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U18入り報徳学園「二枚看板」支えた元エース候補の存在 強烈な競争、右肘手術の裏にあった「3人の絆」

スポニチアネックス 2024年8月30日 8時2分

 「第13回BFA U18アジア選手権」に出場する高校野球の日本代表に、報徳学園(兵庫)で「右腕二枚看板」と呼ばれた今朝丸裕喜と間木歩(ともに3年)が選出された。入学当初から、この世代の投手は二枚看板と呼ばれていた。ただし、その2枚のうちの一人は間木ではなく、今夏選手権大会でメンバー入りを外れた右腕の豊田佑京(3年)だった。

 今朝丸と並んでエース候補と評されていた豊田は、「入学した頃から今朝丸と2人で競い合い、今朝丸も“佑京がライバルや”と思ってくれていた。そこから間木が台頭し、この2人に負けたくないと練習してきました」と振り返る。投手練習は今朝丸、間木、豊田の3人が同組になることが多かった。それは指導者からの「3人で争え」というメッセージに他ならなかった。

 しかし、故障が豊田の成長を阻んだ。2年夏に右肘に激痛が走り、週1回程度の投球練習しかできなくなった。今春の兵庫大会で2年春以来のベンチ入りを果たすも、その後に痛みが再発。高校最後の夏の登板を諦め、6月28日に右肘内側側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けた。

 痛みを我慢して投げ続けるか、手術かの2択が迫られていたとき、大角健二監督から伝えられた。「この夏のために無理をして野球人生が終わってしまうより、俺は大学、社会人、プロと長く活躍してくれる方がうれしいよ」。手術後には間木が「絶対、いい景色を見せたるから」と約束してくれた。一方、今朝丸には豊田から「甲子園に連れて行ってくれよ」と連絡を入れた。「今朝丸が、そういう言葉をくれないタイプなのは分かっているので」と通じ合っているからこそ、励ましの言葉は必要なかった。

 いつしか「二枚看板」は、今朝丸と間木を指す言葉に変わった。その傍らで豊田は、常に一緒に行動していた今朝丸と間木が別々に練習していることに気付いていた。「この2人、おもろい。意識してるんやな」。2人にしか分からない特別な関係を悔しさと同時に頼もしく感じていた。

 昨年末、同学年投手の星山豪汰と西田健翔が新年の目標に「背番号1を獲る」と書いた。豊田は、こうして仲良しな投手陣が練習になると本気で競争し合う関係が好きだった。

 「こいつらの競争意識は凄いなと思いました。正直、今朝丸と間木には敵わないな…と思い始めていたけど、他の投手たちは本気で1番を狙っていた。投手のレベルが高かったのは、練習でお互いに追い込み合えたから」

 今回の代表チームで、同じ高校から投手2人を輩出したのは報徳学園のみ。「二枚看板」の成長は、2人の切磋琢磨だけでなく、お互いに認め合い、高め合ってきた戦友たちの存在があった。(記者コラム・河合 洋介)

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