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【内田雅也の追球】「ホットドッグ」でいこう

スポニチアネックス 2024年8月14日 8時1分

 ◇セ・リーグ 阪神8―5巨人(2024年8月13日 東京D)

 阪神が奪った8点には共通点がある。森下翔太の先制2ランに木浪聖也と渡辺諒の満塁一掃二塁打。やぼな書き方だが、それぞれ燃えていた。大リーグ風に言えば「ホットドッグ」だった。

 ホットドッグは野球場で人気の食べ物だが、俗語で「目立ちたがり屋」といった意味で使われる。いわゆる「燃える男」を指している。

 ワールドシリーズなど大一番にめっぽう強かったレジー・ジャクソン(ヤンキースなど)には「ミスター・オクトーバー」(10月男)の愛称がある。「あれだけのホットドッグに塗るマスタードは世界中から集めても足りない」と言われた。

 印象的な一打が多い森下はホットドッグである。加えて、佐藤輝明に代わり、プロ入り初めて4番に座った。「初回に打席が回れば、必ず走者がいる」と勇んでいた。

 木浪は4回表2死満塁で右翼線に走者一掃の二塁打を放った。打率2割前後と苦しむなか、満塁機に限れば、これで今季10打数5安打9打点を誇る。「次につなぐというより、自分で決めてやるという気持ちでいた」。満塁に燃える、強い心が生んだ一打だった。

 渡辺は佐藤輝に代わってサード、そして3番に抜てきされていた。久々のスタメンに緊張をはねのけ、4回表先頭では10球粘って四球をもぎ取り追加点を呼んでいた。

 5―5同点の7回表1死満塁。右投手への交代もあるなか、巨人は左腕・高梨雄平続投できた。右腕への継投なら代打・佐藤輝が準備していた。相手に自身との勝負を選択されて燃えたのは当然だろう。初球を左中間に決勝の3点二塁打した。

 ポイントを前(投手寄り)にして打つフォームは監督・岡田彰布が言う形である。往年の「ミスター・タイガース」藤村富美男の打法でもある。思えば、岡田も藤村もチャンスに強かった。

 「大きな試合では多少やんちゃなやつが頼りになる」とリーグ優勝8度の名将、西本幸雄が語っていた。ホットドッグに期待していた。

 先に書いたジャクソンは実録映画『レジー 伝説の大リーガー』(2023年)で語っていた。「近年はデータ分析が主流で、自分の知識を若手選手に伝えるのが難しくなった。私の知識を次代に伝えたい」。つまり大一番ではデータを超え、強い精神面が必要という経験と知識だ。ホットドッグのあり方が問われている。 =敬称略= (編集委員)

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