◇大相撲名古屋場所4日目 ○翔猿(送り投げ)貴景勝●(2024年7月17日 ドルフィンズアリーナ)
貴景勝は最後の一押しが出ない。
小兵の翔猿を土俵際まで押し込みながら、相手が低い体勢で立て直そうとした時に、一瞬引くような形になってしまった。懐に入られたらまずいと思ったのだろう。しかし、あの場面はがむしゃらにでも前に出ていくべきだった。それをためらったために体勢を崩してしまった。
力が出ないのは胸や首のケガの影響だろう。稽古も十分にできていない印象だ。休場が増え相撲勘がにぶっていることも流れを悪くしている。
体も大きくなりすぎだ。元気な頃よりも増えているのではないか。重くなれば押されにくくなる。突きの重さも出る。だがその半面、動きは悪くなる。取っている時に脇が空きやすくなるのはそのせいだ。脇が空くと相手に中に入られやすくなる。それを防ぐためにも体重を絞った方が良い。
現状のままでは今場所のカド番脱出は苦しい。だが、今場所出てきたということは、首や胸のケガはもう大丈夫だと判断したからだろう。だったら、開き直って取るしかない。負けて元々という気持ちで前に出て、圧力をかける相撲を取るしか突破口は見い出せない。 (元大関・栃東)