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【元横綱・稀勢の里コラム】思い出が詰まったドルフィンズアリーナでの名古屋場所

スポニチアネックス 2024年7月3日 7時3分

 7月場所に向け6月末に名古屋入りしました。弟子の大の里が新関脇に昇進。本人も「大事な場所」と話しているように、夏場所の優勝をムダにしないようにしっかりと調整してほしいと思います。

 会場となっているドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)は来年閉館。名古屋場所の舞台となるのは今年が最後となります。新体育館(IGアリーナ)はプロバスケットボールBリーグ、名古屋ドルフィンズのメインアリーナになるそうで、今までの相撲会場とは違った演出も期待できそうです。

 名古屋場所は時期的にも猛暑との闘い。暑さは苦手でないと思っていますが、成績はもうひとつでした。現役生活17年間で負け越しは6回。大関は5年間で2桁勝利は4回でした。ただし、大勝ちもなく三賞もなし。名古屋場所は周囲の「残念だったね」の言葉が一番の思い出です。

 地方場所は年一回。地元ファンも楽しみにされているし、数々のドラマが生まれた舞台がなくなってしまうのは寂しさもあります。愛知県体育館は他の会場と比べても構造が異質でした。支度部屋は広かったのですが、東西を仕切っている板が薄くて、逆サイドの力士の声も聞こえてしまうんです。風呂場も同じ動線。対戦した力士がケンカを始めることもありました。土俵へ向かう花道もほかの3場とは違って長く、東方は外の空気に触れる場所もあったり…。両国、大阪、九州では東西が完全に隔離されていたので、ある意味珍しく、そういう意味では思い出深い会場でした。

 長久手にあった鳴戸部屋の稽古場(大雄院)には出稽古でいろんな力士が集まっていました。特に朝青龍さんは景色が好きだったのか、よく来ていましたね。2004年の場所前でした。前の場所で連勝を止められた北勝力さん(現谷川親方)が来るというので、横綱も追いかけてきました。だが、稽古ということもあって相手がなかなか力を出さない。すると師匠(元横綱・隆の里)が「相手を怒らせてでも力を出させるようにしなさい」と横綱に声をかけたのを覚えています。その後の朝青龍さんの取り口は推して知るべしですが(笑い)、第一人者としての心構えを教わりました。

 愛知県体育館での本場所もあと15日間。私はあまりいい思い出がなかった場所でしたが、大の里がラストを飾ってくれれば言うことはありません。 (元横綱・稀勢の里)

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