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金足農 吉田輝星の弟・大輝、昨夏王者・明桜斬り!延長10回124球熱投11K

スポニチアネックス 2024年7月11日 5時3分

 ◇第106回全国高校野球選手権秋田大会2回戦 金足農3-2ノースアジア大明桜(2024年7月10日 さきがけ八橋)

 第106回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会は10日、21大会で151試合(継続試合を含む)が行われた。秋田ではノーシードの金足農の2年生エース・吉田大輝投手が第1シードのノースアジア大明桜を相手に延長10回を投げ抜き、5安打2失点、11奪三振で初戦を突破。チームOBで18年夏の甲子園で準優勝した兄のオリックス・輝星投手(23)のように、再び「金足農旋風」を巻き起こす。

 絶対に抑える。歴史をつくった兄の背中は、まだまだ先だ。1点リードの延長10回2死二、三塁。外角直球で11個目の三振を空振りで奪った吉田はド派手にガッツポーズを決めた。マウンドに集まった仲間と喜びを分かち合う。同校の伝統でもある体を反らしながらの校歌も全力で歌った。

 「リードして最終回を迎えたらやろうと。球場も味方につけたかったですしね」

 勝負どころの嗅覚も兄譲りだ。1点を勝ち越して迎えた延長10回。投球練習を終えた吉田は中堅の高橋佳佑主将(3年)へ向け、刀を抜く「侍ポーズ」を行った。18年夏に甲子園で準優勝を遂げた兄・輝星の代名詞ともいえるポーズを入学後初披露。心身でギアを上げた。無死一、二塁からのタイブレークでしつこく二塁へのけん制を繰り返してリードを鈍らせ、打者には高めに直球を続けてスリーバント失敗を誘発。1点差を守り「高めを狙ったのは作戦通り。最後は死に物狂いでした」と雨も降る中での124球に胸を張った。

 昨夏王者で第1シードのノースアジア大明桜は特別な存在だ。兄がエースだった18年の秋田大会決勝の相手。7回は2点差を追い付かれ、なお2死二塁とピンチが続いたが「エースとして流れを取り戻したかった」とここから圧巻の5者連続空振り三振に斬った。6年前は応援席で声をからした少年が兄と同じ背番号1をつけ10回完投。当時から指揮を執る中泉一豊監督は「本当によく投げた」と称えた。

 吉田は大会前に兄から「頑張ってこい」とメッセージが届いたことも明かし「練習の成果は出せました」と照れ笑い。ノーシードから全国の頂点を狙うため「挑戦者という気持ちを忘れたくない」と帽子には「夢」と「恩返し」に加え「天下」と記した。兄に憧れて入学した金足農。再び全国に旋風を起こし、兄に少しでも近づく。(村井 樹)

 ▽18年夏の金足農旋風 秋田大会の初戦(2回戦)から甲子園決勝までの全11試合を交代なしの同じ9人で戦った。エース・吉田は秋田大会全試合完投で、甲子園も1回戦の鹿児島実戦から準決勝の日大三(西東京)戦まで5試合連続完投で県勢103年ぶりの決勝進出。根尾(現中日)、藤原(現ロッテ)らを擁する大阪桐蔭との決勝は12安打12失点で5回、132球で降板し2―13で敗戦も6試合、計881球の熱投で感動を届けた。

 ≪父・正樹さん 7回の2失点「気が緩んだ」≫チームOBで三塁側スタンドから声援を送った父・正樹さん(48)は「ヒヤヒヤしたけどよく勝った。今年のチームは甲子園が狙える。ぜひ勝ち上がってほしい」とねぎらった。自身も投手として活躍し、92、93年は秋田大会準優勝に貢献。先輩として「7回の2失点は気が緩んだように見えた。そこを、帰ってから反省させたいですね」と厳しい言葉も忘れなかった。

 ≪フォームだけでなく似ているクレバーな精神力≫18年夏、記者は甲子園2回戦の大垣日大戦前に金足農のエースだった吉田を取材した。最初の質問は「次はどんな投球がしたい?」。心の中で「完封とかチームを勝たせたいと返ってくるだろう」と予想したが違った。「完封を狙ったらへばる。3点は取られていい。取られ方に注意したい」。結果、6―3で勝利。吉田は一度もリードを許さなかった。

 6年後、弟・大輝を取材し、当時の兄とのやりとりが頭をよぎった。同点とされ、なお7回2死二塁を空振り三振で脱した場面。劣勢の空気が漂っていたように思えたが「振り出しになっただけで、リードされなければ勝てる」と振り返った。投球フォームやしぐさだけでなく、クレバーな精神力も似ている。(アマチュア野球担当 村井 樹)

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