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巨人が“大型補強したシーズン”を振り返る…「ラミレス、クル-ン入団」の2008年は稀に見る成功例だが、大失敗した年も

日刊SPA! 2025年1月30日 15時52分

いよいよキャンプインが近づいているプロ野球。例年通り、このオフシーズンにも、さまざまな移籍に関する話題があった。特に、巨人はFAで甲斐拓也を、さらにライデル・マルティネスや田中将大といったビッグネームも続々と獲得している。
ただ、補強の成果については、神のみぞ知るところである。本記事では、巨人の補強が“成功したシーズン”と“失敗したシーズン”の両方を振り返ってみたい。

◆【成功①:2008年】CS敗退後に大型補強

2007年に加入した小笠原道大の活躍もあって、暗黒時代を抜け出しつつあった巨人。ただ、5年ぶりのセ・リーグ優勝は果たしたものの、CSでは3連敗を喫し、あえなく敗退。この結果を受けて、すでに他球団で実績十分の助っ人外国人、アレックス・ラミレス、セス・グライシンガー、マーク・クルーンを獲得した。

彼らを迎えた2008年は、首位を走っていた阪神と最大13ゲーム差をつけられ、7月22日時点でマジック点灯も許してしまう。しかし、そこから逆転優勝を果たしたさまは、「メークレジェンド」と称された。

最終的にラミレスはMVPと打点王、グライシンガーは最多勝、クルーンは最多セーブをそれぞれ獲得し、大いに優勝に貢献したのだ。この年の補強は、稀に見る成功例だった。

余談ではあるが、坂本勇人が台頭したのもこのシーズンだった。

◆【成功②:2012年】主力の衰えを補強でカバーした

2011年は、打線の主軸だったラミレスと小笠原の衰えが顕著で、2年連続で優勝を逃した。そこで獲得されたのが、杉内俊哉とデニス・ホールトン、そして村田修一だ。3選手の貢献度は非常に高かった。

杉内は、交流戦で史上75人目のノーヒットノーランを達成。シーズンを通じても12勝4敗 防御率2.04と抜群の数字で、最多奪三振に加え、勝率、WHIPもリーグ1位だった。

ホールトンもローテーションの一角を担い、12勝8敗 防御率2.45。村田は巨人ならではの重圧に苦しみながらも、フル出場を果たし、小笠原の穴を埋める活躍を見せたのだ。大物の補強がうまくハマり、リーグ優勝はもちろん日本一にも輝いた。

◆【成功③:2019年】新戦力が起爆剤となってリーグ制覇

2018年のシーズンオフに広島から移籍してきたのが丸佳浩と炭谷銀仁朗だ。特筆すべきなのは、丸である。3番打者として打率.292、27本塁打、89打点の好成績を残し、初年度から打線の核になった。

また、炭谷の加入により、捕手3人体制としたことが功を奏したシーズンでもあった。正捕手である小林誠司、一塁手と兼任で左投手を上手くリードできる大城卓三、そして炭谷。この3人を投手との相性で臨機応変に使い分けた。また、負担も分散されたことにより、パフォーマンスを低下させることなくシーズンを終えられた。

◆【失敗①:2017年】補強選手含め、大きく歯車が狂った

高橋由伸政権の初年度である2016年は、2位に終わった。翌年に備えて球界史上初の「トリプルFA補強」を敢行し、山口俊や森福允彦、陽岱鋼を獲得。

だが、陽はキャンプ中の故障で出遅れる。後半戦になってから1番に定着したが、日本ハム時代と比較すると物足りない成績。

森福は、得意の左打者に通用せず、精彩を欠く結果に終わった。きわめつけは、泥酔したうえ暴行騒動を起こしたのが山口俊。これでは、Bクラスに終わるのも納得の体たらくである。

ただ、補足すると山口俊は、翌2019年に最多勝、最多奪三振、最高勝率に輝き、リーグ優勝に大きく貢献した。

◆【失敗②:2015年】補強選手が噛み合わなかった

リーグ3連覇後の2015年。原辰徳監督第二次政権の最終年に獲得したのは、相川亮二と金城龍彦。

金城は、古巣のベイスターズ戦で本塁打を放つなど、春先には気を吐いていた。しかし、その後は主軸の長野久義はもちろん、亀井善行や当時若手の橋本到、立岡宗一郎との競争に敗れ、シーズンのほとんどを2軍生活で過ごした。

小林と正捕手を争っていた相川は4月に右太ももの肉離れ、7月末に左手首を骨折するなど故障に泣かされた。捕手別の防御率を見ても、適応に苦しんだ様子がうかがえる。

小林:56試合:防御率2.53
阿部:23試合:防御率1.89
相川:31試合:防御率3.38

◆【失敗③:2021年】投打のベテランを獲得も機能せず

時代の変化もあり、巨人へ移籍する大物選手は少なくなった。2020年オフは山田哲人(現・東京ヤクルトスワローズ)に振られ、梶谷隆幸と井納翔一を獲得した。

だが、梶谷は、開幕してすぐは好調を維持するも、怪我に苦しみ続ける1年になった。井納は開幕ローテーションこそ勝ち取ったが、安定感がなく、すぐに2軍に降格した。

この両選手は選手としてのピークが過ぎており、ほとんど機能しなかった。

◆巨人に移籍した数年後に活躍するケースも

山口俊のように移籍して数年後に活躍するパターンもある。2019年にリリーバーの軸として開花した大竹寛も、カムバックした1人。移籍1年目は先発ローテーションで9勝を挙げたものの、それ以降は年齢的な衰えもあり、結果を残せていなかった。

雪辱を果たしたのが2019年。シーズン中盤に中継ぎとして登板してからは、持ち前のシュートやスライダーを活かしてピンチの場面で併殺打の山を築き、見事復活を遂げた。優勝に貢献した勢いそのままにプレミア12では日本代表に選出される。

このように、低迷した時期から一転してチームを優勝に導く一角となる選手も存在する。

◆甲斐、マルティネス、田中は…

さて、ソフトバンクから獲得した甲斐はどのように使われるだろうか。甲斐メインで、相性によっては大城を起用。小林は「2019年の炭谷」のような立ち位置で起用するのではないか。

マルティネスは怪我で離脱しがちの大勢とダブルストッパーになるはずだ。あるいは、リバン・モイネロ(現・福岡ソフトバンクホークス)のように先発に転向させるのもアリだろう。

残り3勝となった200勝を目指す田中に求められるのは、菅野が抜けた投手陣を背中で引っ張る存在。初参戦のセ・リーグで大いに暴れまわってほしい。

<TEXT/ゴジキ>

【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55

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