30歳を迎えて、公私ともに飛躍の年になりそうな俳優・西野七瀬。そんな彼女が、現在公開中の映画『君の忘れ方』で新境地に挑んでいる。“死別による喪失と再生”を描いた本作で、主人公の昴が愛した亡き恋人・美紀を演じる。この“幻影”という演技には苦労も多かったという。乃木坂46を卒業してから約6年。「30代になって過去の自分に助けられている実感が増えてきた」と語る彼女の今に迫った。
◆収録後、思わず流れてしまった涙
――今作では幻影という初めての役どころでしたが、演じるうえでの難しさはありましたか?
西野七瀬(以下、西野):昴だけに見える幻なのでゆっくりした動作で、心情が見えないように瞬きを我慢して、視線がぶれないようにも意識しました。ただ作中で、美紀の音声だけが流れるシーンがあるんですが、それを収録した直後にずっとこらえていた涙が溢れてしまいました。
――監督も驚かれていました。
西野:車の中で録ったので映像はまったく関係ないんですけど、「もう美紀がこの世にはいないんだな」と悲しい気持ちになってしまって。あのシーンだけは美紀の思いがそこにあって、昴に寄り添っていたら素敵だなと思いました。
◆落ち込んだときは周りの人に話して、体の外に出す
――また今作では、深い悲しみをどう乗り越えていくかという「グリーフケア」もテーマとして描かれています。西野さんは落ち込んだり、傷ついたりしたときにはどんな心のケアをしているのでしょうか。
西野:抱えきれなくなったら、周りの人に話して体の外に出すことも有効なのかなと思っています。滅多に相談はしないんですけど、「これは1人だと昇華できなそうだから誰かに聞いてほしい」というときはあるので、そういうときは話しますね。ただ、あまり暗くならないようには意識します。なるべく笑いながら話せるように。
――それはなぜ?
西野:私のネガティブを相手に移すのは申し訳ないので(笑)。暗い話題もなるべくポジティブに変換してから、相手に伝えるように心掛けています。
――そういうマインドになるきっかけが?
西野:もともと私がネガティブな性格だったので、グループで活動しているときに周りに気を遣わせてしまっているなと気づいたときがあって。そこから、マイナスな発言や空気感はやめようと。
――集団行動の中での切り替わったんですね。
西野:はい。気づけたのでよかったなと思います。
◆乃木坂46時代の空気感がいまだに夢に出てくる
――死生観という視点では、昨年3月に西野さん自身も結婚されたことで何か変化はありましたか?
西野:そうですね。私ひとりではなく、ふたりで生きていくという気持ちに切り替わりました。今回の作品に入る前に、自分が昴の立場だったらどう受け止めるのかなとか、乗り越えられるのか、ということは考えましたね。
――自分なりの答えは出ましたか。
西野:出ないですよね。決めたとしても、その通りにはきっとならないし、想像するだけでツラいことです。以前には浮かばなかった感情も出てきたと思います。
――西野さんが乃木坂46を卒業されてから約6年。あらためて、アイドルの頃とはどこに違いを感じていますか。
西野:やっぱり、自分の時間ができたことです。忙しくさせていただいていたので、自分の家と仕事場の往復が続くことが多くて。忙しい生活に体が慣れてしまっていたので、卒業後しばらくは「まだ働けます!」という気持ちで、慣れるまで時間がかかりました(笑)。いまだに当時の空気感が夢に出てくるぐらい、アイドル時代はワーカホリックだったと思います。
――どんな夢ですか。
西野:ライブをしている夢とかですね。懐かしい気持ちになりますし、自分の人生のなかでも大きな経験だったんだなって。
◆過去の自分に助けてもらっている
――卒業後に新しく始めたことで、「これは面白い」と感じたことはありました?
西野:グループにいた頃は食にこだわりがなかったので、「焼き肉一択!」みたいなわかりやすい感じだったんですよ。最近はそれ以外のジャンルの飲食店のおいしさにも気づいて食の幅が広がりました。とはいえ、基本はインドアで、ゲーム好きなのは今も変わらないですけど(笑)
――そして、10代から憧れていたという30代に突入しましたね。
西野:明確にやりたいことが出てきたわけではないですけど、10代、20代と頑張ってきた時間があるから、30歳になってこれだけ選択肢を持たせてもらえてるなって。過去の自分に助けてもらっている部分をすごく感じるようになりましたね。
――最後に今年の抱負を教えてください。
西野:新たな出会いに毎回ワクワクしているし、知識が増えていく感覚も楽しめているなと感じてます。お仕事で「上手くできなかった」と思うことはあるんですけど、何年か前に自分が悩んでいたことと、今は違うところで悩めるようになってきているので、少しずつ先に進めているのかなって。これからも作品を通して、人としても成長していきたいです。
――過去の自分が助けてくれるということが実感できると強いですよね。
西野:そのときは全然わからないんですけどね(笑)
【西野七瀬】
1994年、大阪府生まれ。‘11年にアイドルグループ・乃木坂46の1期生としてデビュー。‘18年にグループを卒業してからは、俳優としてドラマや映画など多くの話題作に出演。第45回日本アカデミー賞で優秀助演女優賞・新人俳優賞を受賞(『孤狼の血 LEVEL2』)し、第44回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞(『恋は光』)。今年3月には、高橋文哉とのダブル主演を務める映画『少年と犬』の公開も控えている
<撮影/唐木貴央 取材・文/吉岡 俊 ヘアメイク/徳永舞(ビュートリアム) スタイリング/鬼束香奈子 Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会2024>
◆収録後、思わず流れてしまった涙
――今作では幻影という初めての役どころでしたが、演じるうえでの難しさはありましたか?
