12月25日、芸能活動を休止中のダウンタウン・松本人志が沈黙を破り、裁判や今後について語ったインタビューを公開した。松本は、芸能記者の中西正男氏のインタビューに答え、その様子がYahoo!ニュース内のサービスであるエキスパートの中で配信された。今回は、このインタビューを基にして、松本がどういった形で復帰して活動再開するのか、元テレビ局スタッフが検証していきたい。
◆なぜ独占インタビューに答えたのか?
まず、今回の松本のインタビューが、Yahoo!ニュース内のコンテンツで公開されたことに驚きを感じた。松本の独占インタビューとなれば注目度が高く、これまでならテレビ番組か週刊誌で現在の心境を話すのが通例だ。しかし、蓋を開けてみれば、中西記者の独占という形でYahoo!ニュース内サービスでの配信。松本クラスの大物芸能人の復帰に向けたインタビューとしては、異例中の異例だ。
なぜ、松本はテレビや週刊誌を選ばなかったのか? その大きな理由は、自分の気持だけをストレートに伝えたかったからだろう。中西氏はお笑いに精通している記者で、プロフィールにも「上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当」と書いているほど。松本が所属する吉本興業の芸人への取材も多く信頼を獲得している。今回のインタビューでは松本の一人語りとなっていて、中西記者が鋭い質問をしている様子はないだけに、何かしらの取り決めがあったのではないか?
通常、テレビや週刊誌では芸能人が自分の意見だけを一方的に語ることはできない。特に、松本のように騒動の全貌が見えない場合、一方的に主張をぶつけるのは偏向報道になってしまうからだ。ただ、今回は掲載するのがYahoo!ニュース内の中西氏の個人ページということで、メディアとしての責任を問われることも少ない。
記事を見た読者からは賛否両論が巻き起こっている。X(旧ツイッター)上では歓迎するコメントが多い一方で、「忖度記事」「全然反省していないのがよくわかった」「どうぞご自由にって感じ」など、厳しい意見も書き込まれていた。
◆「ダウンタウンチャンネル(仮)」ってなんだ?
とはいえ、今回の松本が発信した主張は、そこまでおかしなものではなかった。裁判に関しては相手もいることで何とも言えないが、ファンのために復帰したい、収入がなくなりプライドをへし折られたというのは本音だろう。そこで、松本が復帰先として提示したのが、「ダウンタウンチャンネル(仮)」だ。
まだ構想中だとしながらも、松本は「ダウンタウンを見るならここという独自の基地局」と説明している。吉本興業はメディアの取材に、来春に相方である浜田雅功とともに、テレビやYouTubeチャンネルではない「月額制の独自のプラットフォーム」で復帰を計画していると説明している。
この「ダウンタウンチャンネル(仮)」は、どういったサービスになるのか? 説明を見る限りでは、会員制オンラインサロンだと推測できる。芸人で言えばキングコング・西野亮廣や、オリエンタルラジオ・中田敦彦のサロンが有名だが、実はアイドルや俳優などさまざまなタレントが有料のサロンを運営する、おなじみのサービスだ。松本も、ダウンタウンとしてオンラインサロン的なサービスを展開すると思われる。
◆テレビでは表現できない過激なネタも?
では、コンテンツは何を配信するのか? 松本はインタビューで「週に何本か見てもらえる番組も作りたい」と語っている。「番組」という言葉を使っていることから、かなり本格的に作り込まれた映像コンテンツになることが予想される。
そもそも、吉本興業は映像制作も行える会社であり、現在は「FANY(ファニー)」と名付けたエンタメ専用のプラットフォームを展開中。松本が考える映像コンテンツを作り出せる力を会社が持ち、さらにプラットフォームの運営サポートもしっかりできる。コンテンツも、かなり凝ったものになるのは間違いなさそうだ。
また、インタビューで、松本はかなり熱っぽくテレビの現状に対して持論を展開している。テレビとの決別では無いとしながらも、言葉狩りを受けているようでメディアとして置かれている状況は厳しいと発言。
そのうえで、「お客さんから直接お金をもらってスポンサーになってもらう」とチャンネルを説明している。踏まえると、テレビでは表現できない過激なネタも、「ダウンタウンチャンネル(仮)」では展開することが予想される。
◆歴史を作り変えてきた松本が最後に何を生み出すのか?
