日系航空会社CAから六本木のクラブママを経て作家となった蒼井凜花が、実際に体験した、または見聞きしたエピソードをご紹介。今回は「元CAの母が娘の婚活に見せた執念」についてお届けする。
◆海外のスクールでイジメられていた娘の苦悩
大手商社で働く夫を持つ元CA・尚子さん(54歳・仮名)には、一人娘の清乃さん(24歳・仮名・大学院生)がいる。清乃さんはイジメが原因で、子供の頃から異性との接触を拒んでいた。母の尚子さんは、当時の清乃さんについてこのように話す。
「清乃が10歳の時、夫の海外赴任のため家族3人でシドニーへ行ったんです。現地スクールに通い始めた娘がある日、泣きながら帰ってきました。聞けば、クラスの男子生徒に『清乃って出っ歯だよな!』とからかわれてしまったようで……。それ以来クラスでは『出っ歯』と呼ばれるようになり、イジメられるようになってしまったのです」
尚子さんは初めての海外暮らしに、日々ストレスを抱えていた。慣れない地での生活に加え、住まいは夫が勤める会社が丸ごと借り上げたマンション。毎日のように商社マンの妻たちとの交流が続いた。
「そこには“夫の地位イコール妻のポジション”というヒエラルキーが存在しました。東大卒の夫を持つ奥さんは、これ見よがしに『尚子さんのご主人の出身大学はどちら?』などと聞いてきますし。上司の妻の言うことは絶対的で、ホームパーティなどがあっても『失礼はないか』『夫の出世に影響しないか』と心をすり減らしていたんです。今となっては、イジメに苦しむ娘ともっと向き合っていればと悔やんでいます」
◆歯の矯正によってコンプレックスは解消されるも…
5年間の赴任を終えて日本に帰った時、娘の清乃さんは「共学はイヤ!女子高に通わせて」と懇願した。そして「ママには出っ歯と言われ続けた私の気持ちなんてわからないわ」と大泣きしたという。
「ショックでした。それほど追いつめられていたとは全く気付かなくて。夫と話し合った結果、審美歯科が併設された美容外科で治療したんです。150万円以上かかりましたが、一刻も早く治したいという娘の要望もありましたから。治療のお陰で、娘は長年のコンプレックスから解放され、ホッとしました」
その後、清乃さんは都内の名門女子高に進学。友人にも恵まれ、成績も優秀だったという。
そして担任の勧めで有名私大の理工学部を受験し、無事合格。清乃さんの学部は「男性8割、女性2割」で、尚子さんは「素敵な恋人を見つけて、大学生活を謳歌してほしい」と願った。しかし、清乃さんの周囲に全く男性の気配は感じられない。
「娘が学業に専念してくれるのは嬉しいのですが、男っ気はゼロ。洋服も地味で、ほぼスッピン。サークルや合コンにも興味がなく、このままじゃ結婚できないのでは?と焦りました」
案の定、清乃さんは論文執筆やレポートに明け暮れ、大学院に進むこととなった。これを機に、母の尚子さんは一大決心をする。
◆160万円払って“まさかの行動”に
これを機に、母の尚子さんは一大決心をする。なんと結婚相談所を開業することにしたのだ。大手結婚相談所「A」に160万円を払って加盟店に登録し、婚活カウンセラー兼仲人として働き始めた。これも全ては娘のためだった。
「160万円と聞けば驚かれるかもしれませんが、婚活をするならしっかりした結婚相談所が安心でした。Aは全国にネットワークがあり、他店との情報共有もできるため、高額とは思いません。娘のためにAで働き始め、婚活カウンセラーと仲人をしながら、娘にふさわしい相手を物色したんです。同時に、成婚率が高い女性の条件も分析しました」
◆成婚率が高い女性に共通していること
成婚率が高い女性とは、どのようなものだろう。
「まず、一番大切なのは若さ。次にプロフィール用の写真。つまりルックスの良さです。会員や仲人はこれらを重視し、お見合いをさせるんです。年齢とルックスが重要ということで、娘には二重まぶたの整形も勧めました。私の偏見かもしれませんが、やはり女性はぱっちりした目のほうが可愛らしいですから。最初こそ嫌がっていた娘も、私の説得に応じてくれましたね。『美しい歯並びになったんだから、目も大きい方が魅力的よ』と言い続けると、手術を承諾してくれたんです」
ルックスが変わると心も明るくなるのか、清乃さんは徐々にヘアメイクやファッションにも興味を持ち始める。尚子さんはショッピングに同行し、結婚相談所で男性ウケする化粧品や洋服を勧めた。
「男性ウケがいいのは『若い女子アナタイプ』です。ロングヘアに薄いメイク、ファッションは清楚なお嬢さま系。娘も私のアドバイスに従ってくれるようになりました。そして夫と相談して、私が勤める結婚相談所に入会させたんです。半年間の活動費の目安は約40万円、成婚した際にはプラス20万円です。娘は『結婚なんてまだ早い』と拒んでいましたが、成婚率のデータや妊娠の適齢期、卵子の老化などを丁寧に説明したら、うなずいてくれて。すぐにプロのカメラマンにお願いし、『極上の1枚』のプロフィール写真を撮影してもらいました」
