最近、ニュースで頻繁に取り上げられている車の逆走。SNSやYouTubeでも多くの映像がアップされているが、逆走してしまった車両の運転手の大半は高齢者だと言われている。
会社員の津山雅之さん(仮名・35歳)も勤務先の工場から車で帰宅途中、一方通行の道路で逆走車に遭遇した経験を持つという。
◆逆走しているからバックしてほしいと伝えたが…
「今から5年ほど前のことです。住宅街にある道路が自宅への近道だったため、帰宅時はいつもそのルートを通っていました。一方通行で本来は対向車は来ないのですが、その日は白い軽トラがこっちに近づいてくるのが見えました」
軽トラックはバックすることも一時停止することもなく、そのまま前進。途中には十字路があり、曲がって退避してくれると思っていたが、そのまま直進してきたのだ。
ちなみに細い道だったので一方通行でなかったとしても車がすれ違うのは困難。軽トラックはその道路の法定速度(30キロ)以下のノロノロ運転だったが、このままだと正面衝突は避けられない。そこで自身が先に車をいったん停車させる。
「結局、5メートルほどの距離まで来たところで軽トラも停まりました。接近してきた時点で相手のドライバーが80代の年配男性だとわかったため、逆走していることに気づいていなかったのだろうとこの時点でなんとなく察しました。
そこで相手の方に逆走していることを伝えに行こうと思ったんです」
だが、軽トラックの運転席側のドア越しに話しかけても一瞬チラ見しただけ。まったく目を合わせようともしなかった。
さすがにこの態度にイラっとしたが、高齢者なので耳が遠い可能性もある。だから、決して感情的にならないように心がけ、あくまで冷静に話すように努めたそうだ。
◆後続車のドライバーが怒鳴ったことでようやく理解した年配男性
「繰り返し逆走していること、一方通行なのでバックしてほしい旨を伝え、2回目に言った際には大きめの声で話しました。まあ、相手はうんともすんとも言わなかったので不安でしたが、案の定、自分の車に戻っても軽トラックがバックする気配はありませんでした」
平静を装うとしたが苛立ちは隠せず、クラクションを鳴らしてしまう。それでも住宅街の通りであったので「プッ、プッ!!」と軽く鳴らした程度だったが、それでも反応はなし。ここまで来るとイライラを通り越し、どうすればいいのか途方に暮れ始めていたとか。
この時点で彼の車を先頭に数台が立ち往生するプチ渋滞が発生。だが、ここで後続車から作業服姿の30代半ばくらいの男性が降り、津山さんの車の脇を通り過ぎて軽トラックに近づくと、「早くバックしろよ! ここは一方通行でお前は逆走して道塞いでるんだよ!」と怒鳴ったのだ。
相手ドライバーの高齢男性が返事をしたのかは確認できなかったが、作業員男性はこの後も大声で文句を言い続けるなど完全にブチ切れモード。
すると、ここでようやく状況を理解したのか軽トラックがバックを始め、十字路まで戻ると交差していた側道に入り、ようやく通行可能な状態になった。
◆作業服姿の男性に感謝
「その様子を見て、男性も自分の車に戻ろうとしたため、運転席側の窓からすれ違いざまに『ありがとうございます。助かりました!』とお礼を述べました。でも、そんな風に感謝されるとは思ってなかったんでしょうね。
ついさっきまで怒鳴り声を上げていた人物とは別人のような照れくさそうな表情で会釈していました」
当時は道路の逆走が現在のようにメディアで取り上げられることはなかったが、「最近はニュースでよく逆走する車の映像が流れるので、そのたびにこの出来事を思い出す」と振り返る。
◆数十年後の免許返納について真剣に考えるきっかけに
「自分は間違っていないとの思い込みなのかパニックを起こしているのかはわかりませんが、私のときはまともに取り合ってくれなかった。だから、実体験として話が通じない怖さはありましたね。
私の地元は車がないと不便な地域ですが、それまでは他人事だった老後の免許返納について真剣に考えるきっかけとなった出来事でした。年を取ってああいう風にほかのドライバーに迷惑はかけたくないですから」
道路の逆走は大変危険で、正面衝突になることから命にかかわる大事故になることも。
今回は車幅の狭い道路だったこともあるが、相手が一時停止して事故に至らなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
