写真や動画の画質が良くなれば保存サイズもそれに見合ったサイズになり、保存領域も大きく圧迫してきます。スマホやPCのストレージサイズは大きくなり、クラウド保存サービスなども数多く登場してきました。サブスクでクラウド保存もいいけど、大事なデータは手元で保存したいという人も多くいることでしょう。
昨今ではパソコンを介さずとも直接スマートフォン等から記録媒体(USBメモリやHDD、SSDなど)になりました。それに伴い増えてきたのが大容量のSSDメディアです。一般的に外付けSSDなどとも呼ばれ、古くはHDDが使われており、昔からデータのバックアップには欠かせない存在となっています。
USBメモリなどと違い、持ち運ぶよりは職場や家庭でといった使い方が多いこの外付けSSDですが、最近では多数の偽物が市場に出回ってきています。
◆「1万円前後で購入可能な30TBタイプのSSD」は、ほぼ詐欺製品
2025年1月現在、秋葉原でSSDを購入するとPCに内蔵するタイプは1TBが約7000円、外付けタイプは1TBが約9000円の価格で購入可能です。
対面販売ゆえの人件費などを考えるとこれでも十分安く感じてしまうのですが、一方で国内最大手のネット通販を見てみると1TB辺りではPCパーツメーカーとして聞いたことのあるメーカー製は秋葉原の店頭価格とほぼ変わりがありません。
しかし、ノンブランド・30TBだけ、驚きの価格となっており、わずか7000円ほどで購入できてしまいます。これは、結論から言ってしまうと「1万円前後で購入可能な30TBタイプのSSD」は、ほぼ詐欺製品となっています。
SSDも大容量化のニーズに答えるべく開発が進められ、今では100TBといったサイズも夢ではない世界なのですが、一般で購入しようものならそれこそ新車が1台購入できるほどの価格です。
価格比較サイトに登録されている正規の外付けSSDでは16TBで130万円。これだけで、ネット通販の30TBがいかに怪しい製品だということが判るかと思います。
◆詐欺と断定して良いレベルの計測結果が
前置きはこのくらいにして実際に今回入手した30TB外付けSSDを見ていきましょう。
まず見た目ですが、本体はサンディスクの外付けタイプによく似ていますが、30TBのこの製品には大手メーカー製と違い、ロゴや容量などの記載は一切ありません。
付属品はUSB3.xの偽装を施したUSB1.1あるいは2.0のケーブルと変換コネクタのみ。付属ケーブルを用いてWindows11のPCと接続すると表記上は30.5TBとなっています。
さて実際のデータはというと、転送速度を計るソフトウェア「CrystalDiskMark」を使った測定では、1GBのデータで読み込み速度が「12.27MB/s」、書き込み速度は「17.19MB/s」との測定結果が出ました。
これは2005年頃に高速伝送と言われたレベルのUSBメモリと同等の速度です。メーカーが記載した通りの記憶容量かどうかを計測できるソフトウェア「H2testW」で測定すると、容量のほうは、「57.9GB」と計測されました。
販売サイトの記載では、ストレージ容量「30TB」、読み込み速度「1500MB/s」、書き込み速度「1200MB/s」となっていますが、過剰表現というよりも詐欺と断定して良いレベルの計測結果が出ました。
◆何もかもすべてが嘘だらけの製品
では実際に内部はどうなっているか分解してみてみます。商品ページでは耐衝撃や防水、防塵などと書かれていますが、ごく普通のプラスチックでハメ合わせされているだけで、ネジやパッキンといったものは一切ありません。USBタイプCコネクタも防水性のものではなく、ごく普通の基板用コネクタが搭載されています。
続いて、SSDの心臓部となる記憶領域には、マイクロSDカードが封入されています。このマイクロSDカードにも記載は一切なく、正体不明の怪しいマイクロSDカードが使われています。
特殊なライトを当ててみても印字を消したような痕跡はなく、明確に痕跡を残さないようになっているようです。基板上に唯一搭載されているチップは、「Chipsbank CBM2199S」。
正しい刻印であるのであれば、USB2.0対応のNANDフラッシュコントローラ。最初から判っていたことだが、「30TB」も「USB3.x」も何もかもすべてが嘘だらけの製品となっているようです……。
◆悪評が多くなるとアカウントを切り替えるから…
ちなみにこの手の製品は、販売数が増え、悪評が多くなるとアカウントを切り替えて新規販売を行うわけです。そして、都度サクラレビュー等で高評価を増やしていきます。また、使えないと判り返品しても、あの手この手で返金を渋っているようです。
自分が大事にしているデータをこういった怪しい商品に保存して失ってしまわないようにしましょう。「安いから」、「レビューが高評価だから」などの理由で安易に飛びつくのは危険です。一生物のデータを保存するのだからこそ、下調べをして信頼のあるメーカー製の製品でデータを保存したいものです。
最後にもう一度、2025年1月現在、一般人が購入して使える外付けSSDは最大容量8TB辺り、1TB約1万円ほどです。ここから大きく外れるような製品はまず間違いなく偽物と思っても間違いありません。
<TEXT/板倉正道>
