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髪もヒゲも伸ばしていいが死球を与えた投手は帽子を取るべき 甲子園の文化を忘れないで

スポニチアネックス 2024年8月29日 15時56分

 【君島圭介のスポーツと人間】この夏の甲子園で物議を呼んだ京都国際(京都)の韓国語による校歌だが、関東第一(東東京)の応援団が示した“フェアプレー”が、ひとつの答えを生み出した。

 勝者を称える校歌演奏に合わせて敗れた側が贈った手拍子は全力で戦ってくれた相手に対するリスペクトに満ちていた。

 この校歌への手拍子は準々決勝で敗れた大社(島根)応援団が勝った神村学園(鹿児島)に贈ったのがきっかけで、準決勝では敗れた神村学園が勝者の関東第一に贈っている。

 いわば「フェアプレーの連鎖」。校歌問題がネットでも話題にされて複雑な心境だったであろう京都国際ナインに「勝者は胸を張って!」というエールであり、京都国際ナインも関東第一応援席に向かってお辞儀するという特別な行動で感謝を伝えた。

 長髪の球児が増えても相手に対するリスペクトはこれまで以上に目立った。足がつってプレーを中断させてしまった選手が、再開のときに「待たせてすみません」と相手ベンチに深く頭を下げる姿はよく見られた。

 チャンスで捕邪飛を打ち上げてしまった打者が悔しさを押し殺し、相手のキャッチャーマスクを拾って泥を拭ってから渡す姿に勝敗を超えた人間性も見た。

 際どい内角を攻めたボールが打者に当たったとき、真っ先に帽子を取って打者に謝罪する姿は潔いものだ。帽子を取った投手の頭が、以前は地肌が輝くような五厘刈りだったのが長髪に変わっても、相手に対するリスペクトは変わらない。

 プロ野球はどうだろう。8月27日の広島戦。中日の高橋宏斗が3回先頭の森下暢仁に抜けたスプリットをぶつけてしまうと即座に高校球児のように帽子を取って謝罪した。さすが名門・中京大中京OBだ。

 高校野球を見慣れた我々には当たり前のことだが、「メジャーリーガーはぶつけても謝罪しない」という。確かに向こうではぶつけた投手が「文句あるか」とばかりにマウンドからホーム方向に歩みよる姿をよく見る。それも文化だ。

 高校球児に長髪が増えるのはどうでもいい。プロ野球でも西武の高橋光成のような長髪が増えるのも悪くない。いや、むしろ風になびかせると躍動感が出て格好いいと思う。

 ただ、髪やヒゲを伸ばしても打者に当てておいて「俺は悪くない」という態度だけはやめて欲しい。そこの文化は大事にしてほしい。高校時代はちゃんと帽子を取れたはずだ。メジャー流でやりたいならメジャーでやればいい。

 甲子園がどんなに素晴らしい大会であってもプロになった途端に根付いた礼儀を忘れるようでは情けない。人に当てたら謝る。この高校野球の文化はプロになっても守ってほしい。

 

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