肉をがっつり食べたいーーそんなニーズに応えてくれる肉専門レストランが増えています。有名どころでいえば、「牛角」の焼肉食べ放題や「焼肉ライク」のひとり焼肉。ステーキで探すと、熟成肉がリーズナブルに楽しめる「ステーキガスト」や炭焼きを強みにした「ブロンコビリー」など……。
そうです、肉レストラン業界の競争は年々激化、各店が個性や強みを打ち出そうと、しのぎを削る状況になっています。そんななか、昨年12月にオープンしたのが、いきなりステーキでおなじみ、ペッパーランチの新業態「すきはな 新橋銀座口店」。野菜を一切入れない肉の旨味に集中するすきやき専門店とのことで注目が集まっているようで……。
◆「すきはな」のすき焼きを食べてみる
そこで今回は、すきはなのこだわりすき焼きを体験してみることに。結論から申し上げれば、“また行きたくなる肉レストラン”にはいくつかの共通点があり、それが明確になったということ。
私は国内外でおいしい肉料理をリサーチしている立場としてじっくり体験したところ、高級店を除いたある程度リーズナブルなチェーン店において、必ず押さえるべきポイントがあると確信したのです。焼肉もステーキもすき焼きも、ズバリ3点に集約できる!
それは一体どのようなことなのでしょうか?さらりとご覧いただき、お店選びの際のチェックポイントに活用してもらえたらうれしく思います。
◆安くない価格帯ゆえ、期待は高まる
まずは、基本情報のメニューから。牛肉(約100g)、ごはん(おかわり1回無料)、生卵1個、みそ汁(おかわり1回無料)、お新香、あおさ、ミニソフトクリームが一式になった「すき焼きセット」が3種用意されていて、牛肉の種類によって価格が異なります。国産牛が1980円、黒毛和牛が2530円、ブランド和牛が3850円。ペッパーランチの延長で想像すると、決して安くはありません。
国産牛と和牛の違いを簡単に確認しておきましょう。国産牛は、日本国内で生産された牛肉のこと。牛の品種や出生地などは不明で、乳の出なくなった乳牛用のホルスタインなども食用の国産牛として提供されている場合があります。一方和牛は飼育期間などに関係がなく、品種。黒毛、褐色、無角、日本短角種の4品種に与えられる品種名のこと。霜降り肉という点で海外からの人気も高くなっています。
◆ポイント①:肉はグレードよりも量
今回は、国産牛とブランド和牛(この日は「山形雪降り和牛」)を注文して食べ比べてみることに。価格差は1870円です。
おいしさや満足度には個人差があることを承知で申し上げれば、100gという少量の牛肉で満足したいなら、肉のおかわりは必至。無料でついてくるごはんのおかわりだけで済ましたいのであれば、安い国産牛で十分であるということ。女性の私でさえも、肉1枚ではおなか一杯にはならず、おいしい肉をしっかり堪能したいという期待に応えるなら、最低2枚は食べたいというのが本音でした。
日本のみならず海外の傾向を見ても、肉料理はたっぷり食べたいというのは外せないポイント。すきはなで肉のおかわりをするとなると、1枚1430円(国産牛)、1970円(和牛)、3300円(ブランド和牛)ですから、気軽に追加注文できる価格とはいいがたい。
おかわりして2枚食べるなら、立派なステーキが食べられるような気もしてきますし、手取りが上がらない日本人にとっては魅力的には感じにくい。
店視点で考えると海外観光客を狙いたいところですが、生卵で肉を食べるすき焼きを苦手とする外国人は少なくありません。焼肉やステーキで食べ放題が人気を集めている現実をとらえれば、優先されるべきはブランドよりも量だと断言したい!
