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桐朋の秀才二刀流・森井 初戦敗退も日米14球団スカウトに能力の高さ示す

スポニチアネックス 2024年7月8日 5時1分

 ◇第106回全国高校野球選手権西東京大会2回戦 桐朋2―9都富士森(2024年7月7日 府中市民)

 日米が注目する二刀流が初戦で散った。桐朋(西東京)の森井翔太郎内野手(3年)は7日、都富士森との2回戦に「3番・遊撃」で出場し、3打数無安打。投げては2番手で4回2/3を投げ、5安打1失点だった。7回コールド負けを喫したが、視察した日米計14球団のスカウトには潜在能力の高さを示した。今後は日本のプロ野球か米国への大学進学に絞り、進路を決断する。

 守っていた遊撃の位置でしゃがみ込むと、自然と涙があふれた。最速153キロ、45本塁打を誇るプロ注目の二刀流として都富士森との初戦を迎えた森井だったが、7回コールドで敗戦。わずか2時間7分で最後の夏を終えると、現実を受け止めきれないようにユニホームで顔を覆った。

 「準備が後手後手に回ったことが敗因。最後は終わったなと…。2年半のいろいろなことが走馬灯のように頭を巡りました」

 思わぬ展開だった。1点を先制した初回に5点を失い、なおも1死一、二塁のピンチで遊撃から急きょマウンドに向かった。しかし、連打を浴びて流れを変えられない。1―7の2回は2死満塁で打席へ。相手の暴投で1点を返したものの、中飛に倒れた。いきなりの劣勢で力が入り、「やっぱり力みというか、最後まで修正できなかったことが反省です」と唇をかんだ。

 悔しい結果に終わったが、ネット裏に詰めかけた国内11球団、ドジャースなどメジャー3球団、総勢42人のスカウトには潜在能力の高さを見せつけた。直球の最速はスカウトのスピードガンで146キロを計測。打撃では全3打席で中飛に倒れたものの、低反発の金属バットとは思えないほど高々と舞い上がり、滞空時間は全て6秒前後だった。打線低迷で最下位に沈む西武は異例の11人態勢で視察し、潮崎哲也スカウトディレクターは「今日は力みがあったかもしれないが、投げても打っても凄い。評価は変わらない」と絶賛した。

 森井は注目の進路について「五分五分です。こんなに早く終わるとは思っていなかったのでゆっくり考えたい」とプロ志望届を提出するか、米国の大学進学を選択肢として熟考していく。ただし、ゴールは決まっている。「メジャーリーガーになりたいので、野球が上達できる環境を探していきたい。そしてチャンスがあるなら、上(プロ)の世界でも(投打の)両方で勝負したい」。偏差値71を誇る進学校から生まれた二刀流・森井翔太郎。涙はもう消え、堂々とした姿で新たな道への一歩目を踏み出した。 (村井 樹)

 ◇森井 翔太郎(もりい・しょうたろう)2006年(平18)12月15日生まれ、東京都出身の17歳。桐朋小1年から野球を始め、6年時には西武ジュニア入り。桐朋中では軟式野球部に所属。高校では1年夏に背番号15で初めてベンチ入りした。憧れの選手はレンジャーズ・デグロム。50メートル走6秒1、遠投110メートル。1メートル83、86キロ。右投げ左打ち。

 【スカウトの声】

 ▼ヤクルト・小川淳司GM 身体能力が高くて持っているものは凄い。まだまだ未完成だが、肩も強いし、バットも強く振れる。

 ▼ソフトバンク・宮田善久スカウト 課題もあるが、打撃面ではいいものを持っていて評価している。

 ▼楽天・部坂俊之スカウト 昨年、オリックスに1位指名された横山聖のようなタイプ。バネもあってポテンシャルは高い。

 ≪二人三脚で歩む母「自分の選んだ道を信じて進んでほしい」≫まさに母・純子さん(48)と親子二人三脚で夢を追ってきた。高校から本格的に投手を始めながら、最速153キロを誇る理由を「股関節とか肩甲骨の柔らかさのおかげです」と明かした森井。その礎をつくったのが、母とのヨガだった。

 中学時代、息子の体つきを見て「アスリートっぽくないというか、硬さを感じた」と純子さん。独学でヨガを学んでインストラクターの資格を取得すると、中3から毎日のように2人でヨガをすることが日課となった。

 もう一つ、2人で続けてきたのが交換ノートだ。純子さんの「言語化する力を養ってほしかった」との思いもあり、始めたのは中学1年から。日々の練習後に感じたことを森井が記し、翌日に母が返事を書く。野球のことから私生活の悩みなどを記し続けたノートは今では7冊もたまった。

 日本だけでなくメジャーからも熱視線を送られる存在となった息子を「自分の選んだ道を信じて進んでほしい」と球場で見守った母。大好きな家族との挑戦はこれからも続いていく。(アマチュア野球担当・村井 樹)

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