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大谷の愛犬「コイケル」知名度急上昇で「保護犬団体が頭を抱えるワケ」。飼い主が迷惑行為を受けるケースも

日刊SPA! 2024年12月28日 8時54分

 大谷翔平選手の愛犬として、すっかり定着したコーイケルホンディエ(以下、コイケル)のデコピンくん。2023年のア・リーグMVP発表の際、受賞インタビューで初めてメディアに登場。その後の2024年シーズン中、大谷がデコピングッズを身につけたり、本塁打を打った際にデコピンポーズを披露するなど、たびたび話題になっていた。
 なかでも大きな話題となったのは、今年7月にドジャース本拠地で行われた始球式。マウンド上に置かれたボールを咥え、ホームベースの後ろで待つ大谷選手のもとへ一気に駆け寄る姿は、日米ともに大きく報道された。

 日本ではかなりマイナーな犬種であったが、世界的なスーパースターが飼っていることを公表したことで、一躍知名度を上げることになったコイケル。この影響により、一時期ペットショップやブリーダーのもとに問い合わせが急増したようだ。

 都内ペットショップ勤務のIさんによると、「この一年間で、お客さんに『大谷の犬はいますか?』と何度も聞かれました」とのこと。

◆犬猫保護団体が頭を抱えるワケ

 有名人が犬を飼っていることを公表することにより、その犬種の注目度が一気に高まることは過去にもあったという。NPO法人 みなしご救援隊 犬猫譲渡センターの理事を務める佐々木博文氏に話を聞いた。
「20年以上前ですが、安室奈美恵さんがキャバリアを飼っていることを公表し、当時キャバリアが人気犬種となりました。それ以降もメディアの影響による特定の犬種ブームはたびたび起きていましたが、特に印象的だったのはチワワですね。2002年にアイフルのCMに出演したことで、一気にチワワブームが起きました。当時のチワワ人気は凄まじかったです」

 ただ、こういった一時の犬種ブームは、保護団体を苦しめることに繋がる恐れがあるという。

「犬や猫を安易に飼い始めてしまうと、その後のお金の問題や近隣住民からの苦情など、さまざまな問題に直面することがあります。その結果、飼育放棄をしてしまう人が増えてしまう恐れもあるのです。犬を飼うためには、愛情だけでなく、環境を整えること、アレルギー検査を受けることなど、多くの準備が必要になります。だから安易に飼い始めることだけはやめてほしいです。最近では、特に高齢者の飼育放棄が増えているので、ご自身の年齢が犬を最期まで飼える年齢かどうかも、よく考えてほしいですね」

 ただ、今回話題となったコイケルに関しては、「珍しい犬種ということもあって、衝動買いして即飼育放棄といった例は今のところありません」と話した。

◆飼い主が語る「コイケルを飼うことの難しさ」

「どの犬種でも同じですが、特にコイケルは衝動的に飼い始められるような犬ではないです」

 そう話すのは、都内でコイケルを飼っている主婦のAさん。旦那さんと娘さんの3人暮らしのAさん宅に、コイケルを迎え入れたのは4年ほど前のこと。その2年前から、犬を迎えるための勉強を始めたという。

「家族で何度も話し合った結果、コイケルをお迎えしようという話になりました。ブリーダーさんに問い合わせると2年待ちとのことだったので、お迎えするまでの2年間、自分たちなりに犬を飼うことについての勉強をすることにしたんです。アレルギー検査を受けたり、犬に関する本をひたすら読んだりと、家族3人で多くのことを学びました。特に保護犬団体さんから一時的に保護犬を預かる『預かりボランティア』では、“犬はかわいいというだけではない”ことを学ばせていただき、お迎えするまでの2年間でリアルな犬の経験値を積むことができたと思います」

