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タイに移住した36歳男性が明かす、“食費だけで10万円近い”リアルな生活費「屋台飯はあまり食べなくなった」

日刊SPA! 2025年2月3日 15時53分

海外移住は今や夢物語なのか? 最近の物価高や急激な円安の影響で、以前よりもそのハードルが高くなったと感じる人は多いだろう。しかし、その一方で、海外移住に新たな可能性を見出し、挑戦しようとする日本人も依然として少なくない。
ビジネスの進出先やリタイア後の移住先として人気のタイ。しかし、円安や物価の高騰により、以前より「暮らしにくくなった」という日本人も増えている。10年前からタイと日本を行き来し、5年前に首都バンコクへ移住した男性に、その実情を伺った。

◆タイで「こんなに自由に生きていい場所があるんだ」と感動

タイ旅行情報メディア「タイ一択」を運営するリーさんこと伊藤良二さん(36歳)。タイに移住しようと思ったきっかけは何だったのか。

「タイに初めて行ったのは2014年。旅行でどこか海外に行きたいと思っていたとき、HISで2泊3日のツアーが3万円くらいで売っていたので、友人と一緒に申し込みました。タイに着いて、混沌としたカオスな雰囲気を感じました。

いろいろな人種が歩いていて、アジア人もいれば欧米人もアラブ人もいる。路上でみんなが普通に食事をしていたり、ヘルメットをかぶらずにバイクに乗っていたりする風景は、日本人の感覚からすると衝撃的で『こんなに自由に生きていい場所があるんだ』と感動しましたね」

その後、もっとタイを知りたくなった伊藤さん。当時フリーターだったため、短期のアルバイトをしてお金を貯めた後、アジアを回るバックパッカー旅行を計画する。その旅の中でタイにも再び訪れ、旅の経験をまとめたブログを2015年に開設した。

「当時はブログ全盛期。アフィリエイトを活用したことで、1年ほどで月に10〜15万円ほど稼げるようになりました。収益化できたことで、いつかタイに移住したいと考えるようになったんです。旅のブログ以外でも自分が当時やっていた短期バイトやリゾートバイト関連のブログを作り、現在は4つのサイトを運営しています」

◆ブログのアフィリエイト収入を基盤に移住を実現

ブログである程度の収入を得られるようになったタイミングで、タイの法律で認められたタイ長期滞在・移住を実現できる『タイランドエリート(現:タイランドプリビレッジ)』を購入し、タイ移住を決意した伊藤さん。しかし、その直後にコロナ禍が訪れる。何度も帰国を考えたが、状況が徐々に回復していき、現在は安定した生活を送れるようになったという。

「今はバンコクのオンヌットというエリアで、ワンベッドルームのコンドミニアムを借りて暮らしています。光熱費は季節によって変動しますが、平均すると月に1000バーツ(約4600円)ほどかかります。交通費については、GrabやBTSをよく利用するため、月に2000バーツ(約9200円)ほどですね。また、医療保険は日本のもので毎月1万8000円ほどを支払っています」

◆生活費は最低でも20万円「食費だけで10万円近い」

さらに、タイを訪れた10年前と比べて大きく変わったと感じるのは食費だと話す。

「食費は外食やコンビニを利用することが多いため、酒代も込みで約2万バーツ(約9万2000円)と少し高めです。屋台飯は若い頃によく食べていましたが、最近は年齢や健康を考えてあまり食べなくなりました。ひと昔前であれば、屋台などで食べて地元民に近い生活をすれば『タイは月5万円で生活できる』なんて言われていました。20代の若い人ならそれで満足できるかもしれませんが、私も年齢を重ねるなかでなるべく野菜を多く摂るなど、健康を意識した食生活を心がけるようになりました。そのぶん、食費が上がっています」

他には日用品や嗜好品としてのお酒代、コワーキングスペースの利用料なども含めると、生活費は日本円で最低でも月20万円程度になると語る伊藤さん。たしかに、バンコクは日本と比べて生活コストが抑えられる部分もあるだろうが、嗜好品や外食を多用するスタイルだとそれなりに出費がかさむのだ。

◆物価の高騰で地方に移る日本人の高齢者も

今年でタイ移住5年目となる伊藤さんは、来年以降もビザを更新してタイに住み続けたいと考えている。だが、将来的に永住するかどうかについては慎重な姿勢を見せる。

「今の定年世代が受け取る年金の額であれば、タイで暮らすことは可能かもしれません。しかし、バンコクでは年々物価が上がっていて、簡単な話ではなくなっています。実際、10年前に年金でバンコクに住んでいた人たちの中には、生活費の高騰によりアユタヤやチェンマイといった地方へ移住するケースが増えています」

今の時代に50代でリタイアしてタイで暮らすとなると、最低でも5,000万円は必要だといわれている。 もちろん、十分な貯蓄がある人なら問題はないとは思うのだが……。

「大気汚染や医療体制の課題、交通事故の多さを考えると、高齢になったら日本で暮らすほうが安心だと感じます。いまここで暮らしている私の考えとしては、タイは20代や30代の若いうちに楽しむ場所なのかなと。リタイアしてからタイで暮らすことについては慎重に考える必要があると思いますね」

<取材・文・撮影/カワノアユミ>

【カワノアユミ】
東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano

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