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【内田雅也の追球】雨に敗れた阪神 恨み節や言い訳は胸にしまいこみ、勝利だけを信じて明日を見たい

スポニチアネックス 2024年9月2日 8時2分

 ◇セ・リーグ 阪神1ー3巨人(2024年9月1日 甲子園)

 結局、阪神は雨に負けた。霧雨から雨脚が強まった7回表、三塁手・佐藤輝明が右往左往した。

 先頭の三遊間寄り打球をグラブに当てながらはじいて安打。続く三塁前バントも前進が遅く、内野安打、一塁送球も乱れて無死一、三塁。門脇誠に前進守備の二塁左を抜かれる中前勝ち越し打を浴びた。さらに小林誠司の三塁前セーフティースクイズもチャージが遅く、決められた。間に合わない本塁にグラブトスして犠打野選となった。

 バントは三塁側を狙われていた。無死一塁での送りバントも、一、三塁でのセーフティースクイズも一塁手がベースに付いている一塁側を狙うのが定石だ。ところが巨人は守備位置やチャージの鈍さ、処理の甘さを見越し、いずれも三塁側に転がしてきていた。

 地面は水分を多く含んでいた。打球は弱まる。ならば守備位置は浅く、チャージは早く……という心構えがいる。懸命なプレーだったのはわかるのだが、準備不足は否めない。相手の狙いにはまっていてはつらい。

 前夜は値千金の起死回生3ラン、この夜は高価な拙守。佐藤輝で一つ勝てば一つ負ける。これでは割に合わない。

 試合前練習中、一塁ベンチに座った監督・岡田彰布は空を眺めていた。すでに試合開催可否は主催球団でなく、連盟が判断する連盟管理節であり「オレらはどうすることもできん」。雨天中止もありうる予報で、5回降雨コールドもある。「オレはそれが嫌やねん」と漏らしていた。

 9回完了での采配、勝負を望んでいた。いや、菅野智之と西勇輝の先発で投手戦、後半から終盤勝負と読んでいたのかもしれない。結局、7回終了、降雨コールドと後味の悪い結果となった。

 明治期、国内最強を誇った一高(今の東大)の名左腕、守山恒太郎の言葉に「ノー・コンディション」があった。二塁手だった君島一郎が著した『野球創世記』(ベースボール・マガジン社)によると<これはコンディションがこうだ、ああだというような自己弁護を許さぬ、つまり「言い訳無用」の意味ととる>。一高の高い精神性は日本野球の礎となった。

 雨に敗れた阪神だが、恨み節や言い訳は胸にしまいたい。まだ可能性はあるではないか。次の勝利だけを求め、明日を見たい。 =敬称略=

 (編集委員)

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