―[シリーズ・駅]―
この冬の発売分から複数人で同じきっぷの使用ができなくなり、使用期間も連続する5日間(3日間)と大幅に改正されたJR各社が販売する『青春18きっぷ』。
改悪と批判の声が上がっているが、文句を言うのはほかの人たちに任せ、新設された3日券を利用し、実際に乗り鉄の旅をしてみることに。
ちなみに今回選んだルートは、札幌駅から釧路、網走、旭川を巡って再び札幌に戻るルート。時刻表を調べたところ、3日あればグルっと回ることができたからだ。
◆自動改札機で通れるようになり快適ではあるが…
初日は少し早めに札幌駅に到着したので、駅から5分ほどの場所にある赤れんが庁舎の呼び名で有名な旧北海同庁でプチ観光。
駅に戻ると駅員のいる有人改札は、外国人観光客らで行列ができていたが、青春18きっぷは今回から自動改札の利用が可能。過去には改札で待たされ乗り遅れたこともあるため、自動改札機でサクッと通れるのはやはり気持ちがいい。
札幌から新千歳空港行きの快速エアポートに乗り、終点の2つ前の千歳駅で石勝線の普通列車に乗り換え。実は、石勝線の新夕張―新得間は、快速・普通列車が1本も走っていないことから特例で18きっぷでも特急への乗車が認められており、これを利用するためだ。
ただし、乗り継ぎには難があり、千歳から新夕張行きの普通列車は、筆者が乗った11時台と17時台の1日2本だけ。
1日で釧路まで行くためには11時台の列車で向かうしかなかったが、新夕張から新得に向かう次の特急列車(おおぞら7号)が到着するのは15時7分。
新夕張には12時半過ぎに着いてしまったため、待ち時間を過ごせるような場所もないこの駅で2時間半も待つことに。
なお、JR北海道は先日、3月のダイヤ改正でこのおおぞら7号の新夕張駅の通過を発表。これにより札幌方面から青春18きっぷを使い、1日で釧路まで行くのは不可能になる。一連のルール改正とは関係ないが、ダイヤ改正も18きっぷユーザーにとって大きな壁となってしまったようだ。
◆誰もいない極寒の無人駅の足湯でまったり
それでも新夕張―新得間は89.4㎞と距離があり、所要時間も1時間弱。札幌から帯広・釧路方面に行く特急は全席指定席だが、グリーン車以外の空いている席なら自由に座ることができる。もちろん、追加料金は一切取られない。
束の間の特急のありがたみを感じつつ、列車は日高山脈を越えて新得駅へ。駅前には町営の公衆浴場があったため、乗り換え時間を利用してサッと入浴。出発時刻が迫っていたので長湯はできなかったが、さっぱりすることができた。
新得からは釧路まで各駅の普通列車で行くことができたが172.1㎞もあり、乗車時間も4時間19分もの長丁場だ。すでに真っ暗で車窓の景色を見ることもできず、スマホで時間を潰すハメに。
ただ列車に乗っていただけだが身体は疲れていたようで、釧路駅前のホテルにチェックインすると夕食も取らずにそのまま爆睡してしまった。
◆川湯温泉駅で貸切状態の足湯を堪能
2日目は、釧網本線で網走まで行き、そこからさらに北見へ。釧路駅6時38分発の始発の普通列車に乗り、まずは途中駅の川湯温泉駅で下車。ここは駅の隣に足湯小屋があり、そこに立ち寄るためだ。
次の列車までは2時間以上あったので駅周辺を散策し、冷えた身体を足湯で温めるというのを繰り返しているうちに時間が経過。時間が早かったせいか駅には誰もおらず、足湯も貸切状態だった。
だが、もう1つの楽しみにしていた川湯温泉駅構内での洋食レストランでの食事は、この日は休みだったらしく残念ながら叶わず。
釧網本線に同駅のほか、止別駅や北浜駅など無人駅ながら飲食店が入っている駅が複数ある。今回は食べることができなかったが、別の機会にローカル線の駅グルメ巡りをしてみるのもよさそうだ。
◆国鉄時代の廃駅を利用した鉄道記念館でお宝の数々を堪能
川湯温泉駅からは快速しれとこ摩周号で網走へと移動。
そこから向かったのは駅前からバスで20分ほどの場所にある網走市鉄道記念館。国鉄末期の87年3月に全線廃止となった湧網線の卵原内駅(うばらない)の駅舎を記念館にしており、ホームも残されている。
しかも、“キューロク”の愛称で親しまれた国鉄9600形蒸気機関車と旧型客車のオハ47形が展示されていたが、すでに冬ということもあってカバーがかけられていた。
