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【内田雅也の追球】悩めるスラッガーに求められる姿勢 好球必打が高まれば、「佐藤輝ボール」も出てくる

スポニチアネックス 2024年7月10日 8時1分

 ◇セ・リーグ 阪神2ー1ヤクルト(2024年7月9日 甲子園)

 劇的な逆転サヨナラ勝利は若い野口恭佑の四球が足場だった。1死から代打で出て、初球から打ちに出てファウル。以後は冷静に見極めた。

 監督・岡田彰布は「結局、四球が絡んでるんよ。点入る時は」と言った。「だから、ちゃんとボール振らんで選んでいったらいい結果出るんよ」。持論である。

 このストライク・ボールの見極めについて、勝ったからこそ反省できる場面があった。

 1点を先制された直後の4回裏、無死一塁で打者・佐藤輝明だった。フルカウントとなり、一塁走者・大山悠輔スタートのランエンドヒットで、外角速球を見逃し三振に倒れた。走者も二塁憤死で併殺、好機は去った。

 ボールに見えたのだろう。確かに際どい球だった。だが、走者スタートの局面では打撃ゾーンを広げて待つべきだろう。

 岡田も「審判がストライク言うたらストライクなんよ」と言った。「臭い球はファウルで逃げるなり何なりせんとな」

 さらに佐藤輝の選球眼について、こんな風に話した。「普段からボール球ばっかり振ってるから、ストライクと言われるんよ。絶対ボール球は振りません、という打者になれば、ボールやろう。審判も人間なんやから。それが王ボール、長嶋ボールやんか」

 かつて巨人のONコンビ、王貞治、長嶋茂雄が見送れば、球審はボールと判定した。岡田は少年時代から阪神の有力後援者だった父親に連れられ、甲子園球場で「王ボール」「長嶋ボール」を目の当たりにしていた。

 悪球を見極め、好球必打が高まれば「佐藤輝ボール」も出てくる。打てる打てない以前に、目指すべき姿勢ではないか。

 また、直前の4回表、同じ無死一塁で村上宗隆は2ボール―2ストライクと追い込まれながら、変化球を一、二塁間に転がした。二ゴロで走者を二塁に進めたのだった。これが2死後の得点(阪神とすれば失点)につながっていた。

 村上と佐藤輝。ともにセ・リーグを代表する左のスラッガーである。ただ打者の真価は、本塁打など快打だけでなく、凡打でもチームに貢献できるか否かにかかっている。これも結果ではなく姿勢ではないだろうか。

 この夜4度の無死一塁で次打者が進塁させたのは8回裏だけだった。岡田は「安打は出始めた。あとはつなぎやな」とみていた。 =敬称略=

 (編集委員)

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