会社員の津山雅之さん(仮名・35歳)も勤務先の工場から車で帰宅途中、一方通行の道路で逆走車に遭遇した経験を持つという。
◆逆走しているからバックしてほしいと伝えたが…
「今から5年ほど前のことです。住宅街にある道路が自宅への近道だったため、帰宅時はいつもそのルートを通っていました。一方通行で本来は対向車は来ないのですが、その日は白い軽トラがこっちに近づいてくるのが見えました」
軽トラックはバックすることも一時停止することもなく、そのまま前進。途中には十字路があり、曲がって退避してくれると思っていたが、そのまま直進してきたのだ。
ちなみに細い道だったので一方通行でなかったとしても車がすれ違うのは困難。軽トラックはその道路の法定速度(30キロ)以下のノロノロ運転だったが、このままだと正面衝突は避けられない。そこで自身が先に車をいったん停車させる。
「結局、5メートルほどの距離まで来たところで軽トラも停まりました。接近してきた時点で相手のドライバーが80代の年配男性だとわかったため、逆走していることに気づいていなかったのだろうとこの時点でなんとなく察しました。
そこで相手の方に逆走していることを伝えに行こうと思ったんです」
だが、軽トラックの運転席側のドア越しに話しかけても一瞬チラ見しただけ。まったく目を合わせようともしなかった。
さすがにこの態度にイラっとしたが、高齢者なので耳が遠い可能性もある。だから、決して感情的にならないように心がけ、あくまで冷静に話すように努めたそうだ。
◆後続車のドライバーが怒鳴ったことでようやく理解した年配男性
「繰り返し逆走していること、一方通行なのでバックしてほしい旨を伝え、2回目に言った際には大きめの声で話しました。まあ、相手はうんともすんとも言わなかったので不安でしたが、案の定、自分の車に戻っても軽トラックがバックする気配はありませんでした」
平静を装うとしたが苛立ちは隠せず、クラクションを鳴らしてしまう。それでも住宅街の通りであったので「プッ、プッ!!」と軽く鳴らした程度だったが、それでも反応はなし。ここまで来るとイライラを通り越し、どうすればいいのか途方に暮れ始めていたとか。
この時点で彼の車を先頭に数台が立ち往生するプチ渋滞が発生。だが、ここで後続車から作業服姿の30代半ばくらいの男性が降り、津山さんの車の脇を通り過ぎて軽トラックに近づくと、「早くバックしろよ! ここは一方通行でお前は逆走して道塞いでるんだよ!」と怒鳴ったのだ。
相手ドライバーの高齢男性が返事をしたのかは確認できなかったが、作業員男性はこの後も大声で文句を言い続けるなど完全にブチ切れモード。
すると、ここでようやく状況を理解したのか軽トラックがバックを始め、十字路まで戻ると交差していた側道に入り、ようやく通行可能な状態になった。
◆作業服姿の男性に感謝
「その様子を見て、男性も自分の車に戻ろうとしたため、運転席側の窓からすれ違いざまに『ありがとうございます。助かりました!』とお礼を述べました。でも、そんな風に感謝されるとは思ってなかったんでしょうね。
ついさっきまで怒鳴り声を上げていた人物とは別人のような照れくさそうな表情で会釈していました」
当時は道路の逆走が現在のようにメディアで取り上げられることはなかったが、「最近はニュースでよく逆走する車の映像が流れるので、そのたびにこの出来事を思い出す」と振り返る。
◆数十年後の免許返納について真剣に考えるきっかけに
「自分は間違っていないとの思い込みなのかパニックを起こしているのかはわかりませんが、私のときはまともに取り合ってくれなかった。だから、実体験として話が通じない怖さはありましたね。
私の地元は車がないと不便な地域ですが、それまでは他人事だった老後の免許返納について真剣に考えるきっかけとなった出来事でした。年を取ってああいう風にほかのドライバーに迷惑はかけたくないですから」
道路の逆走は大変危険で、正面衝突になることから命にかかわる大事故になることも。
今回は車幅の狭い道路だったこともあるが、相手が一時停止して事故に至らなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。