【室井昌也コラム 月に2回は韓情移入】8月2日から4日間、筆者が企画とガイド役を務める「韓国プロ野球観戦ツアー」を行った。2003年のスタート以来、今年で22年目になる。
「韓国野球ファン向けのマニアックなツアー」と思われがちだが、参加者で「常にKBOリーグをチェックしている」という人はわずか。国際大会をきっかけに他国の野球に興味を持った「野球好き」が多くを占める。
今回は日本各地から30~60代の男女計20人が申し込み。初参加とリピーターの割合はほぼ半々だ。好きなNPBのチームや普段の観戦スタイルはバラバラだが、それぞれ「野球」という共通点で会話が自然と弾んでいく。
今回訪れたのは3球場。2010年代に入って完成した昌原(チャンウォン)NCパークと大邱(テグ)サムスンライオンズパーク、そして60年目を迎え今年限りで本拠地球場としての役目を終える、大田(テジョン)のハンファ生命イーグルスパークだ。
NCダイノスの本拠地の昌原は韓国第2の都市・釜山(プサン)の西、約45キロの小都市。現地の言葉に不慣れなツアー参加者の数名は「個人で行くにはちょっと心配な場所。連れて行ってもらえるのは助かる」と話した。2日の試合は延長10回まで行われ、球場を出る頃には午後11時になっていた。
このツアーの特徴は「個人旅行では味わえない体験」ができること。大邱では試合前のダグアウトでサムスンの立花義家打撃コーチ(元西武など)、かつて阪神でクローザーを務めた呉昇桓(オ・スンファン)と写真撮影などを行った。
また試合後にはサムスンの対戦相手、SSGランダーズの鈴木郁洋バッテリーコーチ(元オリックスなど)との交流の時間を設けた。鈴木コーチの日韓球界に関する貴重な話に40代の男性は「楽しすぎて時間を忘れた」と話した。
今季のKBOリーグは過去最高の観客動員数となる見込みだ。内野のステージで応援団長とチアリーダーが指揮を執り、場内のスピーカーから流れるノリのよい選手別応援歌に合わせて若者を中心に盛り上がっている。
また暑い夏の定番行事として「ウォーターフェスティバル」を実施する球場が増えている。内野席の一角にウォーターキャノン(噴水大砲)を複数台設置し、ホームチームのヒットや得点のたびに噴射。そのエリアのファンはびしょ濡れになって盛り上がっていた。離れてみる分には爽やかな水しぶきだが、放水銃の直下は「ゲリラ豪雨」のように水が叩きつける。
昌原でこの光景を目にした40代の女性は「通路やトイレの床が水浸しだけどお構いなし。日本ではありえないかも」と韓国らしい大らかさを実感した。
韓国ではこの先数年、複数の新球場オープンが続く。日本とは違った観戦風景、これまで以上の盛り上がりを見せる隣国の野球に、ツアーに限らず触れてみてはいかがだろうか。