「老害=高齢者」はもう古い。年齢に関係なしに、その予備軍たる「老害グレーゾーン」は職場にはびこっている。自分は果たして違うのか? 繰り広げられる無自覚な問題行動をリスト化した。
◆【楽天家型】老害の問題点。「失敗を経験しな!」はもはや通用しない
「ソフト老害」を「楽天家型」「会社大好き型」「お世話焼き型」の3つに分類。「楽天家型」は育成方法に問題があるという。
部下や後輩の成長を考え、失敗を経験させたり、時には重要な決断を委ねたりする。そんな典型的な育成方法が、今や危ういと語るのは人事コンサルタントの新田龍氏だ。
「自分にとっては実体験に基づく指導方法かもしれませんが、相手からすれば単なる希望的観測でしかなく、相手が今現在陥っている苦境に対する解決策になっていなければ意味がありません」
マーケティングアナリストの原田曜平氏も同意する。
「今は『役割論』の時代。自分は『教える係』、彼らは『教えられる係』であるという意識改革が必要になります」
年下社員の自主性に期待するような楽観視は、ソフト老害化リスクが高めるのだ。
◆「楽天家型」老害グレーゾーンの言動10
30~50代の働く男女1000人を対象に実施した各言動の「ソフト老害指数」を測る調査を基に作成。
①失敗を見守ることも大事だと思う 87pt
「失敗は次に生かせばいいんだよ」と優しい声かけのつもりでも、そこに至る過程に問題あり。「年下社員はペースを乱されるのを嫌います。根性論は通じず、失敗を無駄な苦労と判断。転職を考えるでしょうね」(原田氏)
②困っている相手はとにかく励ます 84pt
「最後は何とかなるから大丈夫だよ」と根拠なき理由で相手を鼓舞するのもNG。「下の世代ほど、情報収集力が高い。説得力がない言動は、すぐ見透かされます」(原田氏)
③重要な決断を「好きなほうでいいよ」と委ねる 84pt
問題発生時、最終的な判断は現場任せ。「責任を取るのが上の仕事。『この人は頼れない』と部下も後輩も興ざめです」(新田氏)
④仕事に自分らしさを求める 82pt
成長意欲は高いものの、自分らしさがわからない相手には逆効果。「彼らの自分らしさを引き出すのが上司や先輩の新たな役割」(新田氏)
⑤「聞いてくれればよかったじゃん」と言う 81pt
しっかりと言い分を聞かずに、自発的な確認を求めることで、「相手は一方的に責められた」と感じてしまいます(新田氏)
⑥現場にはまず挑戦させて、結果を見てから注意する 80pt
⑦指示不足だとしても、相手の「確認不足」にも原因はある 79pt
⑧時に自分が出した指示もうっかり忘れてしまう 79pt
⑨現場の成長のために日々新たな挑戦を与える 78pt
⑩相手の自主性を信じて、「一旦進めておいて」と任せる 77pt
◆共通点探しがうまい人は老害化しない
なぜ、人は誰しもソフト老害化してしまうのか。そのメカニズムについて、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介氏に聞いた。
「人が老害化する因子には、自己顕示欲、執着心、孤独感の3つがあります。自己顕示欲が強いから若手に対して自分の意見を主張したくなるし、自分のスタイルを変えたくないという執着心から自分の価値観を手放せない。また、孤独感から構ってほしくて若い人に絡んでしまうんです」
そして、ソフト老害の場合は、「排他的」という因子が新たに追加されるとか。
「排他的な人は他人を受け入れられず、自分と他人の相違点をつい探してしまう。さらに、若手よりも自分のほうが経験値は高いと思っているからこそ、自身のノウハウが通用すると信じている。でも、相手からすれば求めてない助言は余計なお世話でしょうね」
◆ソフト老害化しづらい人の特徴は…
では、ソフト老害化しづらい人の特徴はあるのだろうか。
「相手との相違点ではなく、共通点を探すタイプの人ですね。人は自分と似た人に親近感を抱くものです。例えば、『この映画が好き』と言われたとき、『僕はここが納得いかなかったなぁ』と言う人と、『その映画のここが好きだった』と言う人なら後者のほうが好感度は高いですよね。だから、若い世代と価値観の違いを感じても、『最近の若者は……』と否定するのではなく、『世代は違えど、ここは一緒だ』と共通点を探す人のほうがソフト老害化しづらいのです」
心当たりのある人は、我が身のソフト老害化を疑うべし。
<ソフト老害化する4つの因子>
・自己顕示欲
・執着心
・孤独感
・排他的
「排他的」ではなく「共感的」な思考を持てば、ソフト老害化を防げそうだ。
【人事コンサルタント 新田 龍氏】
働き方改革総合研究所代表。著書に『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)など多数
【マーケティングアナリスト 原田曜平氏】
若者研究の第一人者として知られる。芝浦工業大学デザイン工学部教授。近著に『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)
【アンガーマネジメントコンサルタント 安藤俊介氏】
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。著書に『アンガーマネジメントを始めよう』(だいわ文庫)など多数
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/尾藤能暢 アンケート/パイルアップ モデル/加藤企画 古賀プロダクション
