPMSの緩和目的でマリファナを吸っていた」と語るモニカさんだが、摂取を続けるうちに精神的にも大きな変化が訪れ、日々人や物事に感謝できるようになっていったという。
「元々生理前のイライラがひどかったのですが、マリファナを摂取し始めたらその回数が徐々に減ってむしろ人に感謝する機会が増えました。
あとマリファナって元々綺麗なものをもっと美化してくれるんです。北海道育ちなので元々自然が好きなのですが、マリファナを摂取しながら見るともっと綺麗に見える。
美味しいものがもっと美味しくなったりもしますね。だから段々と日々起こる物事にも感謝するようになっていきました。お酒と違ってその感覚を覚えていることができるので、摂取していない時でもその感情を常に持つことができるんです」
◆3種類をシーンによって使い分けている
マリファナの魅力を語りだすと止まらない彼女。普段摂取する大麻の種類はサティバ、インディカ、ハイブリッドで気分や時間帯によって使い分けているという。それぞれどのような違いがあるのか。
「サティバは気分を高めてくれるのでちょっとしたハイキングの前などに摂取したりテンションを上げたい時に最適。インディカはシャワー後や寝る前に摂取しているのですが、キマるとべッドから動けなくなる。そのおかげでリラックスして寝ることができますね。
ハイブリッドは両方の良いところ取りなので活力とリラックスの両方を取り入れたいときに摂取します」
多様な効果を楽しめる一方、慎重に向き合う必要がある側面も。モニカさんが続ける。
「『草ボケ』と言って毎日ある程度の量を吸い続けると物忘れが多くなるので定期的に吸わない期間作る人もいます。
また、何かをしなければいけない時にインディカを吸うと動くにも足が重くなるし、思考も楽観的になるのですべてを後回しにしてしまうこともある。シーンによって使い分けるのが大事です」
◆実家のある北海道に大麻ファームを作りたい
マリファナの魅力に取り憑かれ始めてから8年。日本から遠く離れた地で毎日マリファナのことを考え続ける彼女の頭の中には、ひっそりと今後のプランが描かれていた。
「親が酪農家なので将来はそこを継いで大麻ファームを作りたいんです。もちろんマリファナが合法になったらですけど、医療用大麻は一部合法化されたし、それによってCBD関係のスタートアップ企業も増加している。親にはすでに自分の計画を話していて了承を得ています」
「今後もマリファナを通じて広がる可能性を探していきたい」と語るモニカさん。その瞳には、故郷と未来を見据えた確かな決意が宿っていた。
<取材・文・撮影/時弘好香>
【時弘好香】
元『週刊SPA!』編集者。ビジネス書『海外ノマド入門』(ルイス前田著)の編集を担当後、自身もノマドワーカーの道を志し、5年勤めた出版社を退社。現在はカナダでワーホリ中。将来的には旅先で出会った人々を取材しながら世界一周することを視野に入れている。無類の酒好きで特に赤ワインには目がない。