年々増加傾向にある孤独死。一人暮らしの高齢者にとっては他人事ではない問題だが、特殊清掃員によれば、どうやら孤独死の現場には特徴があるらしい。
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、孤独死しがちな生活習慣と、孤独死を避けるための3つのコツについて話を聞いた。
◆孤独死を避けるコツ:①部屋を汚くしない
年間7万人弱が孤独死をしていると推計される日本では、今後も孤独死の数は増えていくのではないかと言われている。鈴木さんによれば、孤独死を避けるために大事なことの1つ目は、部屋を汚くしないことだという。
「まず、孤独死現場の特徴として部屋が汚いということが挙げられます。何部屋もある家に住んでいる方は普段使っていない部屋から汚くしていく傾向があります。缶のゴミが散らかっていたり、途中まで飲んだペットボトルが散乱していたり、水回りがとにかく汚い場合が多いです。部屋が汚いと害虫も寄ってくるし、菌が外から入ってきて、体調を崩すリスクが高まります。なので、とにかく部屋を綺麗に保つことがいちばん重要です」
◆「今日はゴミを捨てたから掃除終わり!」くらいの気持ちで大丈夫
部屋を綺麗に保つにはたった一つのことだけを意識すればいいと言う。
「1週間に一度、1か所だけ掃除することを心がけてください。今日は洗面所、今日は風呂場、今日は玄関といった感じで、いっぺんに全て綺麗にしようと思わないことです。基本的に月に一回大掃除とか絶対に無理なので、今日はゴミを捨てたから、また来週は違う場所を掃除しようといった感じで、気楽に続けることが大事です。限りなく低いハードルをクリアし続けていくイメージですね」
ついついゴミを溜め込んでしまったり、買った日用品を無造作に床に放置してしまったりすると、ホコリがどんどん溜まっていってしまう。
「このままだと部屋がゴミ屋敷になってしまうとわかっていても、やめられないのが人間なので、自分を少しだけ律してあげるのが重要だと思います。『今日はゴミを捨てたから掃除終わり!』くらいの気持ちで大丈夫です。部屋を綺麗にするミッションを自分で作ることを心がけるようにしてください」
実は鈴木氏ももともと部屋の掃除が苦手だった。しかし、週1回の自宅掃除だけで、いまでは部屋を綺麗に保てていると言う。
「一人で暮らしなので洗濯物も、つい家の端っこに積みがちでした。でも週1回の掃除のタイミングで、アパレルで働く人がTシャツを簡単にたたむYouTube動画を見て、真似してたたんでみたりするんです。やり始めるとどんどん楽しくなってきて、動画の通りにはかどるんです。そこからTシャツたたみにはまりましたね。気分が乗ってきたら、さらに掃除を続けるとかもやっています。それを僕はボーナスタイムと呼んでいます」
このやり方で、鈴木氏の部屋はそれなりに清潔に保たれている。
◆孤独死を避けるコツ:②部屋の湿気に注意する
続いて2つ目に大切なのは、湿気に注意することだ。
「孤独死現場を清掃するとき、部屋の湿気がすごいことが多いんです。どこもカビ臭くてどんよりとした空気が漂っています。最近、うちの会社ではカビの除去技術の推進を進めていますが、日本は地理的、気候的にも湿度が高いのでカビとの共生は避けられません」
しばらく洗わずに放置してしまった服や靴。掃除を怠った風呂場やキッチンの下の収納など、目には見えないがカビは至る所に生えている場合が多い。
「洋服や食べ物に入ったり、気づかず吸い込んでいることも多いと思います。カビっていろいろ種類があるんですけど、吸い込むと体に悪いんですよね。アレルギー反応がでたり、呼吸器疾患がでたり免疫疾患などの死に至る病につながるリスクがあるんです。なのでカビ対策としては、日当たりが悪い家なら窓を開けて換気をしたり、除湿剤を置いたり、エアコンでドライをしたりしてください。定期的なエアコン掃除も大事です」
◆自分でも簡単にできるエアコン掃除
業者に頼らなくても自分でエアコンの掃除は可能だそうだ。湿気を予防する掃除の工程があるという。
