FW三浦知良(57)が、保有権を持つJ2横浜FCからJFLのアトレチコ鈴鹿に期限付き移籍することが25日に正式発表され、国立競技場での入団会見に臨んだ。ポルトガル2部オリベイレンセから約1年半ぶりの復帰で、背番号は代名詞の「11」に決定。海外では「ピチピチ感」を取り戻したことを明かし、ベテランらしからぬ積極果敢な姿勢で約2年ぶりのゴールを狙う。
前回在籍時から2つ年を重ねても、57歳には若々しい魂が宿る。聖地・国立で会見に臨んだカズは、意外な言葉を口にした。「ベテランらしくないプレーをしたい」。その真意は「ベテランは周りをうまく使うと思ってしまうけど、そうではない。自分で何とかしてゴールを決める」と説明した。
胸の内にはポルトガルで過ごした1年半がある。35歳を過ぎた同僚が、果敢に1対1を仕掛ける姿に刺激を受けた。「FWは常に前向きに向かっていくことが大事だと改めて思った」。監督には忖度(そんたく)なく指導され、時には厳しい言葉も飛んだ。「精神的に凄く若くいられた。そのピチピチ感をピッチで出せたらいい」と笑った。
22年以来の鈴鹿復帰。斉藤浩史オーナーは今年に入りポルトガルを2度も訪問。「戦力として必要」という熱烈なオファーを受けた。「やめる選択というものは僕の中にない。どこでどういうふうにこの情熱を出すか」と決断に時間はかからなかった。
チームには7月2日に合流予定で、同14日のヴェルスパ大分戦から出場可能となる。ポルトガル時代は無得点。22年11月12日FC大阪戦で決めた55歳259日のJFL最年長弾を最後にゴールから遠ざかる。「一試合でも多く、一分でも多く試合に出たい。目の前の試合で1点決めることを意識していきたい」と目標を掲げた。
ガバナンス体制に不備があったクラブは今年1月、「ポイントゲッターズ」から「アトレチコ(運動や競技の意味)」として再出発。カズは「ラテンの言葉なので非常に愛着がある」と歓迎した。来季はプロ40年目を迎えるが「今を精いっぱいやるだけ」。キングの挑戦はまだまだ続く。(坂本 寛人)
【カズと一問一答】
――移籍を決断した時期と理由は?
「5月の帰国時には自分の気持ちは決めていた。出場時間が一番大きい。必ずしもどれだけ出られるかというのは分からないけれど、選択肢の中で一番可能性が高かったのが鈴鹿だった」
――前回加入した時と心境の変化は?
「自分の生活リズムはどこに行っても決まっている。鈴鹿に住んでいても、ポルトガルに住んでいてもやっていることは変わらない」
――昔から親交のある朴康造(パク・カンジョ)新監督の下でプレーする。
「本当はカンジョと言いたいが、監督をつけないといけない立場。監督が19歳、僕が32歳で会ったときからずっと関係は続いている。目指すものは同じなので、お互い刺激しあってやっていきたい」
――27年2月に還暦を迎える。
「3年後の話はできない。やれることならずっとやっていたい」
▼アトレチコ鈴鹿・朴康造監督 カズさんが得点に絡むことでチームが生きる、勝つことを考えている。(J1神戸などでともにプレー)
◇三浦 知良(みうら・かずよし)1967年(昭42)2月26日生まれ、静岡県出身の57歳。静岡学園高を中退してブラジルに渡り、86年に強豪サントスとプロ契約。90年に帰国し、読売クラブ(現東京V)に加入。セリエAジェノア、クロアチア1部ザグレブ、京都、神戸、シドニーFCなどでプレー。05年から横浜FCに在籍。日本代表では国際Aマッチ89試合55得点。1メートル77、72キロ。