Infoseek 楽天

業界人が語る「見たい/見たくない」冬ドラマ6選。「演技が見ていられない」主演女優も

日刊SPA! 2025年1月20日 8時53分

 昨年のドラマ業界でもっとも高い視聴率をマークしたのは、木村拓哉主演の『Believe -君にかける橋-』(テレビ朝日系)の最終話で13.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/平均世帯視聴率)。
 それに続いて、日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)、人気シリーズ『相棒』(テレビ朝日系)が続いたが、どれも世間的に注目を浴びるドラマにはならなかった。

 その一方で「流行語大賞」に選ばれた『不適切にもほどがある!』(TBS系)、『地面師たち』『極悪女王』(いずれもNetflix)などはSNSを中心に大きな反響を生んだ。

 これは視聴率以上に、ファンの熱狂度が問われる時代を迎えたとも言えるだろう。

 そんななか、1月からスタートしている冬ドラマの中で業界関係者たちが注目している、逆に見たくないと感じた作品は何なのか。忖度のない意見を集めてみた。

◆バカリズムが描く日常系SFドラマ『ホットスポット』

 一人目はキー局でドラマ制作に関わり、現在はフリーで活動する50代の男性プロデューサー・A氏に見たい作品を聞いた。

「一番期待しているのは、人気芸人・バカリズムさんが脚本を手掛ける『ホットスポット』(日本テレビ系、日曜午後10時30分~)ですね。

 昨年放送された『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)が業界の各賞を総なめし、脚本家としてのハードルが上がっている状況で、またしても見たことのない面白いドラマを作ってきたなと、バカリズムさんの才能に驚かされました。

 ビジネスホテルに勤めるシングルマザーの主人公が宇宙人と出会うところから始まるSFドラマですが、壮大な展開になることはなく、あくまで日常の人間模様をコミカルに描いている。

 でも、それが逆に不気味でさまざまな考察をしてしまう作りになっているのが実にお見事。自然体なセリフも小気味よいので、飽きることなく視聴できる。

 数年前だともっとコントっぽいシナリオになっていましたが、連続ドラマらしい惹きや伏線も散りばめられており、最終回まで見たくなるドラマになっていますね」

 近年、お笑い芸人がドラマ脚本を手掛けることが増えてきているが、バカリズムは芸人の肩書きを抜きにしても脚本家のトップに上り詰めたといえそうだ。

◆川口春奈の演技力が心配なリーガルドラマ『アンサンブル』

 その一方で、A氏が「見たくない」と斬り捨てる冬ドラマも挙げてくれた。

「個人的に見たくないし、数字を見込めないと感じているのは『アンサンブル』(日本テレビ系、土曜午後10時~)ですね。

 川口春奈さんが演じるコスパやタイパを気にする現実主義の弁護士と、SixTONES・松村北斗さんが演じる愛を信じる理想主義の弁護士が、裁判を通じて対立しながらも恋愛関係になっていくリーガルラブストーリーですが、法廷シーンや恋愛関係の構図がどれもありがちな設定になってしまっているところが非常にもったいない印象。

 その中でも川口春奈さんの演技力が心配です。ピュアでまっすぐな等身大の女性を演じさせれば同世代でもピカイチだと思いますが、童顔のルックスやセリフの強弱がうまくない彼女がクセのある役どころに説得力を持たせられるかは疑問が残る。

 松村北斗さんのような高い演技力を持つ俳優が相手役になることでより露骨になる気がします」

 王道のラブストーリーやCMでは輝かしい実績を残す川口春奈だが、同作が彼女の女優人生を左右するドラマになるかもしれない。

◆攻めまくるNHKドラマの『東京サラダボウル』

 次に、各局や配信ドラマのキャスティングに関わる制作会社の40代女性プロデューサーにも率直な意見をもらった。

「序盤話から面白く、今後も見たいと思っているのは『東京サラダボウル』(NHK、火曜午後10時~)です。

 奈緒さん演じるド派手な緑色の髪がトレードマークの熱血国際捜査官と、松田龍平さん演じるクールでワケありの通訳が織りなすバディドラマで、国際犯罪をテーマにしつつ、日本で暮らす外国人居住者の実態や本音が赤裸々に描かれており、毎話見ごたえを感じています。

 奈緒さんが演じるキャラクターも非常に魅力的ですし、『サンクチュアリ -聖域-』(Netflix)を手掛けた金沢知樹さんのメリハリのある脚本も素晴らしい。地上波では描き切れないディープな社会問題にフォーカスできているのもNHKならでは。考えさせられる作品ですね」

 近年、業界人だけでなくドラマ好きからも評価の高いNHKドラマが、この冬も大きな盛り上がりを見せそうだ。

◆佐々木希の演技が見ていられない『地獄の果てまで連れていく』

「脱落してしまったのは『地獄の果てまで連れていく』(TBS系、火曜午後11時56分~)ですね。

 同作は、佐々木希さん演じる主人公が整形手術をして家族を殺した女性に復讐するためにベビーシッターとして潜り込むといったストーリー。

 深夜ドラマとしては面白い設定ですが、佐々木希さんの棒読みに近いセリフ回しや表情の抑揚のなさが際立っており、感情移入が全然できない。

 復讐される側を演じる渋谷凪咲さんのサイコパスっぷりや脇役陣の演技が達者なだけにキャスティングミスと言わざるを得ない」

 ヒットジャンルとなった復讐ドラマだが、主役クラスの演技力が伴わなければ大コケになる可能性が高そうだ。

◆疑似家族をテーマにした『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』

 また、ラブストーリーやヒューマンものなどを数多く手掛ける40代の女性脚本家・C氏にも見たいドラマ、見たくないドラマを聞いた。

「注目しているのは、元SMAP・香取慎吾さんが主演を務める『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系、木曜午後10時~)です。

 香取慎吾さんは、選挙で当選するためのイメージアップを狙ってシングルファーザーの義弟とその子どもと共同生活を始めるダメ男役ですが、以前のハツラツとしたイメージを残しつつ、人間味のあるキャラクターを巧みに演じており、ハマり役だなと思いました。

 政池洋佑さんや蛭田直美さんといった注目株の脚本家がチーム編成で書いていることもあって、現代の家族像や社会問題も丁寧に描いている。非常に満足度の高いドラマですね」

 同作をきっかけに、香取慎吾が新境地を開いてドラマや映画で復活を果たしてくれそうだ。

◆考察要素を詰め込みすぎの『私の知らない私』

 そんなC氏が期待外れだと思った冬ドラマはどの作品なのか?

「ずば抜けた演技力と存在感のある小野花梨さん主演の『私の知らない私』(読売テレビ・日本テレビ系、木曜午後11時59分~)は現状では期待外れですね。

 1年間の記憶を失っていた主人公が“殺人疑惑”をかけられてしまい、その真実に迫っていくというラブサスペンスですが、全体的にトーンが暗いうえに、考察要素を詰め込みたいために肝心の人間模様が希薄に思えました。

 今後、記憶を辿るうちにキャラクターが深掘りされていけばよいのですが、謎ばかりを残して進んでいくと視聴者は脱落してくるかな……。とりあえずは見なくてもよい一作になっています」

 テレビドラマ関係者が現時点で見たい、見たくないと語る冬ドラマを紹介してきたが、評価されている作品はもちろん、酷評されている作品もまだまだこれから面白くなる可能性は十分。できれば、すべてチェックしてみてほしい。

ライター/木田トウセイ

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

この記事の関連ニュース