それでも記念館には駅名や列車名などプレート類をはじめ、貴重な備品の数々が展示。正直、そこまで期待していなかったが、予想に反して大満足の結果となった。
◆人口あたりの焼肉店の数が日本一。北見に到着
網走駅に戻った後は、この日の宿を予約している北見へ。なんでも焼き肉の街として有名らしく、人口あたりの店の数は全道一とか。そこで2日目の晩は名物の焼き肉を堪能し、いよいよ最終日の3日目に突入。
ところが、乗車予定だった旭川行きの特別快速きたみは、途中の信号に不具合が生じた影響により54分遅れで出発。でも、冬の北海道は雪の影響で運休になることも多いため、列車が走ってくれるだけありがたい。
余談だが、2025年3月のダイヤ改正以降は、旭川―網走で1日2往復運行している『特急大雪』が廃止。以降は『特別快速大雪』になるとJR北海道から発表された。
そのため、青春18きっぷの利用者にとっては、石勝線とは対照的に札幌から旭川経由で北見・網走方面への移動が楽になりそうだ。
◆お得であることには変わりない青春18きっぷ
旭川では3時間半ほど滞在し、名物の旭川ラーメンの人気店をはしご。その後、札幌に戻るべく岩見沢行きの普通列車に乗ったが、この岩見沢は北海道内でも特に積雪量が多く、12月中旬時点で1メートルを超えている。
そのため、運休の不安もあったがこの日はなんとか運行してくれ、ゴールの札幌には夜10時前に到着。
終わってみれば、3日券で回るにはちょうどいいルートだったと思う。3月のダイヤ改正以後は、札幌や新千歳空港から1日で釧路まではいけなくなるが、初日は帯広、2日目は網走などにすれば、そこまで無理せず周遊できるはずだ。
3日券は1万円と5日券の1万2050円に比べると割高だが、それでもまだお得であることには変わりない。まとまった休みが取れない人、5日間も列車に乗りっ放しはキツいという方には、むしろ3日券のほうがちょうどいいかもしれない。
<TEXT/高島昌俊>
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
―[シリーズ・駅]―
この冬の発売分から複数人で同じきっぷの使用ができなくなり、使用期間も連続する5日間(3日間)と大幅に改正されたJR各社が販売する『青春18きっぷ』。
改悪と批判の声が上がっているが、文句を言うのはほかの人たちに任せ、新設された3日券を利用し、実際に乗り鉄の旅をしてみることに。
ちなみに今回選んだルートは、札幌駅から釧路、網走、旭川を巡って再び札幌に戻るルート。時刻表を調べたところ、3日あればグルっと回ることができたからだ。
◆自動改札機で通れるようになり快適ではあるが…
初日は少し早めに札幌駅に到着したので、駅から5分ほどの場所にある赤れんが庁舎の呼び名で有名な旧北海同庁でプチ観光。
駅に戻ると駅員のいる有人改札は、外国人観光客らで行列ができていたが、青春18きっぷは今回から自動改札の利用が可能。過去には改札で待たされ乗り遅れたこともあるため、自動改札機でサクッと通れるのはやはり気持ちがいい。
札幌から新千歳空港行きの快速エアポートに乗り、終点の2つ前の千歳駅で石勝線の普通列車に乗り換え。実は、石勝線の新夕張―新得間は、快速・普通列車が1本も走っていないことから特例で18きっぷでも特急への乗車が認められており、これを利用するためだ。
ただし、乗り継ぎには難があり、千歳から新夕張行きの普通列車は、筆者が乗った11時台と17時台の1日2本だけ。
1日で釧路まで行くためには11時台の列車で向かうしかなかったが、新夕張から新得に向かう次の特急列車(おおぞら7号)が到着するのは15時7分。
新夕張には12時半過ぎに着いてしまったため、待ち時間を過ごせるような場所もないこの駅で2時間半も待つことに。
なお、JR北海道は先日、3月のダイヤ改正でこのおおぞら7号の新夕張駅の通過を発表。これにより札幌方面から青春18きっぷを使い、1日で釧路まで行くのは不可能になる。一連のルール改正とは関係ないが、ダイヤ改正も18きっぷユーザーにとって大きな壁となってしまったようだ。
◆誰もいない極寒の無人駅の足湯でまったり