具体的には、「ダウンタウンチャンネル(仮)」はどんなサービスになるのか。間違いなく、お笑いの歴史をかえるようなサービスになるだろう。そもそも、松本はさまざまな笑いのフォーマットを確立してきた芸人だ。
90年代には、個人でビデオ作品『ダウンタウン松本人志の流 頭頭(とうず)』、『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』など、コントやネタを披露する実験的な作品を販売。さらに、大喜利を進化させた『一人ごっつ』(フジテレビ系)、トークの新たなフォーマットを作った『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)、大喜利の進化系『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)を制作している。
さらに、笑わないおもしろさを極める『笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)と、進化系となる『ドキュメンタルシリーズ』(Amazon Prime Video)を生み出した。ここに書ききれないくらい、現在のバラエティ番組で普通に行われているネタや企画の原型を、松本はブレーンたちと作り出している。そんな松本が仕掛ける新サービスとなり、期待せずにはいられないところだ。
◆2025年のエンタメ界で「もっとも話題を集めるコンテンツ」に
では、どんなものが制作されるのか?
まず、松本はインタビューで「一発目は浜田と二人でやりたい」と明言している。つまり、ダウンタウンとして活動するということで、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)で見せたようなコントが予想される。さらに、松本個人では『IPPONグランプリ』や『ドキュメンタルシリーズ』のように、他の芸人も起用した競技番組も制作するだろう。松本の呼びかけがあればほとんどの芸人は協力するだろうし、全く思いもよらない企画が生み出される可能性が大だ。
また、局との権利問題もあるがファンとしては、『笑ってはいけない』、『すべらない話』の新作を期待するところ。このあたりは、吉本興業も含め確実に狙っていくところでは無いだろうか? 「ダウンタウンチャンネル(仮)」は、2025年のエンタメ界でもっとも話題を集めるコンテンツになることは間違いないだろう。
ただ、懸念点としては、松本のアバンギャルドな実験性が色濃く出過ぎないかという部分だ。これまで、『大日本人』、『しんぼる』『さや侍』、『R100』と4本の映画で監督を務めた。どれも実験的な映像作品で興味深かったが、お世辞にもヒットしたとは言えない。松本の頭の中を覗き見できるおもしろさはあるが、映画監督として見せた独創性が一人走りしてしまうと、「ダウンタウンチャンネル(仮)」も危険な状況になるかもしれない。しっかりコントロールできるブレーンがいるのかは、チャンネルがおもしろくなる大きなポイントになりそうだ。
何にせよ、2024年のクリスマスに、超弩級のインタビュー記事を世に送り出してきた松本人志。批判の声があるものの、多くの日本人が松本のお笑いを求めているだけに、来年は予定通り春に「ダウンタウンチャンネル(仮)」が開設されることを願いたい。
<TEXT/ゆるま小林>
【ゆるま小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆
◆なぜ独占インタビューに答えたのか?
まず、今回の松本のインタビューが、Yahoo!ニュース内のコンテンツで公開されたことに驚きを感じた。松本の独占インタビューとなれば注目度が高く、これまでならテレビ番組か週刊誌で現在の心境を話すのが通例だ。しかし、蓋を開けてみれば、中西記者の独占という形でYahoo!ニュース内サービスでの配信。松本クラスの大物芸能人の復帰に向けたインタビューとしては、異例中の異例だ。
なぜ、松本はテレビや週刊誌を選ばなかったのか? その大きな理由は、自分の気持だけをストレートに伝えたかったからだろう。中西氏はお笑いに精通している記者で、プロフィールにも「上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当」と書いているほど。松本が所属する吉本興業の芸人への取材も多く信頼を獲得している。今回のインタビューでは松本の一人語りとなっていて、中西記者が鋭い質問をしている様子はないだけに、何かしらの取り決めがあったのではないか?
通常、テレビや週刊誌では芸能人が自分の意見だけを一方的に語ることはできない。特に、松本のように騒動の全貌が見えない場合、一方的に主張をぶつけるのは偏向報道になってしまうからだ。ただ、今回は掲載するのがYahoo!ニュース内の中西氏の個人ページということで、メディアとしての責任を問われることも少ない。
記事を見た読者からは賛否両論が巻き起こっている。X(旧ツイッター)上では歓迎するコメントが多い一方で、「忖度記事」「全然反省していないのがよくわかった」「どうぞご自由にって感じ」など、厳しい意見も書き込まれていた。
◆「ダウンタウンチャンネル(仮)」ってなんだ?
とはいえ、今回の松本が発信した主張は、そこまでおかしなものではなかった。裁判に関しては相手もいることで何とも言えないが、ファンのために復帰したい、収入がなくなりプライドをへし折られたというのは本音だろう。そこで、松本が復帰先として提示したのが、「ダウンタウンチャンネル(仮)」だ。
まだ構想中だとしながらも、松本は「ダウンタウンを見るならここという独自の基地局」と説明している。吉本興業はメディアの取材に、来春に相方である浜田雅功とともに、テレビやYouTubeチャンネルではない「月額制の独自のプラットフォーム」で復帰を計画していると説明している。
この「ダウンタウンチャンネル(仮)」は、どういったサービスになるのか? 説明を見る限りでは、会員制オンラインサロンだと推測できる。芸人で言えばキングコング・西野亮廣や、オリエンタルラジオ・中田敦彦のサロンが有名だが、実はアイドルや俳優などさまざまなタレントが有料のサロンを運営する、おなじみのサービスだ。松本も、ダウンタウンとしてオンラインサロン的なサービスを展開すると思われる。
◆テレビでは表現できない過激なネタも?
