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家賃4万円のシェアハウスに、“住み込み管理人”として入居してみたら…「引っ越し当日に期待が崩れ去った」ワケ

日刊SPA! 2025年2月9日 15時54分

東京の上野でスナックを営む大谷麻稀です。会社員を辞め、未経験の水商売で独立してから早2年。日本の一大飲み屋街で昼も夜も様々な人間模様を見てきた私が、今夜のお酒がちょっぴり美味しくなるコラムをお届けします。
国際交流シェアハウス。皆さんはどんなイメージを持つでしょうか? 清掃が行き届いたリビング、英語でコミュニケーションを交わす姿や、週末に外国籍の方が母国の料理を振る舞う光景を想像するかもしれません。

もちろん、そのような明るい雰囲気のシェアハウスも存在するでしょう。しかし、現実には想定外の問題に巻き込まれることもあります。

◆魅力的な条件にそそられて、シェアハウスの管理人に

私はかつて、国際交流を謳うシェアハウスの管理人をしていました。TOEICで高スコアを取得した直後、「英語力が活かせる」と記載された求人広告を見つけ応募。その2時間後にはオンライン面接を受け、即採用されました。

採用条件は、約20部屋ある家の管理業務を行うことで(月8時間想定)、家賃4万円から1.5万円割引されるというもの。つまり、住み込みのバイトですが、月額2.5万円で職場から10分圏内の場所に住めるのは魅力的。内見もせずに新生活を楽しみにしていました。

しかし、引っ越し当日に私の期待は崩れ去ります。

◆絵に描いたようなゴミ屋敷っぷりに戦慄

玄関はほこりまみれで、なおかつ解体されていない段ボールが山積みに……。その奥にある私に割り当てられた部屋は、ベッドフレームが壊れた状態。さらにベッドの下には、数日前まで住んでいた前任マネージャーのものだと思われる私物のゴミがどっさり放置されていました。なかには職務履歴書など、個人情報が書いてある書類もぐちゃぐちゃになって捨てられている状態。くわえて、ベッドに隣接するベランダには雑草が生い茂り、なぜかぶら下がり健康器も放置されています。

そうです。この家は、歴代のハウスマネージャーたちの怠慢と、なるべく家賃を抑えて暮らしたい人たちによって構築されたゴミ屋敷だったのです。

仮にもマネージャーの部屋ですらこのありさまですから、共有スペースなんてもっと悲惨。キッチンにはコバエが舞っていますし、シャワールームに関しては単にカビまみれなだけにとどまりません。中途半端に中身の残ったシャンプーやボディソープが何十個もそのままになっています。挙句の果てにフローリングは、歴代の住人たちの皮脂と油汚れによってベトベト。「国際交流シェアハウス」という楽しげな響きからは想像できない地獄絵図でした。

とはいったものの、私は前の家も解約してしまい、帰るところもありません。ゆえに即日で退職するわけにもいかず、徹底的に掃除することを決意したのです。

◆なんとか人間が住めるレベルに持っていった

てはじめに、シミやカビだらけで見るに耐えないマットレスを粗大ゴミに出し、汚いトイレのスリッパやバスマットも処分。テフロンが剥がれ切って油まみれのフライパンやヤカン、カビで真っ黒になったお風呂の椅子に至るまで全て新調してやりました。

当然ながら、空室の部屋だって普通の人なら内見した段階でドン引きして逃げ出す惨状。本来苦手ながらに掃除をして、なんとか人間が住めるレベルに持っていったのです。

しかも、シェアハウスのオーナーは「リニューアルしたて♪当社はシェアハウスの“マリオットグループ”です」と、誇大広告にもほどがある謳い文句をするから、内見者に私がクレームを入れられることになるのだけれど……(ゴミ屋敷がマリオットになるはずない!)。

◆南アジア出身の20代女性が家賃を滞納したすえに…

その後も、「たった月1.5万円の家賃が減額されるだけじゃ到底割に合わない」と嘆きたくなるくらい、色んな事件が起き、その解決を強いられたわけです。

具体的な例を挙げましょう。国際交流と謳うには、ほど遠いけど一応南アジア出身の20代女性が2人住んでいました。ですが、その2人は家賃を払っていないというのに、一向に働こうとせず、1日中家でごろごろ。家賃の滞納が3ヶ月を超え、取り立てても「薄情な日本人」と言わんばかりに、無視という無言の非難を浴びせてくる始末……。そしてある日、2人して滞納したまま蒸発しました。それも部屋の鍵を閉めた状態で……(当然、マスターキーなんてものは装備されておらず)。工具を使って扉を開けると、案の定ゴミ屋敷。ほかの入居者が掃除を手伝ってくれたのがせめてもの救いでした。

20部屋ほどある家でも、外国籍の人は彼女たちだけ。「国際交流シェアハウス」にどんな日本人が住んでいるのかというと……。残念なことに、国際交流に積極的な人は一人もいませんでした。入居時は身分証の提出すらなく、4万円さえ振り込めば屋根ある家が与えられるという、無法地帯だったのです。

入居者の全員が全員、貧困者というわけではありませんが、この環境だと、ワケアリな人が増えるのも理の当然。

ある日、50代の男性が入居してきました。朗らかな笑顔でニコニコして、感じは悪くない。ですが、数日後に、入居者複数人からクレームが……。彼が、夜中の3時に部屋のドアを叩いて起こしてくるというのです。緊急事態かと思ってドアを開けると、そこから新興宗教の勧誘をしてくると……。信仰の自由はあれど、迷惑行為とみなし、1ヶ月で退去命令を出しました。

◆「5年以上住み続けていた」60歳近い男性の狂気

また、シェアハウスだからといって、みながコミュニケーションを取りたがっているとは限りません。いや、むしろ、私が暮らしていた家は、8割の人が廊下で会っても挨拶の一つもしない人ばかり……。

顕著だったのは、5年以上住み続けていた60歳近い男性。入居歴は最長でも、ほぼ誰も会話したことがありませんでした。常に全身白い服を身に纏い、頭も丸めていてまるで僧侶のような見た目。その得体の知れない人物の部屋のそばのゴミ箱には、毎朝10本ほどのストロング缶(チューハイ)の空き缶が。恐ろしいことに、気分が爆発的に高揚したときなのか、1ヶ月に1回ほどのペースで、夜中に軍歌を大音量で流して歌い始めることも……。

私が経験した「国際交流シェアハウス」のハウスマネージャーは、労働力に全く見合わない単なる清掃員でした。固定費を抑えるには家賃を下げるのが一番の得策ですが、内見には必ず行くことをおすすめしたいと思います。

<TEXT/大谷麻稀(まきぱん)>

【大谷麻稀(まきぱん)】
上野にてスナックを経営する28歳。大好きなお酒にコミットするべく鉄道会社を退職し、ほぼ未経験の世界へ転身。TOEIC910取得。趣味は海外一人旅。

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