日本食において欠かすことのできない食材はいくつもあるが、マグロもそのうちのひとつではないか。回転寿司から高級寿司店、居酒屋の刺身盛り合わせまで、幅広い場面で私たちの舌を楽しませてくれる。
ところでマグロといっても、ホンマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガなど、さまざまな種類がある。友人や家族と外食をする際、出てきた刺身を見て「これはホンマグロのトロだね」など、見た目から判別できると、食事の時間がより楽しいものになるだろう。
そこで、本記事ではプロに聞いた「マグロの見分け方」を紹介したい。
◆よく見るマグロ4種、わかる?
話を聞いたのは、羽田市場の創業者・社長の野本良平氏。野本氏は外食産業などで経験を積んだ後、2014年に羽田市場を創業。鮮魚の独自流通システムを構築し、朝に漁獲された鮮魚をその日のうちに空輸する「超速鮮魚」というビジネスモデルで注目を集めている。「ととけん」(日本さかな検定)の最難関である1級を持ち、切身からでも高確率で魚種を当てる“魚界のレジェンド”である。
最高級のクロマグロは、マグロの代表格的存在である。食材としては「ホンマグロ」とも称され、このホンマグロとは本当のマグロという意味であり、さまざまな種類があるマグロのなかで最高級品であることを強調する名である。クロマグロは味も脂の乗りも良く、まさに「マグロの中のマグロ」だ。
野本氏曰く、「深い赤色で、身質は緻密です。マグロの仲間のなかでもっとも大きく、尾叉長(尾の切れ目までの長さ)が3メートルになることもある巨体を持ち、運動量が多いため、筋肉に乳酸が蓄積しやすく、酸味を感じることがあります。濃厚な味わいが特徴です」とのことだ。旨味と酸味と甘みの三重奏は、ホンマグロならではである。
身に白い脂肪の線が走りマーブル模様になった「大トロ」の部位はとろけるような美味である。室温でも脂がにじみ出し、表面テカテカと輝く。
ちなみに、クロマグロと並ぶ高級マグロに、ミナミマグロ(インドマグロ)がある。濃い赤色で、ねっとりとした食感が特徴だ。超高級寿司店でしかお目にかかれないが、静岡の焼津港まで行けばミナミマグロを食べられる専門店がある。
◆「絵に描いたようなマグロ」っぽいメバチ
一般に「マグロ」といえば、メバチを指すことが多い。鮮やかな赤色の身の間に、白い筋が整然と入り、刺身にすると「マグロ然」とした姿である。
「メバチマグロは、比較的あっさりとしたクセのない味わいで、多くの人に好まれます。寿司や刺身、さらには加工品としても広く利用され、価格も安定しており、手頃な価格で楽しめるのが魅力です」(野本良平氏、以下同じ)
野本氏は、一番好きな魚は何かと問われたら、メバチマグロと答えるという。
「『三陸ひがしもの』と呼ばれるメバチマグロは最高です。9月から12月にかけて三陸東沖で漁獲され、塩竈市魚市場に水揚げされるブランドマグロです」
◆3~5月のキハダは絶対食べたい一級品
肌(表面)やヒレが黄色いことからこの名がついた。身は薄いピンク色で、見た目通りにクセのない味わいである。脂肪分が少ない肉質から、「ライトミート(Light Meat)」と呼ばれる。
ここでシーチキンの話をしよう。シーチキンは、はごろもフーズが展開しているツナ缶詰の登録商標である。材料はさまざまで、「シーチキンL」はこのキハダを主原料とする。あっさりとした味わいと食べやすさから、多くの人に人気があり、サラダでもパスタでも多彩な料理に使える。ちなみに、シーチキンマイルドはカツオ、シーチキンファンシーはビンナガが主原料である。
「キハダというと安いマグロの代名詞みたいになっていますが、3月〜5月に水揚げされる生の『春キハダ』は、しっかりと脂が乗っておいしく、食通も唸る一級品です」
◆淡いピンク色で「トロ」っぽいビンチョウ
ビンナガはビンチョウとも呼ばれる。ビンナガは、長い胸ビレが鬢(びん、もみあげ)に似ていることからこの名がついた。マグロにしては身の色が白っぽく、クリーム色に近い。
「ビントロとはビンチョウマグロのトロを略した言葉で、身の色が白いからビントロなのではありません。三陸東沖や西オーストラリアのフリーマントル沖など、水温の低い海域で獲れるビンチョウは脂ののりが良く、特に腹の部位をビントロと呼びます」
=====
マグロは大きな魚で、個体や部位によって見た目や味はかなり異なる。プロでも見分けるのが難しい場合はあるが、ここで紹介したポイントのいくつかを知っておくと、おおよその見当をつけられるはずだ。
<取材・文/木村悦子>
【木村悦子】
フリーの編集者・ライター。出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」を創業。実用書やガイドブックの企画・編集を行う傍らで、Webライターとしても活動。飲食・日本文化・占い・農業など、あらゆることに興味があるが、生き物が大好きすぎて本も書く。『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』、『ラッコBOOK』を執筆。
ところでマグロといっても、ホンマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガなど、さまざまな種類がある。友人や家族と外食をする際、出てきた刺身を見て「これはホンマグロのトロだね」など、見た目から判別できると、食事の時間がより楽しいものになるだろう。
そこで、本記事ではプロに聞いた「マグロの見分け方」を紹介したい。
◆よく見るマグロ4種、わかる?
