◇大相撲名古屋場所10日目 ○琴桜(上手投げ)大の里●(2024年7月23日 ドルフィンズアリーナ)
いくら大器とはいえ、そう簡単には勝たせてもらえないのが相撲の難しさだ。
5日目から4連勝し、波に乗るかと思われた大の里に急ブレーキがかかった。
琴桜戦。先場所は当たってすぐに右を差し、そのまま一気に走る相撲で勝った。だが、この日は大関の鉄壁の防御を突破できなかった。
琴桜は両手をクロスさせる立ち合いで両脇を固め、そこから突っ張っていった。先場所の反省を生かし、大の里に右を使わせないようによく見て左に回り込んだ。最後は左上手を取って体を開きながら投げを打った。
一方の大の里は大関が左に回り込む際に右が入ったが、差し手が浅く下手も取れなかったため体勢を立て直すことができなった。
今まで何度か指摘しているが、大の里の課題は右を差せない時の左の使い方。下位の力士に対しては、右差し一本でも通用するかもしれないが、上位には難しい。
特に相手が大関となればなおさらだ。右を使いたいのであれば、左もおろそかにしないようにする必要がある。今場所は大関獲りの足場固めの期待もかかるが、まだまだ勉強しなければならないことは少なくない。
もう一つ、気になることもあった。前日、豪ノ山に敗れこの日は「流れを変えたい」と朝稽古を休んだそうだ。それを聞いて驚いた。NHKの解説をされていた芝田山親方(元横綱・大乃国)も「われわれの時代じゃ考えられない」と言われていたが同感だ。どこかケガをしているのであればまだ分かる。しかし気分転換が目的で稽古を休むなんてちょっと想像できない。
今時の若者といえばそれまでかもしれないが、番付が下の者や後輩力士は上の力士をお手本に稽古に励む。上の者は自分の稽古だけではなく、先頭に立って後輩たちの稽古をみてあげる責任もある。上に立つ力士がそういう理由で休んでいたら、下の者もそれで良いのかと安易に考えてしまう。大の里には、もっと自覚を持って行動してもらいたい。
(元大関・栃東)