―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第512回をよろしくお願いします。
◆福袋のほとんどは「ハズレ」な根拠
福袋は買うべきではない! 今年も警告させていただきます!
年末年始のこの時期、福袋を買ったという人も多いのではないでしょうか。コロナ禍においては行列など過剰な集客を抑えるため福袋販売を自粛していたお店も多かったのですが……今年は例年と変わらずどのお店も福袋を展開。有名セレクトショップや地方の路面店までさまざまなお店が手がけていました。
当たりが入っているか、はたまたハズレか……ワクワクしながら福袋を買った人も多いでしょうが、結果はどうでしょう? できることなら過去に戻って福袋代を貯金しておくべきだったと後悔しているのでは。
そう、福袋のほとんどは「ハズレ」と言っていいはずです。来年も騙されないように以下に根拠を綴っておきます。
◆①宣伝効果を狙うなら隠すはずがない
「福袋は宣伝効果があるからいいものを入れるはずだ」と考える人もいるでしょうが、そもそも宣伝効果があるというのなら中身を隠す必要がどこにもないのです。
「こんなものが入ってます! スゴイでしょ!?」と中身をいくつか公開しておくほうがよほど宣伝になります。中身を隠してしまえば、そうした拡散効果は見込めず買った人にしか宣伝が届きません。合理的に考えて宣伝効果を狙うなら隠す必要はないはずです。
実際、レディスブランドを中心に「必ずコレが入ってます」「中身はこの4パターンのうちどれかです」など中身を公開しているところも少なくありません。
そのお得さから話題となり行列が生まれ、買い漏れた人は普通にセール品を買って行ってもくれます。中身を隠すというのは普通に考えて、当然売り手に優位な理由だからなのです。
◆必然的に福袋として不良在庫を捌く慣習が必要
そもそもアパレルは需要予測が大変難しいジャンルです。トレンドがあり、人々の気分がコロコロ変わること、さらに気候天候を読みきれないことから需要が往々にして激変します。
また、服は生産するためにおよそ3か月~半年程度の期間が必要なため、秋冬服の需要を先読みしておく必要があります。
半年前に暖冬になるか、大雪になるかなど読み切れるわけもありません。結果として、在庫ロスが生まれやすく、必然的に福袋として不良在庫を捌く慣習が必要となるのです。
皆が欲しいものなら当然、売れてなくなってるはず。然して福袋の中身はその年に予測が外れた残り物となるのです。
◆②福袋を買う客層と普段の顧客層はまるで違う
「でも福袋に粗悪なものを入れたら評判が悪くなるじゃないか」「粗悪な福袋を買った人は2度とお店に来なくなるんじゃないの?」と思い、福袋に良品を入れるだろうと先読みする人もいるでしょう。しかしながら、残念ですがこれも当てはまりません。
福袋を買うお客様は普段来ているお客様とまるで違う層になっています。これは販売をやっている人なら誰でもわかること。「正月のお客様」と「普段のお客様」は明確に違います。
◆粗悪品を入れて、二度と来なくても痛くも痒くもない
そもそも普段から買ってくれているお客様であれば、福袋は絶対に買いません。「自分が買ったものと被る可能性がある」から避けるわけです。
なので福袋を買うということは「普段そのショップであまりお買い物をしない人」ということになります。なのでハッキリ言ってしまえば、粗悪品を入れてその人が二度と来なくなったとしてもお店としては痛くも痒くもないのです。
◆③そもそも売れる良品なら福袋に入れるはずがない
仮に福袋の中に普通に売れるほどの良品が入ってるとしたら……なぜそれを普通に売らないのでしょうか。
4点5点入って5000円などの叩き売り状態の福袋に良品を入れる理由がどこにも思い浮かびません。良品なら見せて普通にならべて売れるわけでしょう? そっちのほうがよほど利益が取れるではありませんか。
わざわざ福袋に良品を入れて本来取れるべき利益を犠牲にする意味がない。何度も言いますが「隠す」ということは都合が悪いからなのです。
◆「大ハズレ」が「ハズレ」になったくらい
ただし、最近では個人発信の力が強くなりました。
あまりにもひどい福袋はSNSで総叩きに遭うこともありますから、それを危惧して近年では大ハズレは少なくなったようにも思えます。と言っても「大ハズレ」が「ハズレ」になったくらいのものですが……。
また、上はあくまで一般論。個人の感想として「アタリだった」と思うこともあるでしょう。その意味でくじ引きなものであるというのも間違いではありません。
しかしながら、以上で挙げた3つの理由から考えるに「わざわざリスクをとって買うほどのものではない」と思います。ぜひ来年は騙されないように……。
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)
―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけの傍ら、「男のおしゃれ」についても執筆しています。連載第512回をよろしくお願いします。
◆福袋のほとんどは「ハズレ」な根拠
福袋は買うべきではない! 今年も警告させていただきます!
