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デルマパンゲ(1)プロになる覚悟もらったミルクボーイとの出会い 最後のM―1に懸ける思い

スポニチアネックス 2024年7月22日 13時33分

 マンゲキ(よしもと漫才劇場)を主戦場にするコンビの中でも、屈指の“くせ者”デルマパンゲ。芸歴15年目で、今年が「M―1グランプリ」ラストイヤーとなる。ほとんどフリートークのようなネタをステージで展開して、時間をかけて仕上げていく独特なスタイル。常識にとらわれない漫才で、最後のビッグチャンスを狙う。(取材・構成 江良 真)

◆ネタ帳に象形文字!? 相方・広木も困る迫田の思いつき◆

 ―昨年のM―1準々決勝のネタの「※ひつじ」がすごいおもしろくて、絶対準決勝行くわ、と思ってたら、あれ?みたいな感じで。

 ※ひつじ 羊が一匹、羊が二匹の睡眠を誘う定番フレーズについて、あんな簡単に羊が逃げる柵あかんやん!という迫田の問いかけから始まる漫才

 迫田&広木「ハハハハ」

 迫田「終わってすぐに飲みにいったんですけどね。自分らでも手応えがあって」

 ―そうですよね。おもしろかったのに。

 広木「悲しかったです(笑い)」

 ―デルマパンゲさんのネタは自由奔放で、どうやって作ってるのか、うまく想像がつかないんです。

 迫田「ネタ作るときはボンヤリしたテーマというか、こっちに向かうぞ、みたいな感じで、ダラダラ長いヤツを垂れ流すんです」

 広木「迫田にはこれは言いたいということが何個かあって、舞台で気になることがあったら聞いてきて、と言われて。それを繰り返していい感じになるというか」

 ―そんなネタの作り方はあまり聞かないですね(笑い)。

 迫田「作り上げたものを見せるのがプロという意見もあるとは思うんですが、ぼくらはちょっと違って、お金をもらえるところに行ったら、どんなことでも必死になるじゃないですか。そこで出てくる受け答えとかがリアルだと思うから、あえて決めずに舞台に出て、必死にしゃべってるという感じですね」

 ―(笑い)

 迫田「ボンヤリ決めて出ていって、お互い必死にしゃべったほうが良かったりするんです。でも、カチっと作っていざやってみたら、へ?みたいなんはよくあるんです」

 広木「逆もあって、カチッとしてないから、同じウケたところでも、お互い言い方が違ってるから次にやったら全然ウケないこともあるんです」

 ―漫才というのは難しいんですねえ。ネタは記録とかはされないんですか?

 迫田「一応、ぼくはノートに箇条書きみたいなのをババッと書いてたんですけど、後で見ても何て書いてるかわからん、みたいなのが多いから最近は書かなくなりました」

 広木「こいつが書いたのも渡されても、字がめちゃくちゃ汚いんで読めんから、これ何て書いてんの?とか聞いたら」

 迫田「おれもわからん、みたいな」

 ―(笑い)

 広木「絵で描いてたりもするんですよ。象形文字か!わからんやろ!となって、結局最初から説明してもらうことになるから、もうノートいらんわっていう感じになっていきましたね」

◆“もう、ええわ”で終わらない独特のオチ方◆

 ―舞台前はネタ合わせされるんですか?

 迫田「まあ、意思確認というか、そういうのはありますね。舞台袖とかでこんな感じでいってみん?みたいなことを言い合って。“ひつじ”のネタも、最初はそんな感じでネタ出しをして、持ち時間の倍くらいの10分くらいやって。でも、反応は良かったし、これはいいかもな、という感じでしたね」

 広木「残っていくネタは一発目の緩いときから反応はありますね。反応がないときは残らないですね」

 ―お2人とも北九州地方のご出身で、漫才もいわゆる北九弁を貫かれていますが、そこはこだわっていらっしゃるんでしょうか?

 迫田「全然意識はしてないんです。自分たちが普通にしゃべっている言葉でやってるだけだから」

 ―漫才の終わりが、九州のほうでよく使われる“好かん”で終わるのは印象的です。

 迫田「あれは自分の中でけっこうな発明だとは思ってるんです。どんなタイミングでも使えるんで」

 ―大阪の漫才師さんはだいたい“もう、ええわ”ですよね?

 迫田「“もう、ええわ”やったらキチっとした感じでオチないと出てこないんですけど、“好かん”はこっちの感情でバンと終われるから、めちゃくちゃ楽チンなんですよ」

 広木「失礼な話ですけどね。ぼく、頑張ってあんなに話を聞いて、広げてあげてるのに、最後は“好かん!”言われて」

 ―(笑い)NSCは入ってないんですね。

 広木「そう。インディーズライブとかですね。ライブはかなり行ってました。会社をサボりまくって」

 広木「こいつ、営業職やのに外回りで、そのまま公園で寝てたりしてました」

 迫田「職質もされました」

 ―全然ダメな社員ですね(笑い)

 迫田「ライブは客も2、3人で、おばあちゃんが漫談してたりとか、こんなとこでやっててプロになれるん?と2人で落ち込んでました。そんな時に初めておもろいコンビに出会えたんです。それがミルクボーイさんでした。それを見て、これは片手間でやっててもダメやな、となって仕事を辞めて吉本のオーディションを受けるようになるんです」

 ―どの時点でオーディションに受かるんですか?

 迫田「受け始めてから1年後くらいですね。1次予選みたいなのに受かった時にギャラが発生して、ここから所属になるのでデビューです、と言われました」=(2)に続く

 ◇デルマパンゲ 迫田篤(さこだ・あつし)1985年(昭60)4月14日生まれ。福岡県京都郡苅田町出身の39歳。広木英介(ひろき・えいすけ)1985年(昭60)8月12日生まれ。福岡県北九州市出身の38歳。高校時代に知り合い、大学生のころからアマチュアで活動。NSCに通っていないこともあってか、ネタは独特。20年にオールザッツ漫才で準優勝するなど、爆発力には定評がある。

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