話を聞いたのは、羽田市場の創業者・社長の野本良平氏。野本氏は外食産業などで経験を積んだ後、2014年に羽田市場を創業。鮮魚の独自流通システムを構築し、朝に漁獲された鮮魚をその日のうちに空輸する「超速鮮魚」というビジネスモデルで注目を集めている。「ととけん」(日本さかな検定)の最難関である1級を持ち、切身からでも高確率で魚種を当てる“魚界のレジェンド”である。
最高級のクロマグロは、マグロの代表格的存在である。食材としては「ホンマグロ」とも称され、このホンマグロとは本当のマグロという意味であり、さまざまな種類があるマグロのなかで最高級品であることを強調する名である。クロマグロは味も脂の乗りも良く、まさに「マグロの中のマグロ」だ。
野本氏曰く、「深い赤色で、身質は緻密です。マグロの仲間のなかでもっとも大きく、尾叉長(尾の切れ目までの長さ)が3メートルになることもある巨体を持ち、運動量が多いため、筋肉に乳酸が蓄積しやすく、酸味を感じることがあります。濃厚な味わいが特徴です」とのことだ。旨味と酸味と甘みの三重奏は、ホンマグロならではである。
身に白い脂肪の線が走りマーブル模様になった「大トロ」の部位はとろけるような美味である。室温でも脂がにじみ出し、表面テカテカと輝く。
ちなみに、クロマグロと並ぶ高級マグロに、ミナミマグロ(インドマグロ)がある。濃い赤色で、ねっとりとした食感が特徴だ。超高級寿司店でしかお目にかかれないが、静岡の焼津港まで行けばミナミマグロを食べられる専門店がある。
◆「絵に描いたようなマグロ」っぽいメバチ
一般に「マグロ」といえば、メバチを指すことが多い。鮮やかな赤色の身の間に、白い筋が整然と入り、刺身にすると「マグロ然」とした姿である。
「メバチマグロは、比較的あっさりとしたクセのない味わいで、多くの人に好まれます。寿司や刺身、さらには加工品としても広く利用され、価格も安定しており、手頃な価格で楽しめるのが魅力です」(野本良平氏、以下同じ)
野本氏は、一番好きな魚は何かと問われたら、メバチマグロと答えるという。
「『三陸ひがしもの』と呼ばれるメバチマグロは最高です。9月から12月にかけて三陸東沖で漁獲され、塩竈市魚市場に水揚げされるブランドマグロです」
◆3~5月のキハダは絶対食べたい一級品
肌(表面)やヒレが黄色いことからこの名がついた。身は薄いピンク色で、見た目通りにクセのない味わいである。脂肪分が少ない肉質から、「ライトミート(Light Meat)」と呼ばれる。
ここでシーチキンの話をしよう。シーチキンは、はごろもフーズが展開しているツナ缶詰の登録商標である。材料はさまざまで、「シーチキンL」はこのキハダを主原料とする。あっさりとした味わいと食べやすさから、多くの人に人気があり、サラダでもパスタでも多彩な料理に使える。ちなみに、シーチキンマイルドはカツオ、シーチキンファンシーはビンナガが主原料である。
「キハダというと安いマグロの代名詞みたいになっていますが、3月〜5月に水揚げされる生の『春キハダ』は、しっかりと脂が乗っておいしく、食通も唸る一級品です」
◆淡いピンク色で「トロ」っぽいビンチョウ
ビンナガはビンチョウとも呼ばれる。ビンナガは、長い胸ビレが鬢(びん、もみあげ)に似ていることからこの名がついた。マグロにしては身の色が白っぽく、クリーム色に近い。
「ビントロとはビンチョウマグロのトロを略した言葉で、身の色が白いからビントロなのではありません。三陸東沖や西オーストラリアのフリーマントル沖など、水温の低い海域で獲れるビンチョウは脂ののりが良く、特に腹の部位をビントロと呼びます」
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マグロは大きな魚で、個体や部位によって見た目や味はかなり異なる。プロでも見分けるのが難しい場合はあるが、ここで紹介したポイントのいくつかを知っておくと、おおよその見当をつけられるはずだ。
<取材・文/木村悦子>
【木村悦子】
フリーの編集者・ライター。出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」を創業。実用書やガイドブックの企画・編集を行う傍らで、Webライターとしても活動。飲食・日本文化・占い・農業など、あらゆることに興味があるが、生き物が大好きすぎて本も書く。『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』、『ラッコBOOK』を執筆。