年末年始のこの時期、福袋を買ったという人も多いのではないでしょうか。コロナ禍においては行列など過剰な集客を抑えるため福袋販売を自粛していたお店も多かったのですが……今年は例年と変わらずどのお店も福袋を展開。有名セレクトショップや地方の路面店までさまざまなお店が手がけていました。
当たりが入っているか、はたまたハズレか……ワクワクしながら福袋を買った人も多いでしょうが、結果はどうでしょう? できることなら過去に戻って福袋代を貯金しておくべきだったと後悔しているのでは。
そう、福袋のほとんどは「ハズレ」と言っていいはずです。来年も騙されないように以下に根拠を綴っておきます。
◆①宣伝効果を狙うなら隠すはずがない
「福袋は宣伝効果があるからいいものを入れるはずだ」と考える人もいるでしょうが、そもそも宣伝効果があるというのなら中身を隠す必要がどこにもないのです。
「こんなものが入ってます! スゴイでしょ!?」と中身をいくつか公開しておくほうがよほど宣伝になります。中身を隠してしまえば、そうした拡散効果は見込めず買った人にしか宣伝が届きません。合理的に考えて宣伝効果を狙うなら隠す必要はないはずです。
実際、レディスブランドを中心に「必ずコレが入ってます」「中身はこの4パターンのうちどれかです」など中身を公開しているところも少なくありません。
そのお得さから話題となり行列が生まれ、買い漏れた人は普通にセール品を買って行ってもくれます。中身を隠すというのは普通に考えて、当然売り手に優位な理由だからなのです。
◆必然的に福袋として不良在庫を捌く慣習が必要
そもそもアパレルは需要予測が大変難しいジャンルです。トレンドがあり、人々の気分がコロコロ変わること、さらに気候天候を読みきれないことから需要が往々にして激変します。
また、服は生産するためにおよそ3か月~半年程度の期間が必要なため、秋冬服の需要を先読みしておく必要があります。
半年前に暖冬になるか、大雪になるかなど読み切れるわけもありません。結果として、在庫ロスが生まれやすく、必然的に福袋として不良在庫を捌く慣習が必要となるのです。
皆が欲しいものなら当然、売れてなくなってるはず。然して福袋の中身はその年に予測が外れた残り物となるのです。
◆②福袋を買う客層と普段の顧客層はまるで違う
「でも福袋に粗悪なものを入れたら評判が悪くなるじゃないか」「粗悪な福袋を買った人は2度とお店に来なくなるんじゃないの?」と思い、福袋に良品を入れるだろうと先読みする人もいるでしょう。しかしながら、残念ですがこれも当てはまりません。
福袋を買うお客様は普段来ているお客様とまるで違う層になっています。これは販売をやっている人なら誰でもわかること。「正月のお客様」と「普段のお客様」は明確に違います。
◆粗悪品を入れて、二度と来なくても痛くも痒くもない
そもそも普段から買ってくれているお客様であれば、福袋は絶対に買いません。「自分が買ったものと被る可能性がある」から避けるわけです。
なので福袋を買うということは「普段そのショップであまりお買い物をしない人」ということになります。なのでハッキリ言ってしまえば、粗悪品を入れてその人が二度と来なくなったとしてもお店としては痛くも痒くもないのです。
◆③そもそも売れる良品なら福袋に入れるはずがない
仮に福袋の中に普通に売れるほどの良品が入ってるとしたら……なぜそれを普通に売らないのでしょうか。
4点5点入って5000円などの叩き売り状態の福袋に良品を入れる理由がどこにも思い浮かびません。良品なら見せて普通にならべて売れるわけでしょう? そっちのほうがよほど利益が取れるではありませんか。
わざわざ福袋に良品を入れて本来取れるべき利益を犠牲にする意味がない。何度も言いますが「隠す」ということは都合が悪いからなのです。
◆「大ハズレ」が「ハズレ」になったくらい
ただし、最近では個人発信の力が強くなりました。
あまりにもひどい福袋はSNSで総叩きに遭うこともありますから、それを危惧して近年では大ハズレは少なくなったようにも思えます。と言っても「大ハズレ」が「ハズレ」になったくらいのものですが……。
また、上はあくまで一般論。個人の感想として「アタリだった」と思うこともあるでしょう。その意味でくじ引きなものであるというのも間違いではありません。
しかしながら、以上で挙げた3つの理由から考えるに「わざわざリスクをとって買うほどのものではない」と思います。ぜひ来年は騙されないように……。
【MB】
ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)
―[メンズファッションバイヤーMB]―