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横浜隼人のプロ注目150キロ右腕・沼井伶穏の覚悟 完投勝利後は大好きな母へウイニングボールプレゼント

スポニチアネックス 2024年7月12日 7時3分

 今夏も始まった甲子園を目指す第106回全国高校野球選手権の地方大会。アマチュア野球担当記者にとってはもっとも多忙な時期で、早朝から電車に揺られて全国各地を駆け回っている。

 まだ序盤だが、心を打たれた選手に出会うことができた。最速150キロ右腕で今秋ドラフト候補の横浜隼人・沼井伶穏(れおん)投手(3年)だ。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた沼井。9日の2回戦が今夏初登板初先発となり、10安打を浴びながら3失点完投。試合後の取材で高校生とは思えない、強い覚悟を感じさせられた。

 プロ注目選手であっても現時点では、進路についてほとんどの選手が「まずは夏の大会に集中します」や「終わってから考えます」と答えることが多い。だが、沼井は違った。「高卒でプロに入るために自分の価値とレベルを示す大会にもしたい」。ここまではっきりとした覚悟を口にしたのには理由があった。

 ナイジェリアへは母・愛さんの記憶では2歳に訪れたのが最後だが「僕にとってナイジェリアは第二の母国です」と特別な思いを寄せている。小6の時、テレビで痩せ細ったアフリカの子供たちの姿が流れるユニセフのCMを見ると自然と涙があふれた。母の影響で始めた剣道は都大会でベスト8入りする実力を誇ったが、野球一本で生きていくと決めた瞬間に辞めた。母は「本当は続けてほしかったですけどね」と笑うが、「小学生があんなことを言うなんてね。びっくりしました。思い出しただけで泣けてきます」と12歳だった息子が下した決断を、涙を浮かべながら振り返った。

 看護師でもある母は夜勤で家を空けることもある。それでも、毎日欠かさずLINE(ライン)を続け「反抗期もなかったですし、友達みたいな感じでやりとりしています」と愛さん。完投した2回戦の試合後に沼井は「いつもありがとう。最初のウイニングボールはお母さんにあげたかった」と照れながら手渡した。愛情たっぷりに育った沼井。今夏に懸ける思いが、未来につながることを願った。(記者コラム・村井 樹)

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