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高校野球には敗者復活がある 「終わりは始まり」 敗れた仙台育英・須江航監督の言葉

スポニチアネックス 2024年7月23日 21時38分

 ◇第106回全国高校野球 宮城大会決勝 仙台育英5―8聖和学園(2024年7月23日 楽天モバイル)

 昨夏の甲子園で準優勝した仙台育英は5―8で聖和学園に敗れ、大会3連覇を逃した。

 プロ注目の最速151キロ右腕・山口廉王(れお=3年)が、2回2/3を9安打4失点で降板。強力投手陣が序盤から失点を重ねた。22年夏には東北勢初の甲子園優勝に導いた須江航監督は「どの角度から見ても聖和さんが強く、ウチが弱かった。悔しいですけど完敗なので聖和さんには甲子園で頑張ってもらいたいという気持ちです」と潔く振り返った。

 「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」。稀代のプロレスラー・アントニオ猪木が、決戦前に「もし負けることがあると…?」と問われた時に一喝したとされる名言。まさに「燃える闘魂」を象徴する逸話である。

 須江監督は22年夏の甲子園の優勝インタビューで発した「青春って、すごく密なので」が、ユーキャン新語・流行語大賞の選考委員特別賞を受賞した。「名言力」は高校野球界屈指。決してメディア用の姿ではなく、普段の練習指導から言葉は「名言」にあふれている。

 須江監督は毎年、夏の大会を迎える前に「燃える闘魂」とは真逆のアプローチをかける。ナインに贈る言葉は「グッドルーザーであれ」、「終わった時に感情で行動することはやめよう、理性をちゃんと持って勝敗を受け入れ、相手を称え、そこから次のスタートを切ろう」、「覚悟を持って球場に行こう」。負けずに夏を終えるチームは全国で1つ。それだけに仙台育英ナインは理性と知性を保った状態で終幕を迎える準備をする。今夏の終わりは2年連続で出場していた甲子園ではなく、宮城大会決勝だった。

 1年生時に日本一を経験した3年生は、春夏とも甲子園出場を逃した。須江監督は言った。「敗者復活するんです。人生は。だから終わりは始まりなので、今日どう感じて明日からどうするかに目を向けてほしい。やっぱり負けた時に人間の本質が現れるので、聖和学園さんを称えられることに価値がある。負けてグッドルーザーである、ということを体現してくれたことを誇りに思う」。ナインと大会前にかわした約束は果たされていた。

 

 高校野球を引退する3年生部員は燃え尽きてはいけない。トライアル&エラーの日々をその後の人生につなげるために。ルーザーである仙台育英ナインの姿から、高校野球の原点を思い出した。(記者コラム・柳内 遼平)

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