それでも新夕張―新得間は89.4㎞と距離があり、所要時間も1時間弱。札幌から帯広・釧路方面に行く特急は全席指定席だが、グリーン車以外の空いている席なら自由に座ることができる。もちろん、追加料金は一切取られない。
束の間の特急のありがたみを感じつつ、列車は日高山脈を越えて新得駅へ。駅前には町営の公衆浴場があったため、乗り換え時間を利用してサッと入浴。出発時刻が迫っていたので長湯はできなかったが、さっぱりすることができた。
新得からは釧路まで各駅の普通列車で行くことができたが172.1㎞もあり、乗車時間も4時間19分もの長丁場だ。すでに真っ暗で車窓の景色を見ることもできず、スマホで時間を潰すハメに。
ただ列車に乗っていただけだが身体は疲れていたようで、釧路駅前のホテルにチェックインすると夕食も取らずにそのまま爆睡してしまった。
◆川湯温泉駅で貸切状態の足湯を堪能
2日目は、釧網本線で網走まで行き、そこからさらに北見へ。釧路駅6時38分発の始発の普通列車に乗り、まずは途中駅の川湯温泉駅で下車。ここは駅の隣に足湯小屋があり、そこに立ち寄るためだ。
次の列車までは2時間以上あったので駅周辺を散策し、冷えた身体を足湯で温めるというのを繰り返しているうちに時間が経過。時間が早かったせいか駅には誰もおらず、足湯も貸切状態だった。
だが、もう1つの楽しみにしていた川湯温泉駅構内での洋食レストランでの食事は、この日は休みだったらしく残念ながら叶わず。
釧網本線に同駅のほか、止別駅や北浜駅など無人駅ながら飲食店が入っている駅が複数ある。今回は食べることができなかったが、別の機会にローカル線の駅グルメ巡りをしてみるのもよさそうだ。
◆国鉄時代の廃駅を利用した鉄道記念館でお宝の数々を堪能
川湯温泉駅からは快速しれとこ摩周号で網走へと移動。
そこから向かったのは駅前からバスで20分ほどの場所にある網走市鉄道記念館。国鉄末期の87年3月に全線廃止となった湧網線の卵原内駅(うばらない)の駅舎を記念館にしており、ホームも残されている。
しかも、“キューロク”の愛称で親しまれた国鉄9600形蒸気機関車と旧型客車のオハ47形が展示されていたが、すでに冬ということもあってカバーがかけられていた。
それでも記念館には駅名や列車名などプレート類をはじめ、貴重な備品の数々が展示。正直、そこまで期待していなかったが、予想に反して大満足の結果となった。
◆人口あたりの焼肉店の数が日本一。北見に到着
網走駅に戻った後は、この日の宿を予約している北見へ。なんでも焼き肉の街として有名らしく、人口あたりの店の数は全道一とか。そこで2日目の晩は名物の焼き肉を堪能し、いよいよ最終日の3日目に突入。
ところが、乗車予定だった旭川行きの特別快速きたみは、途中の信号に不具合が生じた影響により54分遅れで出発。でも、冬の北海道は雪の影響で運休になることも多いため、列車が走ってくれるだけありがたい。
余談だが、2025年3月のダイヤ改正以降は、旭川―網走で1日2往復運行している『特急大雪』が廃止。以降は『特別快速大雪』になるとJR北海道から発表された。
そのため、青春18きっぷの利用者にとっては、石勝線とは対照的に札幌から旭川経由で北見・網走方面への移動が楽になりそうだ。
◆お得であることには変わりない青春18きっぷ
旭川では3時間半ほど滞在し、名物の旭川ラーメンの人気店をはしご。その後、札幌に戻るべく岩見沢行きの普通列車に乗ったが、この岩見沢は北海道内でも特に積雪量が多く、12月中旬時点で1メートルを超えている。
そのため、運休の不安もあったがこの日はなんとか運行してくれ、ゴールの札幌には夜10時前に到着。
終わってみれば、3日券で回るにはちょうどいいルートだったと思う。3月のダイヤ改正以後は、札幌や新千歳空港から1日で釧路まではいけなくなるが、初日は帯広、2日目は網走などにすれば、そこまで無理せず周遊できるはずだ。
3日券は1万円と5日券の1万2050円に比べると割高だが、それでもまだお得であることには変わりない。まとまった休みが取れない人、5日間も列車に乗りっ放しはキツいという方には、むしろ3日券のほうがちょうどいいかもしれない。
<TEXT/高島昌俊>
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
―[シリーズ・駅]―