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【甲子園】全力で投げなさい 母との約束守り、関東第一・坂井は自責0で終戦 進路は「もう少し考えます」

スポニチアネックス 2024年8月24日 5時1分

 ◇第106回全国高校野球選手権 決勝 関東第一1-2京都国際(2024年8月23日 甲子園)

 どんな時も全力で投げなさい――。延長10回無死満塁、フルカウント。関東第一の最速151キロ右腕・坂井遼(はる=3年)は、迷わず直球を投げ込んだ。147キロは力んで外角低めに外れ、押し出し四球。今大会19イニング目の初失点が決勝点になった。自責点は0だったが、1点届かなかった初優勝。アルプス席へ向かうと我慢していた涙は一気にあふれたが、大好きな母と駆け抜けた夏に悔いはなかった。

 「今の自分の全力を出し切れました。でも、母だったり支えてくれた人に優勝を届けたかった」。出番は予定通り7回からだった。準決勝まで15回2/3を無失点。支えていた直球は最速148キロをマークし、手応えも感じた。だが無死一、二塁から始まる延長10回タイブレークで先頭に左前打を許した後、痛恨の押し出し。交代を告げられ「最後は弱さが出た」と現実を受け止めた。

 母・一恵さん(43)への恩返しの夏だった。家庭の事情で小3から2人暮らし。中学時代は学校をサボるなど迷惑をかけた。投手としては制球が定まらず、相手から「殺人ボール」と心ない言葉が飛んだことも。一時は「やめたい」と漏らしたが、母の言葉が救った。「野球だけは続けなさい。そしてどんな時も全力で投げなさい」。自宅では制球アップにつながればと、ピンポン球をゴミ箱目掛けて投げる練習を母と考案。「全力で投げていない姿は見てほしくなかった」という愛息の姿に、一緒にキャッチボールもした一恵さんは「立派になり、最高の夏でしたね」と涙した。

 95年の帝京以来、東東京勢29年ぶりの頂点は逃したが、決勝まで3失策のみの堅守の中心だった。夢のプロ入りには「志望届を提出するかはもう少し考えます」と話すにとどめたが、U18日本代表にも選出。「甲子園は人生を変えてくれました」。心から楽しんだ255球だった。 (村井 樹)

 ◇坂井 遼(さかい・はる)2006年(平18)5月8日生まれ、千葉県出身の18歳。小5から富里リトルスターズで野球を始め、富里中時代は江戸川南ボーイズに所属した。関東第一では1年秋からベンチ入り。憧れの選手はドジャース・山本。遠投115メートル、50メートル走6秒5。1メートル78、78キロ。右投げ右打ち。

【PVに500人 健闘称える拍手】

 〇…江戸川区の関東第一で行われたパブリックビューイングには、同校サッカー部員ら約500人が集結。試合終了の瞬間、健闘を称える拍手が起きた。先発・畠中が所属した地元の少年野球チーム「松島ファルコンズ」も応援。本間大翔君(江戸川第三松江小6年)は「先輩はいい投球をしてくれたけど9回に点を取れなかったのが痛かった」と悔しそうだった。校内には「準優勝 関東第一高校」の垂れ幕が掲げられた。

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