ロッテからポスティングシステムでドジャース入団を果たした佐々木朗希。球団はアリゾナ州で行われる春季キャンプに招待選手として佐々木を参加させることをすでに発表済みだ。いよいよ“令和の怪物”が次のステージに向かうことになる。
◆ドジャースはロッテの起用法を踏襲する?
メジャーリーグの公式サイト『MLB.com』も才能ある23歳の右腕を高く評価しているようだ。毎年この時期に発表されるプロスペクト(有望株)ランキングのトップ100で、並み居る有望株を押し退けて佐々木を1位に選出している。
同サイト内の佐々木に対するスカウティングレポートのコメントを見ても、「102.5マイル(165キロ)の速球は大谷のNPB記録(※日本人最速)に並ぶ速さ」「2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本の優勝に貢献」「佐々木が投じるスプリッターは世界最高級かもしれない」とまさに絶賛の嵐。佐々木に対する期待値は、渡米1年目の7年前に同じくプロスペクトランキング1位に輝いた大谷翔平に匹敵するといえるだろう。
ただロッテ時代はフルシーズンを投げ抜いたことがないという明確な懸念事項もある。ドジャースとすれば、少なくとも1年目は“過保護”と呼ばれたロッテの起用法を踏襲するだろう。1試合当たりの投球数、シーズンを通しての登板数やイニング数に制限を設けることが予想される。
◆滑りやすいボールへの対応が課題に
ただそんな制限を課したとしても、避けて通れないのがメジャー公式球への対応だ。
一般的にNPBのそれに比べてメジャーリーグの公式球は滑りやすいといわれている。メジャーリーグもボールの改善に取り組んでいるとされるが、滑りやすさを裏付ける研究結果も出ており、これまで多くの日本人投手も苦しんできた過去がある。
佐々木自身はWBCなどで滑りやすいボールを経験しているとはいえ、1年を通して投げ続ければ肩や肘に違和感を抱くこともあるだろう。
実際に大谷も1年目の秋に利き腕の右肘を痛め、右肘内側側副靱帯の再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けている。さらに、23年9月にも2度目のトミー・ジョン手術を受け、24年は打者一本で出場していたことは記憶に新しい。
中には同じ岩手県出身の大先輩・菊池雄星(エンゼルス)のようにほぼケガと無縁の現役生活を送っているタフな投手もいるにはいるが、大谷以外にもダルビッシュ有や松坂大輔など、少なくない日本人投手が渡米後に故障し、トミー・ジョン手術を受けている。
そしてやはり佐々木もまた将来的に故障に苦しまされる可能性は否定できない。巷で囁かれているのが、若くして速い球を投げる投手ほど故障しやすいというもの。そういう意味でも、160キロ超えのストレートを次々と投げる佐々木の右腕がいつ悲鳴を上げてもおかしくないというわけだ。
10代の頃から剛速球を投げ続けてきた佐々木が今後数年間にわたって故障なく投げられるかは全くの未知数といえる。
◆フォークボールの肘への負担も少なくない
また、“世界最高級”とも評される鋭く落ちるフォークも肘への負担は少なくないはず。佐々木は身体的にもまだ完成しきっていないことは明らかで、今後数年以内に滑りやすいメジャー公式球の洗礼を浴びる可能性は低くないだろう。
そこで新たなチームメートとなる大谷との比較論になるが、大谷は2度目のトミー・ジョン手術を乗り越え、今季序盤に二刀流としてカムバックを果たそうとしている。打者一本で臨んだ昨季は、投手としてリハビリ中の身だったにもかかわらず、指名打者(DH)として大活躍。史上初の「50-50」クラブを“創設”し、最終的には54本塁打&59盗塁までその数字を伸ばした。
◆剛腕投手だからこそ“避けられない道”
大谷は最終的にチームをワールドシリーズ制覇に導き、オフには2年連続3度目のMVPに満票で輝くなどまさに歴史的なシーズンを送った。このような芸当は投手一本の佐々木には到底できず、もし長期間にわたって戦列を離れるようなことになれば、本人に焦る気持ちも芽生えるだろう。
一人の才能豊かな若者が大志を抱いて大舞台に挑戦する直前に水を差すような指摘かもしれないが、佐々木ほどの剛腕投手だからこそ、肩・肘への故障は避けては通れない道ともいえる。
ドジャースの起用法にも注目が集まるが、まずは佐々木自身がしっかり身体作りに努め、メジャー公式球に対応することが何よりも重要となる。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
◆ドジャースはロッテの起用法を踏襲する?
