阪神は交流戦全日程終了から一夜明けた19日、兵庫県西宮市の甲子園球場で全体練習を行った。岡田彰布監督(66)が森下翔太外野手(23)に対して1時間に及ぶ超異例の直接打撃指導を実施。21日のDeNA戦(甲子園)で再開するリーグ戦だけでなく、将来性を見込むからこその“愛のメス”で、打撃フォーム改造を求めた。
岡田監督が動いた。打撃練習が始まると、三塁ベンチ前に歩を進め、そこに森下を呼んだ。身ぶり手ぶりを交えながら熱弁をふるい、40分かけてスイング理論を伝えた。その後のティー打撃では、5球、目の前で実演して見せた。最後にフリー打撃を間近で見守った。1人だけ完全別メニューとなる約1時間の付きっきりレッスンを終え、「(指導料)300万やな」とジョークを飛ばして、報道陣の前を通りすぎた。
体を前傾させるためにアッパースイングの軌道に見え、バットのヘッドをなるべく返さずに打つ“メジャー式”の森下のスイングを「勘違いをしとる」と一刀両断。上から振り下ろすダウンスイングや、手首を返してヘッドを加速させる練習を、矯正のためにさせた。バットの出遅れを解消するために、体のターンよりも先に手を使う意識も植え付けた。「極端にやらんと直らんよ」。スイングの原理原則を教えた。
「今のスイングじゃ、絶対無理よ。はっきり言うたるけど」
今春キャンプで修正の必要性を感じ、教えるタイミングをうかがっていた。7日からの西武3連戦中に「ちょっと呼んだりして」と指摘したものの、「ちょっと言うたくらいじゃ直らへん」と決意。交流戦後で試合がないこの2日間を見計らって行動に移した。
「俺、グラウンドで指導するのなんか、初めてよ。監督になって。室内はあるけど」
気温30度の日差しのもと、66歳の体にむち打ったのは、期待の表れにほかならない。
「一番伸びしろがあるからな。まだ2年目やんか。今のうちにちゃんとした打ち方を覚えたら、ずっと長いことプレーできるようになるわけやから」
1年目の昨季の打率・237、10本塁打、41打点からすると、今季の・241、6本塁打、29打点は物足りない。連覇のキーマンであり、将来チームを支える素材と見込むからこそ、打撃フォームに“愛のメス”を入れた。(倉世古 洋平)
◇岡田監督過去の熱血指導◇
▽惰性で打て 阪神監督就任直後の秋季倉敷キャンプ初日の03年11月7日。前日6日に「オレから選手に話し掛けることはないと思う」と予告も、いきなり関本に打撃を直接指導。
▽打つときに間がない 11年5月16日、オリックス監督として打撃不振に悩むT―岡田を呼び止めて打撃フォームの修正に着手。身ぶり手ぶりを交えて体重移動などをアドバイスした。
▽ポイントを投手寄りに 22年秋季キャンプ初日の11月2日、大山に7分間のアドバイス。ボールを置くティースタンドの位置を移し、速さが131キロから139キロまで上がった。
▽猫パンチ禁止 11月15日、佐藤輝のグリップ位置の高さに言及し、実演を交えて指導。「猫パンチでな…。そら、ここ(頭)に(グリップが)あったら打ったら猫みたいになるやん(笑い)」。
▽手首を返してスピンを利かせる 23年秋季キャンプの11月12日、小野寺に約1時間指導。「引き出しをいっぱい持っている方がええということやんか」