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特殊清掃員が明かす「冬のお風呂で突然死」の壮絶現場。“ヒートショックのリスクが高い家”には共通点が

日刊SPA! 2025年1月12日 15時54分

 冬場に突然死する原因としてヒートショックがある。ヒートショックとは暖かいところから寒いところ、寒いところから熱いところに移動することによって、急激な血圧変化が起こり脳卒中や心筋梗塞を引き起こす疾患である。
 2024年12月に浴室で突然死した中山美穂さん。警察は入浴中の「不慮の事故」と発表しているが、SNSではヒートショックと関連付けて、注意喚起する人も多かった。冬場になるとヒートショックでの孤独死現場が増えてくるが、主に浴室、浴槽の中での死者が多いという。
 
 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんにヒートショックの孤独死現場について話を聞いた。

◆若い女性が浴槽で亡くなることも

 ヒートショックが原因の事故による孤独死の現場は年間30件ほどある。冬場だけの事故なのにかなり多い。ヒートショック死の現場は基本的に決まっている。

「まれに脱衣所でヒートショック以外の原因で亡くなるかたもいらっしゃいますが、今までヒートショックで亡くなったと言われている現場の特徴として基本的には浴槽の中での溺死か、浴槽に近いところでの心臓発作などで亡くなっていることが多いですね。

 中山美穂さんの死因がヒートショックかはわかりませんが、若い女性でもヒートショックで亡くなることはありますので注意してください」

◆“ヒートショックのリスクが高い家”に共通している特徴

 ヒートショックになりやすい家には特徴があるという。

「ヒートショックになる原因として、暖房の効いた暖かい部屋から寒い脱衣所に移動し、さらに寒い浴室にいき、いきなり熱いお湯に入るといった行動、または逆の動きをすることが考えられます。要は血圧の急激な乱高下です。なので、急激な気温の変化が起きそうな古い家屋の現場が多いです。そういう建物は、脱衣所や風呂場の風通しがよくてとても寒いです」

 一軒家ならば、浴室が離れにあり、トタンを1枚隔てて外側のような造りだと、かなり室温が冷えるため、ヒートショックの危険性があるという。

「浴室の換気のためにずっと窓を開けざるを得ないので、ヒートショックが起こりやすい環境になってしまうというのもあります。ユニットバスの場合は浴室ごと保温されているので、ヒートショックで死に至る確率は下がるのですが……。実際、事故が起きているのはユニットバスの現場ではなく、ほぼ従来型の浴槽ですね」

 さらに、ヒートショックと、それ以外の死因の現場だと、特殊清掃に駆けつけた際、大きな違いがあるという。

「脳卒中や心筋梗塞などの発作の場合、歩き回ってトイレで吐血していたり、玄関先で倒れていたりするのですが、ヒートショックだと突然の発作で動き回ることができないので、部屋まで移動するといったことはありません。また、死因と関係なく、脱衣所や風呂場での死亡者数は冬場になると一気に増える傾向があります」

◆警察に湯船の栓を抜かれてしまうと清掃が困難に

 特殊清掃の現場は60歳以上の高齢者が多いが、40~50代で亡くなる方もたまにいるという。さらに、湯船に浸かっている最中に発作等で死亡してしまい、遺体が溶けてドロドロになってしまっている現場もあるそうだ。

「湯船に浸かりっぱなしの遺体は、体の脂とか体液が滲み出て水と混じり合って大変なことになっているんです。警察が来て、そのドロドロの遺体を引き上げる時に、湯船の栓を抜いてしまうことが多いのですが、溶けた遺体のカケラが排水溝の中に入っていって詰まってしまい、清掃の範囲が広がる場合があるんです。本当は栓を絶対に抜かないで欲しいのですが、基本的には抜かれています」

 湯船に水が入ったままだと遺体を持ち上げるのが難しいというのは想像できるが……。

「理解のある警察官が担当だと湯船の水が残っていることがあります。そういうときはかなりありがたいです。風呂場での特殊清掃の手順としては、まず窓を全部閉めてニオイの広がりを防ぐ。そのあと吐血などで変色してしまったところを漂白。水が残っていたら、網で固形物をすべて拾って凝固剤を使い、汚染された水を固めてバイオハザードボックスに入れて捨てるといった作業になります」

◆100万円近く追加費用がかかるケースも

 しかし、水を抜かれて排水溝までドロドロの遺体が流れていってしまうと、作業が困難になる。

「排水溝の詰まりは強力な薬剤で溶かせば何とかなりますが、ニオイがなかなかとれないです。また、水が抜かれて浴槽にこびりついた遺体の清掃はかなり困難です。完全に乾燥していると風呂場を新品になるよう全取り換えしなくてはならないので、100万円近く追加費用がかかります。

 手順としては浴槽を外して外に出して、新しい浴槽を運び入れます。この作業工程になるとかなり大変なので、完全に清掃するのは無理だと判断した場合は、先に全取り替えする提案をさせていただくか、取り替え作業自体を他の業者に委託します」

 さらに浴槽のつくりがFRPというプラスティック素材だとニオイを吸い込みやすく、さらに換気扇が24時間回っている浴室はかなりやっかいだという。

「換気扇が回りっぱなしだと、ダクトの中にニオイが吸われて染みついてしまい、風呂場が完全にキレイになっても換気扇を回すと、染みついた匂いが風呂場に戻ってくるケースが多いです。誰しも自分がヒートショックで死ぬとは思わないので、注意喚起できるようなことではないのですが」

◆浴室でのヒートショックを防ぐために

 冬になるとどうしても増えてくるヒートショックによる死亡だが予防法はあるのか。

「とにかく、脱衣所にハロゲンヒーターなど暖房器具を置いて、普段過ごしている部屋と同じくらいの温度に保つことが大事です。浴室もできれば暖房機能をつけたほうがいいのですが、難しければ脱衣所の暖房器具で浴室も同時に温めてください。あとは、事前に暖かいお湯を浴室全体にまき、室温を上げておくのもよいと思います。防水加工のスマホケースをつけて浴室に持ち込むなど、体調が悪くなった時にすぐ救急車を呼べるような状況を作っておくのもいいですね」

 湯船に入る時も、手足などにかけ湯をして、熱いお湯に慣れてから湯船につかるなど、急激な血圧変化が起きないような工夫をしたほうがよいという。

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

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