―[[老害グレーゾーン]の実態]―
◆【楽天家型】老害の問題点。「失敗を経験しな!」はもはや通用しない
「ソフト老害」を「楽天家型」「会社大好き型」「お世話焼き型」の3つに分類。「楽天家型」は育成方法に問題があるという。
部下や後輩の成長を考え、失敗を経験させたり、時には重要な決断を委ねたりする。そんな典型的な育成方法が、今や危ういと語るのは人事コンサルタントの新田龍氏だ。
「自分にとっては実体験に基づく指導方法かもしれませんが、相手からすれば単なる希望的観測でしかなく、相手が今現在陥っている苦境に対する解決策になっていなければ意味がありません」
マーケティングアナリストの原田曜平氏も同意する。
「今は『役割論』の時代。自分は『教える係』、彼らは『教えられる係』であるという意識改革が必要になります」
年下社員の自主性に期待するような楽観視は、ソフト老害化リスクが高めるのだ。
◆「楽天家型」老害グレーゾーンの言動10
30~50代の働く男女1000人を対象に実施した各言動の「ソフト老害指数」を測る調査を基に作成。
①失敗を見守ることも大事だと思う 87pt
「失敗は次に生かせばいいんだよ」と優しい声かけのつもりでも、そこに至る過程に問題あり。「年下社員はペースを乱されるのを嫌います。根性論は通じず、失敗を無駄な苦労と判断。転職を考えるでしょうね」(原田氏)
②困っている相手はとにかく励ます 84pt
「最後は何とかなるから大丈夫だよ」と根拠なき理由で相手を鼓舞するのもNG。「下の世代ほど、情報収集力が高い。説得力がない言動は、すぐ見透かされます」(原田氏)
③重要な決断を「好きなほうでいいよ」と委ねる 84pt
問題発生時、最終的な判断は現場任せ。「責任を取るのが上の仕事。『この人は頼れない』と部下も後輩も興ざめです」(新田氏)
④仕事に自分らしさを求める 82pt
成長意欲は高いものの、自分らしさがわからない相手には逆効果。「彼らの自分らしさを引き出すのが上司や先輩の新たな役割」(新田氏)
⑤「聞いてくれればよかったじゃん」と言う 81pt
しっかりと言い分を聞かずに、自発的な確認を求めることで、「相手は一方的に責められた」と感じてしまいます(新田氏)
⑥現場にはまず挑戦させて、結果を見てから注意する 80pt
⑦指示不足だとしても、相手の「確認不足」にも原因はある 79pt
⑧時に自分が出した指示もうっかり忘れてしまう 79pt
⑨現場の成長のために日々新たな挑戦を与える 78pt
⑩相手の自主性を信じて、「一旦進めておいて」と任せる 77pt
◆共通点探しがうまい人は老害化しない
なぜ、人は誰しもソフト老害化してしまうのか。そのメカニズムについて、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介氏に聞いた。
「人が老害化する因子には、自己顕示欲、執着心、孤独感の3つがあります。自己顕示欲が強いから若手に対して自分の意見を主張したくなるし、自分のスタイルを変えたくないという執着心から自分の価値観を手放せない。また、孤独感から構ってほしくて若い人に絡んでしまうんです」
そして、ソフト老害の場合は、「排他的」という因子が新たに追加されるとか。
「排他的な人は他人を受け入れられず、自分と他人の相違点をつい探してしまう。さらに、若手よりも自分のほうが経験値は高いと思っているからこそ、自身のノウハウが通用すると信じている。でも、相手からすれば求めてない助言は余計なお世話でしょうね」
◆ソフト老害化しづらい人の特徴は…
では、ソフト老害化しづらい人の特徴はあるのだろうか。
「相手との相違点ではなく、共通点を探すタイプの人ですね。人は自分と似た人に親近感を抱くものです。例えば、『この映画が好き』と言われたとき、『僕はここが納得いかなかったなぁ』と言う人と、『その映画のここが好きだった』と言う人なら後者のほうが好感度は高いですよね。だから、若い世代と価値観の違いを感じても、『最近の若者は……』と否定するのではなく、『世代は違えど、ここは一緒だ』と共通点を探す人のほうがソフト老害化しづらいのです」
心当たりのある人は、我が身のソフト老害化を疑うべし。
<ソフト老害化する4つの因子>
・自己顕示欲
・執着心
・孤独感
・排他的
「排他的」ではなく「共感的」な思考を持てば、ソフト老害化を防げそうだ。
【人事コンサルタント 新田 龍氏】
働き方改革総合研究所代表。著書に『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)など多数
【マーケティングアナリスト 原田曜平氏】
若者研究の第一人者として知られる。芝浦工業大学デザイン工学部教授。近著に『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)
【アンガーマネジメントコンサルタント 安藤俊介氏】
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。著書に『アンガーマネジメントを始めよう』(だいわ文庫)など多数
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/尾藤能暢 アンケート/パイルアップ モデル/加藤企画 古賀プロダクション
―[[老害グレーゾーン]の実態]―