メジャーリーグの公式サイト『MLB.com』も才能ある23歳の右腕を高く評価しているようだ。毎年この時期に発表されるプロスペクト(有望株)ランキングのトップ100で、並み居る有望株を押し退けて佐々木を1位に選出している。
同サイト内の佐々木に対するスカウティングレポートのコメントを見ても、「102.5マイル(165キロ)の速球は大谷のNPB記録(※日本人最速)に並ぶ速さ」「2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本の優勝に貢献」「佐々木が投じるスプリッターは世界最高級かもしれない」とまさに絶賛の嵐。佐々木に対する期待値は、渡米1年目の7年前に同じくプロスペクトランキング1位に輝いた大谷翔平に匹敵するといえるだろう。
ただロッテ時代はフルシーズンを投げ抜いたことがないという明確な懸念事項もある。ドジャースとすれば、少なくとも1年目は“過保護”と呼ばれたロッテの起用法を踏襲するだろう。1試合当たりの投球数、シーズンを通しての登板数やイニング数に制限を設けることが予想される。
◆滑りやすいボールへの対応が課題に
ただそんな制限を課したとしても、避けて通れないのがメジャー公式球への対応だ。
一般的にNPBのそれに比べてメジャーリーグの公式球は滑りやすいといわれている。メジャーリーグもボールの改善に取り組んでいるとされるが、滑りやすさを裏付ける研究結果も出ており、これまで多くの日本人投手も苦しんできた過去がある。
佐々木自身はWBCなどで滑りやすいボールを経験しているとはいえ、1年を通して投げ続ければ肩や肘に違和感を抱くこともあるだろう。
実際に大谷も1年目の秋に利き腕の右肘を痛め、右肘内側側副靱帯の再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けている。さらに、23年9月にも2度目のトミー・ジョン手術を受け、24年は打者一本で出場していたことは記憶に新しい。
中には同じ岩手県出身の大先輩・菊池雄星(エンゼルス)のようにほぼケガと無縁の現役生活を送っているタフな投手もいるにはいるが、大谷以外にもダルビッシュ有や松坂大輔など、少なくない日本人投手が渡米後に故障し、トミー・ジョン手術を受けている。
そしてやはり佐々木もまた将来的に故障に苦しまされる可能性は否定できない。巷で囁かれているのが、若くして速い球を投げる投手ほど故障しやすいというもの。そういう意味でも、160キロ超えのストレートを次々と投げる佐々木の右腕がいつ悲鳴を上げてもおかしくないというわけだ。
10代の頃から剛速球を投げ続けてきた佐々木が今後数年間にわたって故障なく投げられるかは全くの未知数といえる。
◆フォークボールの肘への負担も少なくない
また、“世界最高級”とも評される鋭く落ちるフォークも肘への負担は少なくないはず。佐々木は身体的にもまだ完成しきっていないことは明らかで、今後数年以内に滑りやすいメジャー公式球の洗礼を浴びる可能性は低くないだろう。
そこで新たなチームメートとなる大谷との比較論になるが、大谷は2度目のトミー・ジョン手術を乗り越え、今季序盤に二刀流としてカムバックを果たそうとしている。打者一本で臨んだ昨季は、投手としてリハビリ中の身だったにもかかわらず、指名打者(DH)として大活躍。史上初の「50-50」クラブを“創設”し、最終的には54本塁打&59盗塁までその数字を伸ばした。
◆剛腕投手だからこそ“避けられない道”
大谷は最終的にチームをワールドシリーズ制覇に導き、オフには2年連続3度目のMVPに満票で輝くなどまさに歴史的なシーズンを送った。このような芸当は投手一本の佐々木には到底できず、もし長期間にわたって戦列を離れるようなことになれば、本人に焦る気持ちも芽生えるだろう。
一人の才能豊かな若者が大志を抱いて大舞台に挑戦する直前に水を差すような指摘かもしれないが、佐々木ほどの剛腕投手だからこそ、肩・肘への故障は避けては通れない道ともいえる。
ドジャースの起用法にも注目が集まるが、まずは佐々木自身がしっかり身体作りに努め、メジャー公式球に対応することが何よりも重要となる。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。