西野七瀬(以下、西野):昴だけに見える幻なのでゆっくりした動作で、心情が見えないように瞬きを我慢して、視線がぶれないようにも意識しました。ただ作中で、美紀の音声だけが流れるシーンがあるんですが、それを収録した直後にずっとこらえていた涙が溢れてしまいました。
――監督も驚かれていました。
西野:車の中で録ったので映像はまったく関係ないんですけど、「もう美紀がこの世にはいないんだな」と悲しい気持ちになってしまって。あのシーンだけは美紀の思いがそこにあって、昴に寄り添っていたら素敵だなと思いました。
◆落ち込んだときは周りの人に話して、体の外に出す
――また今作では、深い悲しみをどう乗り越えていくかという「グリーフケア」もテーマとして描かれています。西野さんは落ち込んだり、傷ついたりしたときにはどんな心のケアをしているのでしょうか。
西野:抱えきれなくなったら、周りの人に話して体の外に出すことも有効なのかなと思っています。滅多に相談はしないんですけど、「これは1人だと昇華できなそうだから誰かに聞いてほしい」というときはあるので、そういうときは話しますね。ただ、あまり暗くならないようには意識します。なるべく笑いながら話せるように。
――それはなぜ?
西野:私のネガティブを相手に移すのは申し訳ないので(笑)。暗い話題もなるべくポジティブに変換してから、相手に伝えるように心掛けています。
――そういうマインドになるきっかけが?
西野:もともと私がネガティブな性格だったので、グループで活動しているときに周りに気を遣わせてしまっているなと気づいたときがあって。そこから、マイナスな発言や空気感はやめようと。
――集団行動の中での切り替わったんですね。
西野:はい。気づけたのでよかったなと思います。
◆乃木坂46時代の空気感がいまだに夢に出てくる
――死生観という視点では、昨年3月に西野さん自身も結婚されたことで何か変化はありましたか?
西野:そうですね。私ひとりではなく、ふたりで生きていくという気持ちに切り替わりました。今回の作品に入る前に、自分が昴の立場だったらどう受け止めるのかなとか、乗り越えられるのか、ということは考えましたね。
――自分なりの答えは出ましたか。
西野:出ないですよね。決めたとしても、その通りにはきっとならないし、想像するだけでツラいことです。以前には浮かばなかった感情も出てきたと思います。
――西野さんが乃木坂46を卒業されてから約6年。あらためて、アイドルの頃とはどこに違いを感じていますか。
西野:やっぱり、自分の時間ができたことです。忙しくさせていただいていたので、自分の家と仕事場の往復が続くことが多くて。忙しい生活に体が慣れてしまっていたので、卒業後しばらくは「まだ働けます!」という気持ちで、慣れるまで時間がかかりました(笑)。いまだに当時の空気感が夢に出てくるぐらい、アイドル時代はワーカホリックだったと思います。
――どんな夢ですか。
西野:ライブをしている夢とかですね。懐かしい気持ちになりますし、自分の人生のなかでも大きな経験だったんだなって。
◆過去の自分に助けてもらっている
――卒業後に新しく始めたことで、「これは面白い」と感じたことはありました?
西野:グループにいた頃は食にこだわりがなかったので、「焼き肉一択!」みたいなわかりやすい感じだったんですよ。最近はそれ以外のジャンルの飲食店のおいしさにも気づいて食の幅が広がりました。とはいえ、基本はインドアで、ゲーム好きなのは今も変わらないですけど(笑)
――そして、10代から憧れていたという30代に突入しましたね。
西野:明確にやりたいことが出てきたわけではないですけど、10代、20代と頑張ってきた時間があるから、30歳になってこれだけ選択肢を持たせてもらえてるなって。過去の自分に助けてもらっている部分をすごく感じるようになりましたね。
――最後に今年の抱負を教えてください。
西野:新たな出会いに毎回ワクワクしているし、知識が増えていく感覚も楽しめているなと感じてます。お仕事で「上手くできなかった」と思うことはあるんですけど、何年か前に自分が悩んでいたことと、今は違うところで悩めるようになってきているので、少しずつ先に進めているのかなって。これからも作品を通して、人としても成長していきたいです。
――過去の自分が助けてくれるということが実感できると強いですよね。
西野:そのときは全然わからないんですけどね(笑)
【西野七瀬】
1994年、大阪府生まれ。‘11年にアイドルグループ・乃木坂46の1期生としてデビュー。‘18年にグループを卒業してからは、俳優としてドラマや映画など多くの話題作に出演。第45回日本アカデミー賞で優秀助演女優賞・新人俳優賞を受賞(『孤狼の血 LEVEL2』)し、第44回ヨコハマ映画祭で最優秀新人賞を受賞(『恋は光』)。今年3月には、高橋文哉とのダブル主演を務める映画『少年と犬』の公開も控えている
<撮影/唐木貴央 取材・文/吉岡 俊 ヘアメイク/徳永舞(ビュートリアム) スタイリング/鬼束香奈子 Ⓒ「君の忘れ方」製作委員会2024>