◆ポイント②:肉をおいしく感じるのは、非日常の食べ方
二つ目の重要なポイントは、「肉をどう食べさせてもらえるか?」ということ。すきはなでは、自分が焼くのではなく、店員が目の前にある鉄板にザラメと醤油を広げて丁寧に焼いてくれる関西風すき焼きを提供しています。これは確かにうれしいし、肉の旨味をシンプルに味わう食べ方としては最高でした。ところが、このシンプルさは裏目に出てしまう可能性も。ちょっとでも料理をする人であれば、これ、真似できそうな感じがしませんか?
ロピアグループが運営し、道場六三郎ブランドの焼肉店として注目されている「肉匠みちば」では、特製出汁を肉に揉みこんで提供する“出汁焼肉”が注目されています。ほかにも、松屋が運営する「ステーキ屋松」では、溶岩石に乗せて焼き立ての肉を提供するスタイル。いずれにしても家庭ではなかなか真似できない非日常感と価格のバランスが秀逸な店こそが、確かな人気を集めているのです。
◆ポイント③:部位選択や味変……いろいろな食べ方ができる
「また行くぞ!」という決定打に欠かせないのが、豊かな食体験ができるかどうかということ。すきはなでは、こだわり卵として「十六代真っ赤卵」という青森県産のブランド卵が提供されています。鮮やかな黄身色と甘味のあるまろやかなコクが特徴で、すぐに違いを実感できました。このおいしい卵を最後まで楽しめるように卵かけごはんを勧められ、満足度を底上げしてくれることは間違いありません。
しかしながら、ある程度リーズナブルなレストランに期待されているのは、想定を超えるような食べ方や体験。牛角では牛カルビにガーリックとバターをつけて食べる「ガリバタ中落ちカルビ」や、チーズフォンデュのような「チーズチキンバジル」といった斬新な提案が好評で、これは“伝統的な良いものだけを作り続けていれば大丈夫”という時代ではなくなっていることの証でしょう。つまり求められているのはひと工夫ではなく、その先の楽しいアイデア。
また同じ肉料理で比べた場合、部位の違いによって味を楽しみやすいのは、焼肉やステーキ。ですから、むしろすき焼きで新しい提案ができるのであれば大ホームランになる可能性があります。
=====
さあ、みなさんはどんな肉レストランに通いたいですか? 考えるきっかけにしていただければ幸いです。
<TEXT/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12。
そうです、肉レストラン業界の競争は年々激化、各店が個性や強みを打ち出そうと、しのぎを削る状況になっています。そんななか、昨年12月にオープンしたのが、いきなりステーキでおなじみ、ペッパーランチの新業態「すきはな 新橋銀座口店」。野菜を一切入れない肉の旨味に集中するすきやき専門店とのことで注目が集まっているようで……。
◆「すきはな」のすき焼きを食べてみる
そこで今回は、すきはなのこだわりすき焼きを体験してみることに。結論から申し上げれば、“また行きたくなる肉レストラン”にはいくつかの共通点があり、それが明確になったということ。
私は国内外でおいしい肉料理をリサーチしている立場としてじっくり体験したところ、高級店を除いたある程度リーズナブルなチェーン店において、必ず押さえるべきポイントがあると確信したのです。焼肉もステーキもすき焼きも、ズバリ3点に集約できる!