「エアコンには外に異物を吐き出すためのドレンホースと呼ばれる細いホースがついています。そこが詰まっていると冷房をつけた時にエアコンが結露しやすいので、年に1回くらいは市販のドレンホースクリーナーを使って、ホース内のゴミを抜いてあげると部屋に湿気がたまりにくいです」
とにかく湿気をなくすといった作業が、孤独死を防ぐことにつながるという。
◆孤独死を避けるコツ:③ベッドの上だけで生活しない
続いて3つ目はベッドの上だけで生活をしないことだという。
「テレビのリモコンもエアコンのリモコンもゲームのコントローラーも全部手に届くところ、食事もベッドの上という人は危ないです。確かに、最も効率がいい暮らしを考えると、どうしてもそうなってしまいますが、ちゃんとテーブルで食卓を作る、リビングのソファーでテレビを見る、ベッドは寝るだけなどと生活を分けたほうが体には良いんですよね。一日中家にこもってしまうこともあると思いますが、立ち上がって動くようにしてください」
◆「俺と同じだ」心当たりがある人は要注意
鈴木氏もワンルームの部屋に住んでいた頃は、ベッドの上だけで完結する生活を送っていたようだ。
「六畳の家に住んでいたのに、いつでも寝転がれるようにダブルベッドを買って生活していたんです。風呂とトイレの時しか立ち上がらないみたいな。料理もまったくしなくなって、コンビニ弁当ばかり食べていました。でも、多くの孤独死現場を見ているうちに『俺の部屋と同じだ……』と気づいて改善するよう努力しました」
狭いワンルームの部屋に住んでいても、おすすめの暮らし方があるという。
「ワンルームに住んでいる方は、ベッドではなく布団にしたほうがいいと思います。朝起きたらたたんで収納する癖をつけるのが大事です。きちんとテーブルの上で食べるとか。個人的にはミニマリストな暮らしがいいかと思います。狭い部屋でも邪魔にならない家具とか、なるべく狭い部屋を広く使う意識を持つことが大切だと思います。すると部屋が散らかりにくくなる。あとは、とにかく自分を律することができるようになると、孤独死のリスクは減るのかもしれません」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、孤独死しがちな生活習慣と、孤独死を避けるための3つのコツについて話を聞いた。
◆孤独死を避けるコツ:①部屋を汚くしない
年間7万人弱が孤独死をしていると推計される日本では、今後も孤独死の数は増えていくのではないかと言われている。鈴木さんによれば、孤独死を避けるために大事なことの1つ目は、部屋を汚くしないことだという。
「まず、孤独死現場の特徴として部屋が汚いということが挙げられます。何部屋もある家に住んでいる方は普段使っていない部屋から汚くしていく傾向があります。缶のゴミが散らかっていたり、途中まで飲んだペットボトルが散乱していたり、水回りがとにかく汚い場合が多いです。部屋が汚いと害虫も寄ってくるし、菌が外から入ってきて、体調を崩すリスクが高まります。なので、とにかく部屋を綺麗に保つことがいちばん重要です」
◆「今日はゴミを捨てたから掃除終わり!」くらいの気持ちで大丈夫
部屋を綺麗に保つにはたった一つのことだけを意識すればいいと言う。
「1週間に一度、1か所だけ掃除することを心がけてください。今日は洗面所、今日は風呂場、今日は玄関といった感じで、いっぺんに全て綺麗にしようと思わないことです。基本的に月に一回大掃除とか絶対に無理なので、今日はゴミを捨てたから、また来週は違う場所を掃除しようといった感じで、気楽に続けることが大事です。限りなく低いハードルをクリアし続けていくイメージですね」
ついついゴミを溜め込んでしまったり、買った日用品を無造作に床に放置してしまったりすると、ホコリがどんどん溜まっていってしまう。
「このままだと部屋がゴミ屋敷になってしまうとわかっていても、やめられないのが人間なので、自分を少しだけ律してあげるのが重要だと思います。『今日はゴミを捨てたから掃除終わり!』くらいの気持ちで大丈夫です。部屋を綺麗にするミッションを自分で作ることを心がけるようにしてください」
