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スニーカーのインソールを変えるだけで「靴の機能は劇的にアップ」する。“初心者が買うべき”一足とは

日刊SPA! 2025年1月15日 15時51分

こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
昨今のスニーカーブームから波及して、インソールが注目を集めています。インソールとは、その名のとおり靴の中に入れる中敷きを指しますが、従来のものが主にサイズ調整に使われていたのに対して、現在は主に機能調整に用いられます。ひと昔前は、単に靴をきつくするためのモノでしたが、役割が靴と身体の性能を100%により近く発揮させるものに変わったのです。マウスピースはかつてボクシングのみで使われていましたが、歯を食いしばって力を発揮できるようにと、バスケや野球、サッカー、卓球などのスポーツにおいてもあたりまえのように使われるようになりました。かみ合わせがハマると、体の動きの正確性とパワーの出力が段違いに向上するからです。インソールはいわば足のマウスピースと言っていいでしょう。

スポーツ分野から誕生した高機能インソールは、薄くて軽く、頑丈で使いやすいため、メガスポーツショップやニューバランスなどの店舗でも販売員からインソールの組み合わせの提案を受けることが日常になってきました。靴、とくにスニーカーには、はじめからインソールが入っているのに、新たにお金を出してまで取りかえるのは、シューズの性能がアップするからです。

◆靴とインソールの黄金バランスで「なんかちがう」も解消できる

筆者はインソールマニアです。数えきれないほどのインソールを試し、自分で改造することもしばしば。靴とインソールの関係は、焼き鳥にビール、カレーに福神漬けのようなもので、なくてもいいけど、あると相乗効果で何倍もおいしくなるような存在です。

例えば、しっくりこない靴があったときに、ショップにある高機能インソールを組み合わせてみてください。意外と一発で決まります。なんだか靴が合わない原因は、カカト幅や、ふまず長が合わないことがほとんど。靴の試着は、つま先は意識が向きやすいのですが、カカトの幅や重心の位置は無視されます。Eとか3Eなどウィズやサイズは最低限の情報で、重心のかかるシューズの後ろ半分をないがしろにすると絶対にフィットしません。数千円のインソールがひとつあるだけで、靴のフィット感や歩き方、疲れ方にまで影響が及ぶのです。

◆インソール選び3つのポイント

高機能インソールには種類がたくさんありますが、スニーカーにはスポーツを研究したド定番メーカーが正解。フランスのシダス、日本のバネインソール、アメリカのスーパーフィートが安定して良品を販売しています。どのジャンルでも、プロのアスリートはこれらの専用インソールに差し替えて使用しています。自分用のインソールで靴との一体感が増し、クッション、スピード、細かいコントールの効きが向上し、靴の機能をフルに発揮できるようになります。加えて、ケガの予防にもつながります。NBAのファンサービスでよく試合後のシューズを観客にプレゼントする風景がありますが、よく見るとインソールだけは抜いています。シューズは大量生産品なのでスポンサーから与えられますが、インソールはシーズンを通して使うものなので、靴よりはるかに重要です。費用と時間、技術が必要なので、いわば財産なのです。とはいえインソールは製造のハードルが靴よりも低いので、良心的な製品から、いわゆるぼったくりに近いものまで乱立しているのが現状です。

筆者が考える、よいインソールとは以下の条件を満たしたものになります。

①硬いこと。インソールが足のマウスピースとして役立つには、指で押してへこむようなヤワヤワなインソールでは意味がありません。スニーカーにもとから入っているようなインソールや、3000円以下の製品の大半がこれに該当します。インソールをひっくり返した時に、カカトから全体の半分くらいまでは、硬いパーツで覆われていることが絶対条件です。

②軽いこと。かつては「よいインソール=コルク製」というのが常識でした。しかし、コルクは加工がしやすいものの、圧縮しなければ強度が出ないため、インソールにすると重くなります。しかも劣化が早く、数年でボロボロと崩れ落ちるのも難点。今ではサーモプラスチックやカーボンなどの、より軽くて強く、しなやかな素材が主流となっています。

③手に入りやすいこと。わざわざ専門店に足を運ばなくても、ゼビオなどのメガスポーツ店に行くと手に入るということも重要です。オンライン販売のみのインソールには眉唾なものが多く、実物を手に取って、サンプルを足に入れて、その場で買える。その場で買って帰れることが実は重要なのです。

◆インソール初心者におすすめな一品

それらの3条件を満たした、インソール初心者に個人的におすすめしているのがが、シダス社の「コンフォート3D」です。初心者には最高のモデルのひとつで、裏面は圧縮された硬くて軽いEVA素材で、メガスポーツ店でもまずおすすめされるインソールです。ヒールのえぐられ方が半端ではありません。このへこみでカカト全体のブレが減り、体までブレなくなっていきます。

5000円を投資する価値は十二分にあります。また、たいへん持ちがよく、筆者も気がつけば5年以上愛用していたものの、ダメージは皆無です。メーカーは靴の寿命を目途としていますが、コスパは最高だと思います。

私は典型的な扁平足ですが、違和感がまったくありません。アーチの高さは人によって、あるいは左右で必ず差はありますが、平均的なアーチの高さで万人受けするモデルです。インソール自体の厚みも4ミリちょっとと、通常のスニーカーに合わせた厚みなので差し替えてもきつさやゆるさの差はほとんどありません。

この、オリジナルと同じ厚みというのも重要です。インソールを使うと靴がきつくなると思い込んでいる人が世の中の大半ですが、誤解です。もちろん上に重ねればきつくなりますが、インソールは差し替えることを前提につくっているので、既存のものと必ず差し替えて使ってください。しかしなかにはインソールが外れることを知らず、上に重ねてしまう方がいます。世の99%のスニーカーのインソールが外れます。ナイキは接着剤でくっついていますが、力を入れれば外れます。

◆催事販売は要注意。失敗しないための価格と選び方

初心者の方は10万円を超えてくるオーダーメイドのインソールには手を出さないようにしてください。店舗を構えず、催事やスポーツジム、ゴルフ場で2週間限定などで足を測定し、数か月後にインソールが届くようなメーカーはかなり危険だと思います。なかには健康をうたい文句に20万円以上を請求されたというケースを見てきました。スーパーアスリートならまだしも、歩き方や疲れを改善するなら、高くても3万円が相場です。まずはメガスポーツ店の数千円の既製品から試してみてください。それで十分だと断言します。

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』

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