競馬における最強世代と言えば、どの世代を思い浮かべるでしょうか?
古くは1973年生まれの「トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス」世代や、1995年生まれの「エルコンドルパサー、スペシャルウィーク、グラスワンダー、セイウンスカイ」世代。
それとも1998年生まれの「アグネスタキオン、ジャングルポケット、マンハッタンカフェ、クロフネ」世代でしょうか。また、最近の競馬ファンだと2019年生まれの「イクイノックス、ドウデュース」世代を挙げる方も多いかもしれません。
そんな過去の最強世代に勝るとも劣らないのが、2021年生まれの現4歳世代です。
フォーエバーヤングやレガレイラなど、昨年も話題を振りまいた、この世代の強さを今回は数字で解説したいと思います。
◆歴史的なタイムを記録した牡馬クラシック路線
まずは牡馬ですが、昨年のクラシック路線は皐月賞と日本ダービーで歴史的なタイムが記録されました。
1戦目の皐月賞はメイショウタバルが暴走気味に飛ばし、前半5ハロン57.5秒の超ハイペース。好位で進めたジャスティンミラノが直線で抜け出して勝利すると勝ちタイムの1分57秒1は当時のJRAレコードとなりました。これはわかりやすく歴史にその名を刻んだ一戦と言えるでしょう。
2戦目の日本ダービーは皐月賞で逃げたメイショウタバルが出走取消により、逃げ馬が不在に。その影響が強くレースはスローペースで進み、内から抜け出したダノンデサイルが9番人気の低評価を覆し勝利を果たしました。
一見するとスローペースに恵まれた激走に思いますが、このレースは上がり5ハロンが優秀。上がり5ハロン56.8秒は東京競馬場芝2400mで歴代最速のタイムだったのです。
このように、皐月賞と日本ダービーは歴史に残るハイレベル戦。実際にこの2レースを経験していたレガレイラが有馬記念を制し、日本ダービー馬ダノンデサイルも有馬記念3着と活躍しました。また、これらのレースで上位争いをしたジャンタルマンタルやアーバンシック、シンエンペラーなどもその後GⅠで好走しています。
◆過去の名牝と並びうるタイムを記録した牝馬クラシック路線
牡馬だけでなく、牝馬もレベルが高かったのが4歳世代の特徴。というより、この世代は当初は牝馬路線の方がハイレベルと言われていました。
2歳時の阪神JFで記録した1分32秒6はレースレコード。レシステンシアやソダシ、リバティアイランド、ウオッカといったかつての名牝らをも凌ぐタイムを記録していました。この勢いは3歳になっても続き、桜花賞でも1分32秒2を記録。ソダシ、リバティアイランドに次ぐ歴代3位のタイムで、あのグランアレグリアを上回っています。
そしてオークスで記録された2分24秒0は歴代6位のタイム。これだけでも価値のある数値ですが、牝馬にとって過酷な2400mで上がり2ハロン22.9秒と、ラストスパートでも速いタイムを記録していました。なお、オークスで上がり2ハロン22.9秒以下となったのは歴代で7件だけしかありません。
そして、2分24秒0以下かつ上がり2ハロン22.9秒以下という2つの条件を満たしたのは、歴代でも昨年と2018年のアーモンドアイしかいないのです。
阪神JFと桜花賞をともに好走したアスコリピチェーノとステレンボッシュ、そしてオークスを制したチェルヴィニアは秋以降も活躍を見せており、レベルが高かったことを証明しています。
◆新時代の扉を開くダート路線
ここまで牡馬、牝馬の芝路線を解説してきましたが、それ以上と言っても過言ではないのが今年の4歳ダート路線です。
この世代から3歳ダート路線が見直され、ジャパンダートクラシックが新設されました。まさにダート新時代となる世代だったのですが、このレースがまさに世界への扉を開く驚愕のレース内容でした。
前走でケンタッキーダービー3着と世界一にあと一歩のところまで迫ったフォーエバーヤングが勝利し、勝ちタイムは2分4秒1を記録。これは砂が変更された2023年10月29日以降の大井競馬場ダート2000mで最速のタイムとなりました。なお、次点が2023年のJBCクラシックで2分5秒1。同レースを勝利したキングズソードは2024年の帝王賞も制していますが、フォーエバーヤングはそれより1秒も速いタイムを記録したのです。
その後、フォーエバーヤングはBCクラシックで3着、東京大賞典1着と活躍。今年こそBCクラシックを制して新時代の扉を開くことに期待しています。また、名古屋大賞典を制したミッキーファイトや東京大賞典3着のラムジェットなど、この世代のダート路線はタレント揃い。国内外で4歳世代の活躍が見られそうです。
◆東京新聞杯に出走のボンドガールも世代トップの素質
さて、ここまで4歳世代の強さをタイム面から解説してきました。今年はこの世代が牡馬、牝馬、ダートと全ての路線で活躍してくれると期待しています。
そして、その1頭として注目しているのが今週の東京新聞杯に出走するボンドガール。
新馬戦は上がり2ハロン22.1秒のトップスピード勝負で前が有利な展開でしたが、これを差し切りました。この時の2着馬が牝馬路線で解説したチェルヴィニアだったのです。
怪我や適性より長い中距離を使われていた事で新馬以降は勝ちきれていませんが、ようやく適距離であるマイルへ参戦。最強世代を担う一頭として、ここは注目の一戦です。
文/安井涼太
【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。
