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日本ハム・栗山CBO カミキリムシたちの異変が訴えてくる自然の危機

スポニチアネックス 2024年7月12日 7時3分

 侍ジャパン前監督で日本ハムの栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=63)による今回の連載「自然からのたより」は、今夏も北海道栗山町の栗の樹ファームに現れたカミキリムシたちの教えについて。真夏の到来を伝えてくれる虫たちに、近年感じる異変がある。目にする虫の種類、個体数の明らかな減少だ。変わりゆく自然の姿は、地球は誰のものかを訴えかけてくる。

 緑が一層深まった栗の樹ファームに、今年も夏の到来を告げる来訪者が現れた。真っ黒な体に立派なヒゲを蓄えて、手に取ると「キュッキュッ」と音を出す。「やあ、今年は君が初めてだよ」。ノコギリカミキリと交わす言葉は、いつもの夏と少しも変わらない。

 ただ、やってくる虫たちの種類は明らかに減っている。数年前までは、ブルーの体色が美しく、鮮やかなルリボシカミキリも見ることができた。個体数が減っているのか、ここ数年は見かけない。今年も見ることはできないのだろうか。この10年間で相当数の虫たちがいなくなったという話も聞く。生態系にとっての昆虫は大切な存在で、カミキリムシたちの異変が自然界の危機を訴えてくる。

 これは米国先住民の有名な言葉で、世界中で語り継がれている。人々が生きているこの自然環境は、先祖から受け継いだものではない。子孫から借りているものだ、という教え。借りているものだと思えば、壊したままでは返せない。そのままの状態で返さなければいけない。「ものを守る」ということを意識させ、伝えていく素敵な言葉だと思う。

 私が北海道へ来るきっかけの一つとなった名作ドラマ「北の国から」で知られる脚本家の倉本聰さんが主宰する富良野自然塾に、この言葉を刻んだ石碑がある。ゴルフ場跡地を森に返す「自然環境事業」に取り組んでおられ、倉本さんは「森がなければ水をつくれない」とよく言われていた。その教え、その言葉を今、生活していく中で実感している。

 子孫へちゃんと返せるような自然環境を守るには、もう待ったなしだ。これ以上壊されてしまったら、元には戻せない。だから一つのビニール袋を捨てないとか、一人一人が小さなことに取り組んでいくことが必要なのではないか。ルリボシカミキリが、また遊びに来てくれるように。

 ▽ルリボシカミキリ 鮮やかなブルーの体の色が特徴のカミキリムシ。北海道から九州まで各地の山林に広く棲息しているが、西日本では局所的に分布している。和名は体色を連想させる「瑠璃星髪切」。成虫が現れる時期は6~9月で、成虫は越冬しない。森林開発により棲息域が狭くなったことなどが原因で、個体数が減少しているといわれる。

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