【生島ヒロシ オヤジの処方箋】芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ（73）が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は「夏の片頭痛」について、漢方を交えて取り上げます。
皆さん、こんにちは、生島ヒロシです。7月に入りました。梅雨明けはまだですが、スカッとした夏の青空はもうすぐ。ワクワクする季節ですが、片頭痛持ちの方には、実はつらい時季なんだそうです。「夏の片頭痛」について、千葉大・墨田漢方研究所所長で医師の勝野達郎先生に、漢方での対処法も含めて教えていただきましょう。
勝野先生、片頭痛に悩まされている方は多いですね。私の周囲にもずいぶんいますよ。
「日本では約1000万人が片頭痛持ちと考えられています。国民病と言えます」
片頭痛はなぜ起きるんですか？
「顔の感覚を脳に伝える三叉（さんさ）神経が、脳の血管を拡張する“CGRP”というたんぱく質を放出します。その結果、脳の血管が拡張して、頭痛が起こると考えられています。この三叉神経をコントロールしているのが、セロトニンという神経伝達物質。脳内でセロトニンが不足すると、コントロールを外れた三叉神経が興奮状態となり、CGRPを出すのです」
ということは、セロトニンが鍵なんですね。“幸せホルモン”として有名ですね。
「セロトニン不足の大きな原因は心身のストレスです。夏の片頭痛は“気候型”といわれ、湿気、強い日差し、室内外の寒暖差、気圧の変化、寝苦しさからの寝不足などが引き金になると考えられています。これらはいずれも、セロトニン不足をもたらす心身のストレスの要因になり得ます。特に台風が発生し始めるこの時季は、気圧の変化に要注意。私の外来には、南の海上に低気圧が発生すると頭がズキンズキンするという患者さんもいらっしゃいます」
他に片頭痛対策はありますか？
「片頭痛持ちの方、全員ではありませんが、血管を拡張させる作用がある食品の取り過ぎにはご注意ください。また、一時的な血管収縮作用があるチラミンという物質が含まれる発酵・熟成食品も誘因要素といわれます。例えば、血管を拡張させる作用があるポリフェノールたっぷりの赤ワインを、チラミンが豊富なチーズをおつまみにして飲むのは、片頭痛がある方にはあまりお勧めできません。アルコール自体にも血管を拡張させる作用がありますしね。片頭痛は欧米人に多いというデータがありますが、ワインやチーズを好むからかもしれません」
赤ワインを飲んだ翌日の頭のズキンズキンは、二日酔いではなく、片頭痛かもしれないんですね。
勝野先生のご専門、漢方では片頭痛にどのようにアプローチするんですか？
「西洋医学的な頭痛の検査や治療を受けた上で、体質改善をしたいと漢方内科に来る方が多いです。頭痛には片頭痛のほかに、緊張型頭痛、群発頭痛などがありますが、漢方では必ずしも病名にこだわらず、体全体の状態を見て治療します。頭痛では、精神的ストレスが主要因なら柴胡桂枝湯（さいこけいしとう）、気圧の変化でなら五苓散（ごれいさん）、体の冷えがあれば呉茱萸湯（ごしゅゆとう）、胃腸虚弱があれば桂枝人参湯（けいしにんじんとう）が効果的です」
片頭痛持ちの人が試してみたいと思ったら、ドラッグストアなどで買えますか？
「これら4つは、いずれも市販されています。漢方薬は大きな副作用が起こることは少ないのですが、服用の目安は2～3カ月です。2～3カ月飲んで、効果を見てください。ただし、アレルギー体質の方は注意が必要です。柴胡桂枝湯、五苓散、桂枝人参湯にはシナモンの成分が含まれていますので、シナモンアレルギーの方は気を付けてください。不安や疑問点があれば、漢方薬局や漢方内科を訪ねてください。西洋医学の代表的な片頭痛薬、トリプタン系薬剤を使わなくて済むようになった患者さんもいます。夏の片頭痛を漢方で治療するのも手です」
片頭痛は、ひどくなると寝込むほどで、仕事も家事も手に付かなくなるという話も聞きます。今回、セロトニンが一つの鍵となることを学びました。漢方も有効なようです。夏だ！太陽だ！片頭痛だ！？とならないように、しっかりと対策していきましょう。
◇生島 ヒロシ（いくしま・ひろし）1950年（昭25）12月24日生まれ、宮城県出身の73歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」（月～金曜前5・00）は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏との共著「日本経済 本当はどうなってる？」（青春出版社）が販売中。