古くは1973年生まれの「トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス」世代や、1995年生まれの「エルコンドルパサー、スペシャルウィーク、グラスワンダー、セイウンスカイ」世代。
それとも1998年生まれの「アグネスタキオン、ジャングルポケット、マンハッタンカフェ、クロフネ」世代でしょうか。また、最近の競馬ファンだと2019年生まれの「イクイノックス、ドウデュース」世代を挙げる方も多いかもしれません。
そんな過去の最強世代に勝るとも劣らないのが、2021年生まれの現4歳世代です。
フォーエバーヤングやレガレイラなど、昨年も話題を振りまいた、この世代の強さを今回は数字で解説したいと思います。
◆歴史的なタイムを記録した牡馬クラシック路線
まずは牡馬ですが、昨年のクラシック路線は皐月賞と日本ダービーで歴史的なタイムが記録されました。
1戦目の皐月賞はメイショウタバルが暴走気味に飛ばし、前半5ハロン57.5秒の超ハイペース。好位で進めたジャスティンミラノが直線で抜け出して勝利すると勝ちタイムの1分57秒1は当時のJRAレコードとなりました。これはわかりやすく歴史にその名を刻んだ一戦と言えるでしょう。
2戦目の日本ダービーは皐月賞で逃げたメイショウタバルが出走取消により、逃げ馬が不在に。その影響が強くレースはスローペースで進み、内から抜け出したダノンデサイルが9番人気の低評価を覆し勝利を果たしました。
一見するとスローペースに恵まれた激走に思いますが、このレースは上がり5ハロンが優秀。上がり5ハロン56.8秒は東京競馬場芝2400mで歴代最速のタイムだったのです。
このように、皐月賞と日本ダービーは歴史に残るハイレベル戦。実際にこの2レースを経験していたレガレイラが有馬記念を制し、日本ダービー馬ダノンデサイルも有馬記念3着と活躍しました。また、これらのレースで上位争いをしたジャンタルマンタルやアーバンシック、シンエンペラーなどもその後GⅠで好走しています。
◆過去の名牝と並びうるタイムを記録した牝馬クラシック路線
牡馬だけでなく、牝馬もレベルが高かったのが4歳世代の特徴。というより、この世代は当初は牝馬路線の方がハイレベルと言われていました。
2歳時の阪神JFで記録した1分32秒6はレースレコード。レシステンシアやソダシ、リバティアイランド、ウオッカといったかつての名牝らをも凌ぐタイムを記録していました。この勢いは3歳になっても続き、桜花賞でも1分32秒2を記録。ソダシ、リバティアイランドに次ぐ歴代3位のタイムで、あのグランアレグリアを上回っています。
そしてオークスで記録された2分24秒0は歴代6位のタイム。これだけでも価値のある数値ですが、牝馬にとって過酷な2400mで上がり2ハロン22.9秒と、ラストスパートでも速いタイムを記録していました。なお、オークスで上がり2ハロン22.9秒以下となったのは歴代で7件だけしかありません。
そして、2分24秒0以下かつ上がり2ハロン22.9秒以下という2つの条件を満たしたのは、歴代でも昨年と2018年のアーモンドアイしかいないのです。
阪神JFと桜花賞をともに好走したアスコリピチェーノとステレンボッシュ、そしてオークスを制したチェルヴィニアは秋以降も活躍を見せており、レベルが高かったことを証明しています。
◆新時代の扉を開くダート路線
ここまで牡馬、牝馬の芝路線を解説してきましたが、それ以上と言っても過言ではないのが今年の4歳ダート路線です。
この世代から3歳ダート路線が見直され、ジャパンダートクラシックが新設されました。まさにダート新時代となる世代だったのですが、このレースがまさに世界への扉を開く驚愕のレース内容でした。
前走でケンタッキーダービー3着と世界一にあと一歩のところまで迫ったフォーエバーヤングが勝利し、勝ちタイムは2分4秒1を記録。これは砂が変更された2023年10月29日以降の大井競馬場ダート2000mで最速のタイムとなりました。なお、次点が2023年のJBCクラシックで2分5秒1。同レースを勝利したキングズソードは2024年の帝王賞も制していますが、フォーエバーヤングはそれより1秒も速いタイムを記録したのです。
その後、フォーエバーヤングはBCクラシックで3着、東京大賞典1着と活躍。今年こそBCクラシックを制して新時代の扉を開くことに期待しています。また、名古屋大賞典を制したミッキーファイトや東京大賞典3着のラムジェットなど、この世代のダート路線はタレント揃い。国内外で4歳世代の活躍が見られそうです。
◆東京新聞杯に出走のボンドガールも世代トップの素質
さて、ここまで4歳世代の強さをタイム面から解説してきました。今年はこの世代が牡馬、牝馬、ダートと全ての路線で活躍してくれると期待しています。
そして、その1頭として注目しているのが今週の東京新聞杯に出走するボンドガール。
新馬戦は上がり2ハロン22.1秒のトップスピード勝負で前が有利な展開でしたが、これを差し切りました。この時の2着馬が牝馬路線で解説したチェルヴィニアだったのです。
怪我や適性より長い中距離を使われていた事で新馬以降は勝ちきれていませんが、ようやく適距離であるマイルへ参戦。最強世代を担う一頭として、ここは注目の一戦です。
文/安井涼太
【安井涼太】
各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。