実は鈴木氏ももともと部屋の掃除が苦手だった。しかし、週1回の自宅掃除だけで、いまでは部屋を綺麗に保てていると言う。
「一人で暮らしなので洗濯物も、つい家の端っこに積みがちでした。でも週1回の掃除のタイミングで、アパレルで働く人がTシャツを簡単にたたむYouTube動画を見て、真似してたたんでみたりするんです。やり始めるとどんどん楽しくなってきて、動画の通りにはかどるんです。そこからTシャツたたみにはまりましたね。気分が乗ってきたら、さらに掃除を続けるとかもやっています。それを僕はボーナスタイムと呼んでいます」
このやり方で、鈴木氏の部屋はそれなりに清潔に保たれている。
◆孤独死を避けるコツ:②部屋の湿気に注意する
続いて2つ目に大切なのは、湿気に注意することだ。
「孤独死現場を清掃するとき、部屋の湿気がすごいことが多いんです。どこもカビ臭くてどんよりとした空気が漂っています。最近、うちの会社ではカビの除去技術の推進を進めていますが、日本は地理的、気候的にも湿度が高いのでカビとの共生は避けられません」
しばらく洗わずに放置してしまった服や靴。掃除を怠った風呂場やキッチンの下の収納など、目には見えないがカビは至る所に生えている場合が多い。
「洋服や食べ物に入ったり、気づかず吸い込んでいることも多いと思います。カビっていろいろ種類があるんですけど、吸い込むと体に悪いんですよね。アレルギー反応がでたり、呼吸器疾患がでたり免疫疾患などの死に至る病につながるリスクがあるんです。なのでカビ対策としては、日当たりが悪い家なら窓を開けて換気をしたり、除湿剤を置いたり、エアコンでドライをしたりしてください。定期的なエアコン掃除も大事です」
◆自分でも簡単にできるエアコン掃除
業者に頼らなくても自分でエアコンの掃除は可能だそうだ。湿気を予防する掃除の工程があるという。
「エアコンには外に異物を吐き出すためのドレンホースと呼ばれる細いホースがついています。そこが詰まっていると冷房をつけた時にエアコンが結露しやすいので、年に1回くらいは市販のドレンホースクリーナーを使って、ホース内のゴミを抜いてあげると部屋に湿気がたまりにくいです」
とにかく湿気をなくすといった作業が、孤独死を防ぐことにつながるという。
◆孤独死を避けるコツ:③ベッドの上だけで生活しない
続いて3つ目はベッドの上だけで生活をしないことだという。
「テレビのリモコンもエアコンのリモコンもゲームのコントローラーも全部手に届くところ、食事もベッドの上という人は危ないです。確かに、最も効率がいい暮らしを考えると、どうしてもそうなってしまいますが、ちゃんとテーブルで食卓を作る、リビングのソファーでテレビを見る、ベッドは寝るだけなどと生活を分けたほうが体には良いんですよね。一日中家にこもってしまうこともあると思いますが、立ち上がって動くようにしてください」
◆「俺と同じだ」心当たりがある人は要注意
鈴木氏もワンルームの部屋に住んでいた頃は、ベッドの上だけで完結する生活を送っていたようだ。
「六畳の家に住んでいたのに、いつでも寝転がれるようにダブルベッドを買って生活していたんです。風呂とトイレの時しか立ち上がらないみたいな。料理もまったくしなくなって、コンビニ弁当ばかり食べていました。でも、多くの孤独死現場を見ているうちに『俺の部屋と同じだ……』と気づいて改善するよう努力しました」
狭いワンルームの部屋に住んでいても、おすすめの暮らし方があるという。
「ワンルームに住んでいる方は、ベッドではなく布団にしたほうがいいと思います。朝起きたらたたんで収納する癖をつけるのが大事です。きちんとテーブルの上で食べるとか。個人的にはミニマリストな暮らしがいいかと思います。狭い部屋でも邪魔にならない家具とか、なるべく狭い部屋を広く使う意識を持つことが大切だと思います。すると部屋が散らかりにくくなる。あとは、とにかく自分を律することができるようになると、孤独死のリスクは減るのかもしれません」
<取材・文/山崎尚哉>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