それは一体どのようなことなのでしょうか?さらりとご覧いただき、お店選びの際のチェックポイントに活用してもらえたらうれしく思います。
◆安くない価格帯ゆえ、期待は高まる
まずは、基本情報のメニューから。牛肉(約100g)、ごはん(おかわり1回無料)、生卵1個、みそ汁(おかわり1回無料)、お新香、あおさ、ミニソフトクリームが一式になった「すき焼きセット」が3種用意されていて、牛肉の種類によって価格が異なります。国産牛が1980円、黒毛和牛が2530円、ブランド和牛が3850円。ペッパーランチの延長で想像すると、決して安くはありません。
国産牛と和牛の違いを簡単に確認しておきましょう。国産牛は、日本国内で生産された牛肉のこと。牛の品種や出生地などは不明で、乳の出なくなった乳牛用のホルスタインなども食用の国産牛として提供されている場合があります。一方和牛は飼育期間などに関係がなく、品種。黒毛、褐色、無角、日本短角種の4品種に与えられる品種名のこと。霜降り肉という点で海外からの人気も高くなっています。
◆ポイント①:肉はグレードよりも量
今回は、国産牛とブランド和牛(この日は「山形雪降り和牛」)を注文して食べ比べてみることに。価格差は1870円です。
おいしさや満足度には個人差があることを承知で申し上げれば、100gという少量の牛肉で満足したいなら、肉のおかわりは必至。無料でついてくるごはんのおかわりだけで済ましたいのであれば、安い国産牛で十分であるということ。女性の私でさえも、肉1枚ではおなか一杯にはならず、おいしい肉をしっかり堪能したいという期待に応えるなら、最低2枚は食べたいというのが本音でした。
日本のみならず海外の傾向を見ても、肉料理はたっぷり食べたいというのは外せないポイント。すきはなで肉のおかわりをするとなると、1枚1430円(国産牛)、1970円(和牛)、3300円(ブランド和牛)ですから、気軽に追加注文できる価格とはいいがたい。
おかわりして2枚食べるなら、立派なステーキが食べられるような気もしてきますし、手取りが上がらない日本人にとっては魅力的には感じにくい。
店視点で考えると海外観光客を狙いたいところですが、生卵で肉を食べるすき焼きを苦手とする外国人は少なくありません。焼肉やステーキで食べ放題が人気を集めている現実をとらえれば、優先されるべきはブランドよりも量だと断言したい!
◆ポイント②:肉をおいしく感じるのは、非日常の食べ方
二つ目の重要なポイントは、「肉をどう食べさせてもらえるか?」ということ。すきはなでは、自分が焼くのではなく、店員が目の前にある鉄板にザラメと醤油を広げて丁寧に焼いてくれる関西風すき焼きを提供しています。これは確かにうれしいし、肉の旨味をシンプルに味わう食べ方としては最高でした。ところが、このシンプルさは裏目に出てしまう可能性も。ちょっとでも料理をする人であれば、これ、真似できそうな感じがしませんか?
ロピアグループが運営し、道場六三郎ブランドの焼肉店として注目されている「肉匠みちば」では、特製出汁を肉に揉みこんで提供する“出汁焼肉”が注目されています。ほかにも、松屋が運営する「ステーキ屋松」では、溶岩石に乗せて焼き立ての肉を提供するスタイル。いずれにしても家庭ではなかなか真似できない非日常感と価格のバランスが秀逸な店こそが、確かな人気を集めているのです。
◆ポイント③:部位選択や味変……いろいろな食べ方ができる
「また行くぞ!」という決定打に欠かせないのが、豊かな食体験ができるかどうかということ。すきはなでは、こだわり卵として「十六代真っ赤卵」という青森県産のブランド卵が提供されています。鮮やかな黄身色と甘味のあるまろやかなコクが特徴で、すぐに違いを実感できました。このおいしい卵を最後まで楽しめるように卵かけごはんを勧められ、満足度を底上げしてくれることは間違いありません。
しかしながら、ある程度リーズナブルなレストランに期待されているのは、想定を超えるような食べ方や体験。牛角では牛カルビにガーリックとバターをつけて食べる「ガリバタ中落ちカルビ」や、チーズフォンデュのような「チーズチキンバジル」といった斬新な提案が好評で、これは“伝統的な良いものだけを作り続けていれば大丈夫”という時代ではなくなっていることの証でしょう。つまり求められているのはひと工夫ではなく、その先の楽しいアイデア。
また同じ肉料理で比べた場合、部位の違いによって味を楽しみやすいのは、焼肉やステーキ。ですから、むしろすき焼きで新しい提案ができるのであれば大ホームランになる可能性があります。
=====
さあ、みなさんはどんな肉レストランに通いたいですか? 考えるきっかけにしていただければ幸いです。
<TEXT/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12。