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【鷹論】厳しさこそ、期待の裏返し 小久保監督の柳町に対する言葉の変化に注目してほしい

スポニチアネックス 2024年7月2日 5時2分

 1―3で敗れた6月27日のオリックス戦。唯一の得点は8回無死一塁から、代打・柳町の右中間フェンス直撃二塁打で生まれた。初登板からプロ野球タイの22試合連続無失点中だったオリックス・古田島の「新記録」を阻む一打。敗戦の中、一番の光でもあった。

 試合後、現地から音声が送られてきた。記者が小久保監督へその場面を問いかけた。

 ――柳町は集中力があったのでは?

 「集中力というか。(8回は)3人並べて代打(中村晃、柳町、周東)でいこうと決めていた」

 「そうですね」と言うのは簡単だろうが、褒めない。話題は全く違う方向に進み、その後、背番号32の名前が出ることはなかった。6月22日のロッテ戦、0―1の7回に好投の種市から貴重な同点犠飛を放った時も「最低限の仕事」と語るにとどめた。さらにこの3打席目でも差し込まれ気味だったことに「レギュラーで出ている選手は3打席目はきっちり捉えてくる。柳町は見て感じた方がいい」と逆に課題も指摘した。

 今季、小久保監督は実績十分の柳町を開幕1軍から外した。「(2軍では)4割は打つと思っている」とその実力を高く評価する一方、柳田、近藤、周東の外野手は鉄壁。そこを乗り越えなければ定位置はつかめない。5月には指揮官自らタマスタ筑後に出向き、本人に「代打(要員)では呼ばない」と伝えた。とても厳しい言葉だが、高い壁を乗り越えてこいというメッセージのように思えた。

 まだ、ホークス担当だった時、17年に亡くなった小久保監督の母・利子さんに聞いた言葉を思い出す。「小学校1年生で野球を始めたばかりの5月。玄関で靴を履きながら“監督さんは僕ばかりしかる。行きたくない”と柱にしがみつき、泣きじゃくったことがありました」。厳しくされるのは期待の裏返し。多分に想像だが、次世代を担う軸と期待する狙いが、指揮官の胸の奥にある気もする。

 その後、小久保少年は2年生になり「プロ野球選手になるんや」と毎日、練習に励むようになった。そしてご存じの通り、球史に名を刻む。柳町自身2軍でやるべきことをやり遂げ、柳田が離脱した交流戦では打率・351、9打点と首位独走の原動力になった。

 柳町に対する小久保監督の言葉の変化も、優勝争いの行方とともに注目してほしい。 (福浦 健太郎)

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