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「楽天市」「ソフトバンクシティ」の誕生も!? 2025年の不動産市況は地方の過疎化、東京一極集中がさらに進む

日刊SPA! 2024年12月28日 15時52分

 12月2日、首都圏を中心にファミリーマンションの開発・建設・分譲事業を展開する総合不動産会社であるクミカが、個人向け・不動産事業者向けの不動産販売事業を展開し、米ナスダック市場に上場しているシーラテクノロジーズを完全子会社化するというニュースが飛び込んできた。
 これが株式市場で話題になったのには、いくつか理由がある。

 時価総額で2.85倍も大きなシーラテクノロジーズを、クミカが完全子会社化して親会社になると発表されたからだ。いわゆる「小が大を呑み込む」形での経営統合だ。そして、親会社はシーラホールディングスと社名を変え、シーラテクノロジーズ会長の杉本宏之氏が新会社の代表取締役会長として就任することが決まった。

 杉本宏之氏といえば、高校卒業後、住宅販売会社に就職、22歳でトップ営業マンとなり、2001年、24歳でエスグラントコーポレーションを設立。28歳のときには“不動産業界で最年少の上場経営者”として株式上場を果たし、一躍トップ経営者の仲間入りを果たした起業家だ。

 エスグラントコーポレーションはその後のリーマン・ショックなどの影響を受け、400億円もの負債を抱え経営破綻してしまうが、杉本氏は2010年にはシーラテクノロジーズを設立。いまや売上高200億円を超える企業にまで成長し、再起を果たしている。

 そんな不動産業界、不動産マーケットを知り尽くした杉本氏に、2025年以降の不動産市況の動向を聞いた。

◆◆物件の供給数が人口増に追いついていない

 東京23区の新築マンション価格が1億円を超え、一般のサラリーマン家庭では「マンションを買う」のは高嶺の花となった。用地取得費や建築コストの増加などが要因であるが、価格高騰をけん引したのは都心部や湾岸エリアのタワーマンションであろう。

 タワーマンションをはじめ、今後の不動産市況について、杉本氏はどのように見ているのだろうか?

「2024年の東京都の人口は10万人ペースで増えています。対して、供給数は1万戸程度。建設費が高騰していることに加え、人口が増えているのに対してマンションの供給数が絞られている以上、需給のバランスから確実に不動産価格は堅調に推移していくと見ています」(杉本氏)

 総務省が発表した人口移動報告によると、2023年の東京都の転入超過数(国内における転入者数-転出者数)は6万8285人だった。2024年の東京都の人口は1月1日時点で1410万人、11月1日時点で1420万人。東京都の人口は2024年もすでに約10万人も増えており、「東京一極集中」が加速している。

 ただし、不動産価格が一方的に上がるだけかというと、価格にマイナスインパクトを与える材料もある。

「今後、日本は金利が上がっていく時代に入りました。金利が上がっていくと当然、不動産価格下落の要因となりますが、不動産価格上昇の要因を吸収するほどかというと、そこまででもないと思いますので、総合的に考えると不動産価格は堅調に推移していくのではないかと見ています」(杉本氏)

◆◆これからの時代の不動産投資の戦略とは?

 不動産投資をしようと思った場合、「都心・築浅マンション」「地方・築古物件」など、エリアや築年数などでカテゴライズされたさまざまな投資タイプがある。

 シーラグループは主に「都心」「築浅」の投資用マンションを供給しているが、これから不動産投資を始めようと思うとどのエリアが狙い目なのだろうか。

「日本の人口、特に生産年齢人口の減少は激しく、出生数は激減しています。地方の人口も加速度的に減少し過疎化が進み、都市部に人口も成長も集中しているのが現状です。

 政府がいくら地方創生だといっても地方財政は相当ひっ迫していて、地方交付金がもらえないと成り立たない市町村が40%もあると言われています。このままでは道路、橋、鉄道、電力供給、水道など公共インフラのサービスも低下し、地方での生活がしづらくなり、加速度的に過疎化が進む可能性があります。

 こうなると、地方がより住みづらくなり、都心のマーケットに関しては堅調に推移していくのは間違いないんじゃないかなと思います。

 このような環境下では、私たち不動産デベロッパーとしては、どういう都市を選んで集中投資していくかが生命線となります。成長していく都市をどう選ぶか、どこに集中して資本を投資していくかが経営のカギを握ると思っています」(杉本氏)

◆◆「楽天市」「ソフトバンクシティ」の誕生も!?

 地方衰退と東京一極集中がますます色濃くなっていくと杉本氏は見ているが、地方財政がこれ以上持たなくなると、驚くようなことが始まるかもしれない。

「公的な立場の方々と話していると、まことしやかに『行政のネーミングライツが始まるよ』って言うんですね。例えば『楽天市』とか『ソフトバンクシティ』とか。今はまだみんな冗談で笑っていますが、50年後とかには本当に起きないと限らないほど、地方財政は深刻な事態なのです」(杉本氏)

 ネーミングライツといえば、「味の素スタジアム」や「福岡PayPayドーム」(現在は「みずほPayPayドーム福岡」)など、スポーツ施設や公共施設などに企業名などを付けるのがよく知られている。

 他にも、「箱根ターンパイク」は東洋ゴム工業やマツダが命名権を取得し社名ブランドを冠した愛称が付けられていたように、道路や駅など公共インフラが対象となるケースもある。

 将来的に本当に「自治体名そのもの」がネーミングライツの対象になるかはさておき、それだけ財政が厳しい地方は過疎化が進み、東京一極集中がますます進むということ。2025年、不動産価格はさらに高くなり、手の届かない存在になっていくのだろうか。

<取材・文/日刊SPA!編集部>

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