◆なぜコイケルを迎えることにしたのか

 数多くの犬種がいるなか、希少な犬種であるコイケルを飼うことにしたAさん一家。2年待ちのなか、なぜコイケルを選んだのだろうか。

「主人はボーダーコリー、子供はチワワ、私は柴犬がいいんじゃないかと、最初はそれぞれが異なるタイプの犬種を欲しがったんです。うちのライフスタイルに合う犬はどの犬なのか、10年20年と一緒に過ごしていくうえでのメリットデメリットなどを話し合った結果、コイケルがピッタリなのではないかという結論に至りました」

 またAさんは、「飼う前に、生まれてくる子の母犬やおばあちゃん犬にも会いに行きました。犬種の特性だけでなく、実際に生まれてくる子との相性を考えることも必要だと思います」と続けた。

◆コイケルを飼う大変さ

 そして満を持してコイケルを迎えたAさん一家。実際に飼っているからこそわかる、コイケルの特徴を聞いてみた。

「ひとことでコイケルと言っても個体差もありますので、あくまでうちのコの場合ですが……。まずは吠え声が意外に大きいです。そして家族以外にはなかなか懐かなかったり、甘えん坊でお留守番が苦手な面もあります。コイケルオーナーの方が『柴犬とボーダーコリーを合わせたような犬』とおっしゃていて、まさにそれだなと思いました」

 また、コイケルはスポーツドッグのため、他の犬と比べて運動量を多くしなければならないという。

「散歩は1日2時間は絶対です。週に3回くらいは貸し切りのドッグランに行ったり、河川敷などの広いところでロングリードで遊ばせています。適切な運動量を与えないと、破壊行動や自傷行為に走ったりすることもあるので、注意が必要です。これだけ大変な犬種なので、デコピンくんにも優秀なドッグトレーナーがついていると思います」

◆散歩中に迷惑行為を受けたことも…

 飼うことが簡単な犬などいないが、特に飼育が難しいといえるコイケル。この非常に珍しい犬種を大谷選手が飼い始めたことで、Aさんもかなり衝撃を受けたようだ。

「デコピン君がメディアに出てきたときは、まだ子犬だったので、一瞬違う犬種かもしれないと思いました。ただ、コイケルだと判明してからは、『これだけいる犬種の中から、どうしてコイケルを選んだの?』というのが正直な感想です」

 そして、コイケルがこの1年で急に“話題の犬種”となったことで、困ることも増えたという。

「散歩をしていると、知らない人や子ども連れのご家族が『大谷の犬だ!』と走って寄ってきたり、急に触ってきたりすることもあります。いきなり来られると飼い主である私も緊張しますし、その緊張が犬に伝わって一気に警戒モードになってしまうので、そういう行為は正直やめてほしいです」

◆「大谷の犬がほしい」と思うのはやめてほしい

 2年もの間、家族に迎え入れる犬を考え、経験を積んで準備してきたAさん。ここまで真剣に考えてきたからこそ、衝動買いしようとしている人々に警鐘を鳴らしたいと話す。

「コイケルに似せた別の犬種を掛け合わせて、コイケルっぽい犬を繁殖させるような繁殖家さんが現れないか……というのは少し不安です。それと、飼う側としては、大谷さんが飼ってるからという理由だけで欲しがったりしてほしくないですね。犬と向き合う時間がちゃんと作れない方や、仕事柄忙しくて出張や留守が多い方、また、犬をお飾りとしか考えてない飼い主にはオススメしません。しかし、素晴らしい犬なのは事実です。私の知っているコイケルのオーナーは真剣に犬と向き合って、一生懸命犬との生活を豊かにするよう努力しています。今後、不幸な犬が増えたりしないことを祈っています」

 ペットショップに行き、お金さえ出せば簡単にペットが買えてしまう今の日本。衝動的に買ってしまって飼育放棄をする人がまだ多くいるなか、Aさん一家のように、家族会議で真剣に話し合って飼う犬種を決めることが常識とならないといけない。

取材・文/セールス森田

【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント

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