【板倉正道】
テクニカルライター。三才ブックスのマニア誌『ラジオライフ』にてガジェットや分解記事を執筆。買ったら使用前に分解するのがライフワーク
昨今ではパソコンを介さずとも直接スマートフォン等から記録媒体(USBメモリやHDD、SSDなど)になりました。それに伴い増えてきたのが大容量のSSDメディアです。一般的に外付けSSDなどとも呼ばれ、古くはHDDが使われており、昔からデータのバックアップには欠かせない存在となっています。
USBメモリなどと違い、持ち運ぶよりは職場や家庭でといった使い方が多いこの外付けSSDですが、最近では多数の偽物が市場に出回ってきています。
◆「1万円前後で購入可能な30TBタイプのSSD」は、ほぼ詐欺製品
2025年1月現在、秋葉原でSSDを購入するとPCに内蔵するタイプは1TBが約7000円、外付けタイプは1TBが約9000円の価格で購入可能です。
対面販売ゆえの人件費などを考えるとこれでも十分安く感じてしまうのですが、一方で国内最大手のネット通販を見てみると1TB辺りではPCパーツメーカーとして聞いたことのあるメーカー製は秋葉原の店頭価格とほぼ変わりがありません。
しかし、ノンブランド・30TBだけ、驚きの価格となっており、わずか7000円ほどで購入できてしまいます。これは、結論から言ってしまうと「1万円前後で購入可能な30TBタイプのSSD」は、ほぼ詐欺製品となっています。
SSDも大容量化のニーズに答えるべく開発が進められ、今では100TBといったサイズも夢ではない世界なのですが、一般で購入しようものならそれこそ新車が1台購入できるほどの価格です。
価格比較サイトに登録されている正規の外付けSSDでは16TBで130万円。これだけで、ネット通販の30TBがいかに怪しい製品だということが判るかと思います。
◆詐欺と断定して良いレベルの計測結果が
前置きはこのくらいにして実際に今回入手した30TB外付けSSDを見ていきましょう。
まず見た目ですが、本体はサンディスクの外付けタイプによく似ていますが、30TBのこの製品には大手メーカー製と違い、ロゴや容量などの記載は一切ありません。
付属品はUSB3.xの偽装を施したUSB1.1あるいは2.0のケーブルと変換コネクタのみ。付属ケーブルを用いてWindows11のPCと接続すると表記上は30.5TBとなっています。
さて実際のデータはというと、転送速度を計るソフトウェア「CrystalDiskMark」を使った測定では、1GBのデータで読み込み速度が「12.27MB/s」、書き込み速度は「17.19MB/s」との測定結果が出ました。
これは2005年頃に高速伝送と言われたレベルのUSBメモリと同等の速度です。メーカーが記載した通りの記憶容量かどうかを計測できるソフトウェア「H2testW」で測定すると、容量のほうは、「57.9GB」と計測されました。
販売サイトの記載では、ストレージ容量「30TB」、読み込み速度「1500MB/s」、書き込み速度「1200MB/s」となっていますが、過剰表現というよりも詐欺と断定して良いレベルの計測結果が出ました。
◆何もかもすべてが嘘だらけの製品
では実際に内部はどうなっているか分解してみてみます。商品ページでは耐衝撃や防水、防塵などと書かれていますが、ごく普通のプラスチックでハメ合わせされているだけで、ネジやパッキンといったものは一切ありません。USBタイプCコネクタも防水性のものではなく、ごく普通の基板用コネクタが搭載されています。
続いて、SSDの心臓部となる記憶領域には、マイクロSDカードが封入されています。このマイクロSDカードにも記載は一切なく、正体不明の怪しいマイクロSDカードが使われています。
特殊なライトを当ててみても印字を消したような痕跡はなく、明確に痕跡を残さないようになっているようです。基板上に唯一搭載されているチップは、「Chipsbank CBM2199S」。
正しい刻印であるのであれば、USB2.0対応のNANDフラッシュコントローラ。最初から判っていたことだが、「30TB」も「USB3.x」も何もかもすべてが嘘だらけの製品となっているようです……。
◆悪評が多くなるとアカウントを切り替えるから…
ちなみにこの手の製品は、販売数が増え、悪評が多くなるとアカウントを切り替えて新規販売を行うわけです。そして、都度サクラレビュー等で高評価を増やしていきます。また、使えないと判り返品しても、あの手この手で返金を渋っているようです。
自分が大事にしているデータをこういった怪しい商品に保存して失ってしまわないようにしましょう。「安いから」、「レビューが高評価だから」などの理由で安易に飛びつくのは危険です。一生物のデータを保存するのだからこそ、下調べをして信頼のあるメーカー製の製品でデータを保存したいものです。
最後にもう一度、2025年1月現在、一般人が購入して使える外付けSSDは最大容量8TB辺り、1TB約1万円ほどです。ここから大きく外れるような製品はまず間違いなく偽物と思っても間違いありません。
<TEXT/板倉正道>
【板倉正道】
テクニカルライター。三才ブックスのマニア誌『ラジオライフ』にてガジェットや分解記事を執筆。買ったら使用前に分解するのがライフワーク