では、コンテンツは何を配信するのか? 松本はインタビューで「週に何本か見てもらえる番組も作りたい」と語っている。「番組」という言葉を使っていることから、かなり本格的に作り込まれた映像コンテンツになることが予想される。
そもそも、吉本興業は映像制作も行える会社であり、現在は「FANY(ファニー)」と名付けたエンタメ専用のプラットフォームを展開中。松本が考える映像コンテンツを作り出せる力を会社が持ち、さらにプラットフォームの運営サポートもしっかりできる。コンテンツも、かなり凝ったものになるのは間違いなさそうだ。
また、インタビューで、松本はかなり熱っぽくテレビの現状に対して持論を展開している。テレビとの決別では無いとしながらも、言葉狩りを受けているようでメディアとして置かれている状況は厳しいと発言。
そのうえで、「お客さんから直接お金をもらってスポンサーになってもらう」とチャンネルを説明している。踏まえると、テレビでは表現できない過激なネタも、「ダウンタウンチャンネル(仮)」では展開することが予想される。
◆歴史を作り変えてきた松本が最後に何を生み出すのか?
具体的には、「ダウンタウンチャンネル(仮)」はどんなサービスになるのか。間違いなく、お笑いの歴史をかえるようなサービスになるだろう。そもそも、松本はさまざまな笑いのフォーマットを確立してきた芸人だ。
90年代には、個人でビデオ作品『ダウンタウン松本人志の流 頭頭(とうず)』、『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』など、コントやネタを披露する実験的な作品を販売。さらに、大喜利を進化させた『一人ごっつ』(フジテレビ系)、トークの新たなフォーマットを作った『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系)、大喜利の進化系『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)を制作している。
さらに、笑わないおもしろさを極める『笑ってはいけないシリーズ』(日本テレビ系)と、進化系となる『ドキュメンタルシリーズ』(Amazon Prime Video)を生み出した。ここに書ききれないくらい、現在のバラエティ番組で普通に行われているネタや企画の原型を、松本はブレーンたちと作り出している。そんな松本が仕掛ける新サービスとなり、期待せずにはいられないところだ。
◆2025年のエンタメ界で「もっとも話題を集めるコンテンツ」に
では、どんなものが制作されるのか?
まず、松本はインタビューで「一発目は浜田と二人でやりたい」と明言している。つまり、ダウンタウンとして活動するということで、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)で見せたようなコントが予想される。さらに、松本個人では『IPPONグランプリ』や『ドキュメンタルシリーズ』のように、他の芸人も起用した競技番組も制作するだろう。松本の呼びかけがあればほとんどの芸人は協力するだろうし、全く思いもよらない企画が生み出される可能性が大だ。
また、局との権利問題もあるがファンとしては、『笑ってはいけない』、『すべらない話』の新作を期待するところ。このあたりは、吉本興業も含め確実に狙っていくところでは無いだろうか? 「ダウンタウンチャンネル(仮)」は、2025年のエンタメ界でもっとも話題を集めるコンテンツになることは間違いないだろう。
ただ、懸念点としては、松本のアバンギャルドな実験性が色濃く出過ぎないかという部分だ。これまで、『大日本人』、『しんぼる』『さや侍』、『R100』と4本の映画で監督を務めた。どれも実験的な映像作品で興味深かったが、お世辞にもヒットしたとは言えない。松本の頭の中を覗き見できるおもしろさはあるが、映画監督として見せた独創性が一人走りしてしまうと、「ダウンタウンチャンネル(仮)」も危険な状況になるかもしれない。しっかりコントロールできるブレーンがいるのかは、チャンネルがおもしろくなる大きなポイントになりそうだ。
何にせよ、2024年のクリスマスに、超弩級のインタビュー記事を世に送り出してきた松本人志。批判の声があるものの、多くの日本人が松本のお笑いを求めているだけに、来年は予定通り春に「ダウンタウンチャンネル(仮)」が開設されることを願いたい。
<TEXT/ゆるま小林>
【ゆるま小林】
某テレビ局でバラエティー番組、情報番組などを制作。退社後、フリーランスの編集・ライターに転身し、ネットニュースなどでテレビや芸能人に関するコラムを執筆