◇セ・リーグ 阪神1ー2DeNA(2024年7月5日 甲子園)
阪神・佐藤輝の執念が、逆転サヨナラの夢をつないだ。延長10回2死一塁、一塁走者は全力疾走が売りの大山。外野の間を抜けば長駆生還が期待できるシーンで、大振りは封印した。森原の直球をコンパクトに叩き、鮮やかに左前へ。七夕に合わせ「夏のこどもまつり」と銘打ち開催される3連戦、佐藤輝の「ねがいごと」は「サヨナラホームランを打てますように」。実現は6日以降に持ち越しても、好調ぶりは本物だ。
「ツーベースでも1点(入る)、という意識でいった」
4日の広島戦(マツダスタジアム)ではあえなく三振。しかし、この夜は同じ最終回2死の「あと1人」の土壇場で、意地の快音を響かせた。最後は2死一、二塁で島田が一ゴロに倒れて夢散したものの、2回1死の中前打を含め、2本塁打した3日同戦以来、今季12度目の複数安打だ。
「自分の中では(敗戦を)引きずるとかはないので、また寝て、新しい一日を迎えたいと思います」
リセットしてクラブハウスへと引き揚げた主砲には悔恨の打席があった。0―1の6回1死一塁。打ちあぐねていたジャクソンのチェンジアップを、左翼へ角度をつけて打ち上げた。しかし、もうひと伸びが足りずに左飛。聖地を本拠地にするスラッガーの宿命に泣いた。
「いい当たりは打ったんですけどね。そうですね…広いですね、甲子園…」
負け惜しみではない。それだけバットの芯で捉えた手応えが残っていた。ならば心配ご無用。6月21日のリーグ戦再開後に限ると、10試合で計38打数14安打、打率・368とまさに“確変モード”に突入している。常々「状態は悪くない」と語る言葉に一切ウソはない。
首位・広島との3差は不変でも、順位は4位に転落した。一進一退が続く猛虎において、佐藤輝の快調こそ再浮上への好材料。不屈のエイトマンがいる限り、猛虎は何度でもよみがえる。(八木 勇磨)