◆素敵な男性と出会った結果…
その後の展開は早かった。尚子さんはCAの経験を活かして、娘にコミュニケーション術を教え込んだ。笑顔と礼儀、マナーや可愛げある言動の重要性と並行して、家事や料理も徹底指導した。
「娘にひと通り教えた時、素敵な男性が入会してきたんです。自衛官の正人さん(30歳・仮名)。名門大学出身で海外留学の経験もある好青年です。彼の両親が『しっかりした家庭で育った聡明な20代女性との結婚を望む』とのことで、すぐに娘との見合いをセッティングをしました。正人さんには、『清乃は恋愛慣れしていないけれど、純粋でいい子よ。何かあっても私がサポートするから安心して』と告げてお見合いをさせたところ、後日、結婚を前提に交際したいと『仮交際』の申請を頂いたんです」
詳しく聞けば、清乃さんの清楚な容姿、有名私大の大学院で学ぶ聡明さが気に入ったという。加えて、父が大手商社マン、母が元大手航空会社のCAであることも大きかった。優秀なのに可愛らしさも兼ね備えているのは、尚子さんの「CA流対応術」の指導の賜物だろう。
「デートの際も、清乃には『男性を立てることを忘れないで』『正論をぶつけたり、討論はダメよ』『笑顔でいてね』と忠告し、正人さんには『清乃はイタリアンや和食が好きなの』『海外生活のことも話してあげて』などと、娘の好みや興味があることをさりげなく伝えました。おかげでデートは盛り上がったようです」
◆母の“執念ともいえる愛情”が身を結ぶことに
デートを重ねた二人は「仮交際」から「真剣交際」へと進む。そして、半年間の交際を経て二人は婚約し、結婚相談所を退所した。春には結婚の予定だ。
「清乃は大学院で勉強を続けたいそうで、今は新居から通学しています。家事は私が週2回で手伝いに行っているんですが、頼りがいのある正人さんが義理の息子になってくれると決まり、嬉しいですね。正人さんも清乃も『自分たちのキャリアを考えながら、二人で幸せな家庭を築く』と相談したそうです」
かつて「出っ歯」といじめられた清乃さんは、もうすぐ幸せな花嫁となってバージンロードを歩く。元CAの母の執念ともいえる愛情が、娘の人生を大きく変えたのだ。
文/蒼井凜花
【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。
◆海外のスクールでイジメられていた娘の苦悩
大手商社で働く夫を持つ元CA・尚子さん(54歳・仮名)には、一人娘の清乃さん(24歳・仮名・大学院生)がいる。清乃さんはイジメが原因で、子供の頃から異性との接触を拒んでいた。母の尚子さんは、当時の清乃さんについてこのように話す。
「清乃が10歳の時、夫の海外赴任のため家族3人でシドニーへ行ったんです。現地スクールに通い始めた娘がある日、泣きながら帰ってきました。聞けば、クラスの男子生徒に『清乃って出っ歯だよな!』とからかわれてしまったようで……。それ以来クラスでは『出っ歯』と呼ばれるようになり、イジメられるようになってしまったのです」
尚子さんは初めての海外暮らしに、日々ストレスを抱えていた。慣れない地での生活に加え、住まいは夫が勤める会社が丸ごと借り上げたマンション。毎日のように商社マンの妻たちとの交流が続いた。
「そこには“夫の地位イコール妻のポジション”というヒエラルキーが存在しました。東大卒の夫を持つ奥さんは、これ見よがしに『尚子さんのご主人の出身大学はどちら?』などと聞いてきますし。上司の妻の言うことは絶対的で、ホームパーティなどがあっても『失礼はないか』『夫の出世に影響しないか』と心をすり減らしていたんです。今となっては、イジメに苦しむ娘ともっと向き合っていればと悔やんでいます」
◆歯の矯正によってコンプレックスは解消されるも…
5年間の赴任を終えて日本に帰った時、娘の清乃さんは「共学はイヤ!女子高に通わせて」と懇願した。そして「ママには出っ歯と言われ続けた私の気持ちなんてわからないわ」と大泣きしたという。
「ショックでした。それほど追いつめられていたとは全く気付かなくて。夫と話し合った結果、審美歯科が併設された美容外科で治療したんです。150万円以上かかりましたが、一刻も早く治したいという娘の要望もありましたから。治療のお陰で、娘は長年のコンプレックスから解放され、ホッとしました」
その後、清乃さんは都内の名門女子高に進学。友人にも恵まれ、成績も優秀だったという。
そして担任の勧めで有名私大の理工学部を受験し、無事合格。清乃さんの学部は「男性8割、女性2割」で、尚子さんは「素敵な恋人を見つけて、大学生活を謳歌してほしい」と願った。しかし、清乃さんの周囲に全く男性の気配は感じられない。
