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敵前逃亡、さみしがり屋、ネガティブ思考…元木咲良を金メダリストに導いたレスリングノート

スポニチアネックス 2024年8月11日 4時52分

 ◇パリ五輪第16日 レスリング(2024年8月10日 シャンドマルス・アリーナ)

 女子62キロ級の元木咲良(22=育英大助手)が10日、決勝で21年東京五輪銅メダリストのイリーナ・コリャデンコ(ウクライナ)にテクニカルスペリオリティー勝ちを収め、金メダルを獲得した。シドニー五輪のレスリング代表だった父が立てなかった五輪の表彰台。その一番高い所にたどり着いた。

 衝撃の五輪秒殺デビュー。準決勝の涙、涙の大逆転。山あり谷ありのパリの闘い。前日の試合後は「神様は2回も助けてくれないと思う。明日はしっかり自分の実力を発揮して、しっかり準備して臨みたいと思います」と涙を拭い誓っていた。

 その誓い通り、気迫みなぎる表情でマットに上がった元木。第1ピリオドは0―1の開始2分30秒からタックルを決め、アンクルホールドからローリングで4―1と逆転。第2ピリオドも3点あるリードを守りに行くのではなく攻めた。先にタックルを仕掛け、得点を重ね続けテクニカルスペリオリティー勝ち。決勝という舞台で全てを出し切り勝利を、金メダルをつかみ取った。

 準決勝を振り返った前日のインタビューで「優勝するために、世界一になるために来たのに、ここで負けたらどうしようと思って…。全部はね返されて、本当にどうしようって…本当に怖くて…」と語った元木は、素顔に近いのかもしれない。マットで見せる勇敢な姿とは違った、寂しがり屋で敵前逃亡をした過去も持つ「元木咲良」の素顔とは…。

 ☆生年月日 2002年(平14)2月20日生まれ、埼玉県出身の22歳。埼玉栄高、育英大を経て、今年4月から育英大助手。家族は00年シドニー五輪男子グレコローマンスタイル63キロ級代表の康年さん、母、妹。

 ☆競技歴 おむつが取れたころに父も指導する和光クラブで開始。中学校時代まで目立った成績は残せなかったが、高2だった18年の世界カデ選手権で優勝し、頭角を現す。22年の全日本選抜選手権では59キロ級で初の日本一。同年は世界ジュニア選手権を制し、世界選手権でも3位。その後に五輪階級の62キロ級に上げると、23年世界選手権で2位に入り、パリ五輪代表に内定した。

 ☆敵前逃亡 引っ込み思案の性格で、幼稚園児のころは試合が怖く、マットに上がることもできずに不戦敗したことも。

 ☆あえての進学 大学進学時は複数の大学が候補に挙がる中、「柳川監督がきゃんきゃん言う」(康年さん)ということが決め手になって育英大に進学。元木本人も「キツいところじゃないと勝てない」と厳しい環境を求めた。

 ☆レスリングノート 小学校高学年から父の勧めで付け始め、練習や試合の振り返り、対戦相手の対策や課題などを細かく記す。大学4年間だけで、実に21冊ものノートを消費した。

 ☆さみしがり屋 今年4月で社会人となったため、育英大の寮は3月いっぱいで退寮。しかし根っからのネガティブ思考で、夜1人で部屋にいると不安に押し潰されることから、6月から妹・日陽里とほぼ2人暮らしの体制を整えた。

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