◇第106回全国高校野球選手権大会 第1日 滋賀学園10-6有田工(2024年8月7日 甲子園)
足に自信はない。50メートルは6秒2。チームでは遅い方だ。それでも、滋賀学園の9番・杉本晴基捕手(3年)は、相手が見せたわずかな隙を逃さなかった。
「小さな隙を突いて1本出たときに1点でも多く取れるように意識している」。そう振り返るのは8回、2点を勝ち越し、なお1死二、三塁の場面。二塁走者の杉本は2番・国仲優星(3年)の左前打で左翼手がジャックルするのを見るや一気に本塁を陥れた。
打球が左前に飛んだ時点で三塁コーチャーの清家佑陽(3年)の指示はストップ。だけど、完全にスピードは緩めない。捕球態勢の左翼手を視界に入れながら「(打球を)落としたときにスタート切れるように、常に落とすと思って」三塁を回り、ジャックルした瞬間にトップスピードで本塁へ向かった。
隙を突く走塁。「チーム全体で練習試合からやってきいる。甲子園だからということでなく、チームでやってきたこと」。有田工の7失策をことごとく得点に結びつけ、100周年の甲子園1勝に杉本は胸を張った。