「娘が学業に専念してくれるのは嬉しいのですが、男っ気はゼロ。洋服も地味で、ほぼスッピン。サークルや合コンにも興味がなく、このままじゃ結婚できないのでは?と焦りました」
案の定、清乃さんは論文執筆やレポートに明け暮れ、大学院に進むこととなった。これを機に、母の尚子さんは一大決心をする。
◆160万円払って“まさかの行動”に
これを機に、母の尚子さんは一大決心をする。なんと結婚相談所を開業することにしたのだ。大手結婚相談所「A」に160万円を払って加盟店に登録し、婚活カウンセラー兼仲人として働き始めた。これも全ては娘のためだった。
「160万円と聞けば驚かれるかもしれませんが、婚活をするならしっかりした結婚相談所が安心でした。Aは全国にネットワークがあり、他店との情報共有もできるため、高額とは思いません。娘のためにAで働き始め、婚活カウンセラーと仲人をしながら、娘にふさわしい相手を物色したんです。同時に、成婚率が高い女性の条件も分析しました」
◆成婚率が高い女性に共通していること
成婚率が高い女性とは、どのようなものだろう。
「まず、一番大切なのは若さ。次にプロフィール用の写真。つまりルックスの良さです。会員や仲人はこれらを重視し、お見合いをさせるんです。年齢とルックスが重要ということで、娘には二重まぶたの整形も勧めました。私の偏見かもしれませんが、やはり女性はぱっちりした目のほうが可愛らしいですから。最初こそ嫌がっていた娘も、私の説得に応じてくれましたね。『美しい歯並びになったんだから、目も大きい方が魅力的よ』と言い続けると、手術を承諾してくれたんです」
ルックスが変わると心も明るくなるのか、清乃さんは徐々にヘアメイクやファッションにも興味を持ち始める。尚子さんはショッピングに同行し、結婚相談所で男性ウケする化粧品や洋服を勧めた。
「男性ウケがいいのは『若い女子アナタイプ』です。ロングヘアに薄いメイク、ファッションは清楚なお嬢さま系。娘も私のアドバイスに従ってくれるようになりました。そして夫と相談して、私が勤める結婚相談所に入会させたんです。半年間の活動費の目安は約40万円、成婚した際にはプラス20万円です。娘は『結婚なんてまだ早い』と拒んでいましたが、成婚率のデータや妊娠の適齢期、卵子の老化などを丁寧に説明したら、うなずいてくれて。すぐにプロのカメラマンにお願いし、『極上の1枚』のプロフィール写真を撮影してもらいました」
◆素敵な男性と出会った結果…
その後の展開は早かった。尚子さんはCAの経験を活かして、娘にコミュニケーション術を教え込んだ。笑顔と礼儀、マナーや可愛げある言動の重要性と並行して、家事や料理も徹底指導した。
「娘にひと通り教えた時、素敵な男性が入会してきたんです。自衛官の正人さん(30歳・仮名)。名門大学出身で海外留学の経験もある好青年です。彼の両親が『しっかりした家庭で育った聡明な20代女性との結婚を望む』とのことで、すぐに娘との見合いをセッティングをしました。正人さんには、『清乃は恋愛慣れしていないけれど、純粋でいい子よ。何かあっても私がサポートするから安心して』と告げてお見合いをさせたところ、後日、結婚を前提に交際したいと『仮交際』の申請を頂いたんです」
詳しく聞けば、清乃さんの清楚な容姿、有名私大の大学院で学ぶ聡明さが気に入ったという。加えて、父が大手商社マン、母が元大手航空会社のCAであることも大きかった。優秀なのに可愛らしさも兼ね備えているのは、尚子さんの「CA流対応術」の指導の賜物だろう。
「デートの際も、清乃には『男性を立てることを忘れないで』『正論をぶつけたり、討論はダメよ』『笑顔でいてね』と忠告し、正人さんには『清乃はイタリアンや和食が好きなの』『海外生活のことも話してあげて』などと、娘の好みや興味があることをさりげなく伝えました。おかげでデートは盛り上がったようです」
◆母の“執念ともいえる愛情”が身を結ぶことに
デートを重ねた二人は「仮交際」から「真剣交際」へと進む。そして、半年間の交際を経て二人は婚約し、結婚相談所を退所した。春には結婚の予定だ。
「清乃は大学院で勉強を続けたいそうで、今は新居から通学しています。家事は私が週2回で手伝いに行っているんですが、頼りがいのある正人さんが義理の息子になってくれると決まり、嬉しいですね。正人さんも清乃も『自分たちのキャリアを考えながら、二人で幸せな家庭を築く』と相談したそうです」
かつて「出っ歯」といじめられた清乃さんは、もうすぐ幸せな花嫁となってバージンロードを歩く。元CAの母の執念ともいえる愛情が、娘の人生を大きく変えたのだ。
文/蒼井凜花
【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。