◇パ・リーグ 楽天4-0ソフトバンク(2024年7月6日 みずほペイペイ)
入団からしばらくは「スター候補生」と言われた。そんな枕ことばが、いつしか「未完の大器」に変わった。楽天・黒川が「8番・二塁」で先発出場し、今季1号を含む2安打3打点。「同学年(古謝)が頑張っていたので打つことができてよかった」と笑った。
貴重な追加点を叩き出したのは1―0の5回1死二塁。大津の直球を捉え、右中間に1号2ランを運んだ。「ギリギリだったけど入ってよかった」と三塁を回る際に右拳を振り上げて笑顔。6回2死一、二塁でも左前適時打でリードを広げた。
相手ベンチからは1月に2年連続で自主トレで師事した中村晃が見つめていた。妥協を許さぬ34歳のトレーニングは「キツかった」と振り返るが、一番に学んだのは「野球に対する姿勢」という。昨季は4月中旬に組まれていたソフトバンク戦の直前に2軍落ち。グラウンドでの再会はかなわなかった。「去年は会えなかったから今年はしっかりやれよ」と声を掛けられ「福岡で活躍できるようにします」と宣言。見事に約束を果たした。
智弁和歌山では1年夏から5季連続で甲子園に出場した。将来を嘱望され、19年ドラフト2位で入団も2年目の34試合出場が最多。殻を破れずにいたが、高卒5年目で「大卒の同学年が入ってくる。負けたくない」と尻に火が付いた。事あるごとに期待の選手に名を挙げていた今江監督は「ホームランは泣きそうになった。ここからが勝負」と期待した。
前回対戦の5月21日に0-21の歴史的大敗を喫した敵地での3連戦。負ければ再び自力Vの可能性が消滅する窮地で2連勝を決めて3位浮上。まだパ・リーグの灯は消さない。(花里 雄太)